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【5万4千PVアクセス突破 全話 完結】『最初に倒されるはずのボス、ホブゴブリンの俺。転生して本気出す。〜3年後に来る勇者を倒すための準備録〜』  作者: 虫松
スピンオフ小説 『3周目 ホブゴブリンの俺、勇者が来ない?!このゲーム完全に過疎ってる。俺のクソ運営を改革だ。』

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第2話 ホブゴブリンの護、ゲーム運営を始める

ホブゴブリンの護は、かつて自分が最初に倒された洞窟を後にして、草木が鬱蒼と茂るゴブリンの森を抜けた。森の入り口に佇む、使われなくなった管理端末の残骸に手を当てると、かつて覚えた“開発者コード”が反応する。


「……まだ残ってやがったか、デバッグモード」


護の掌から淡い光が走る。システムの奥深くに眠っていた報酬テーブルの編集画面が浮かび上がった。


「このゲーム、やり込みが足りねぇんだよ。レアアイテムは週1の確率? ふざけんな。全ドロップ率、2.5倍に引き上げだ」


それだけではない。新たに【期間限定クエスト】を自ら追加。

その名も


《森の肉まつり ~魔界焼き立てフェスティバル!~》


「バカバカしい名前だが……これで少しはログイン率も上がるだろ」


護はにやりと笑いながら、次なる準備に取り掛かった。


挿絵(By みてみん)


「ゴブリン隊長ォー!お呼びとあらば、肉かついで馳せ参じますよ!」


森の奥からドタバタと駆けてきたのは、分厚い筋肉とエプロンをまとったオーク族の若者・デフリーだった。彼は護の元で、かつて雑魚モブから“伝説のオークロード”まで昇格した苦労人である。


「デフリー。お前をイベント長の副官に任命する。やれるな?」


「もちろんですとも! 俺には夢があるんです、隊長。肉と笑顔で満たされた、魔界レストランを作ること!だからこそ、このイベントでもそれを再現したい!」


護は深くうなずいた。


「……イベントは胃袋からだな」


「はいっ! まずは魔界牛の炭火焼き、次に鹿の香草ロースト! そして……イノシシ串焼きです!」


「いい流れだ……でもな、デフリー」


「わかってます! 豚はダメ! 我らにとって神聖な存在、料理しません!」


「よくできた部下を持ったもんだ」


護はふと、昔を思い出す。

まだ人間だったころ、ログインして最初に目にした“NPCのセリフ”があった。


「料理は愛情。端正に、丁寧に、美味しくいただく、ですから!」


あのときは「何言ってんだコイツ」と笑った。けれど、いま目の前でそれを繰り返すデフリーを見て、なぜか心が温かくなる。


「……お前、変わらねぇな」


「えっ、何かおっしゃいました?」


「いや、こっちの話だ」


護は軽く笑いながら、開かれた草地へと目を向けた。


「ここをイベント会場にする。焚き火を囲んで、肉を焼き、酒を注ぐ。誰が来ても“おかえり”って言える場所にしてやる」



肉フェスの準備はすぐさま始まった。

炭火台、丸太のテーブル、木の葉の皿。そして護が独自に改変した“食べ物でバフがつくシステム”も適用。香ばしい香りが風に乗り、森を包む。


その様子を見ていた村の雑魚ゴブリンたちが、興味津々に近づいてきた。


「なにこれ、めっちゃいい匂いじゃん!」

「えっ、これって……食べ放題!?」

「しかも倒されないってマジ!? 神ゲーかよ!!」


護は玉座代わりにした丸太に腰をかけ、満足げに言う。


「ただの戦闘じゃ、客は戻らねぇ。だが“楽しい記憶”は、ログイン理由になる。俺たちが提供すべきなのは、“体験”だ」


「隊長、俺、泣いていいっすか……」


デフリーが感極まって、肉を焼きながら嗚咽する。


「泣くな。肉がしょっぱくなる」


そして夜。焚き火が高く燃え上がり、初めてのユーザーがログインした。


そのユーザーが口にしたのは

「……なにこれ、なんでゴブリンのボスが肉焼いてんの?」


護は構わず言った。


「来たな、勇者よ。まずは腹ごしらえしてけ。話はそれからだ」


護のゲーム改革は始まったばかりだった。

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