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【5万4千PVアクセス突破 全話 完結】『最初に倒されるはずのボス、ホブゴブリンの俺。転生して本気出す。〜3年後に来る勇者を倒すための準備録〜』  作者: 虫松
スピンオフ小説 『3周目 ホブゴブリンの俺、勇者が来ない?!このゲーム完全に過疎ってる。俺のクソ運営を改革だ。』

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第1話 勇者が来ねえ!?絶望のホブゴブリンの洞窟

挿絵(By みてみん)

ホブゴブリンのまもるは、洞窟の最奥にある粗末な玉座に肘をつきながら、虚空を見つめていた。


「……このままじゃ、このゲームはサービス終了(サ終)だ。どうにかしなきゃな」


その表情には焦りも怒りもなく、ただただ退屈の色が濃く滲んでいた。


魔人歴、三回目のログイン。

つまり、護にとって三度目の“ホブゴブリン人生”の始まりだった。


初回は転生勇者アレスと白熱バトル。

二度目は、泣き虫勇者アレスを教育した。


そして三回目


「勇者が……来ねぇ」


一週間が過ぎ、二週間が過ぎ、三週間が過ぎた。

いつまで経っても、勇者が洞窟に現れない。

護は玉座に座り続け、テンプレセリフの準備ばかりが磨かれていった。


「ふふ……よく来たな、勇者よ。貴様の運命はここまでだ!死ねぇぇぇッ!」


台詞ボードに記されたその言葉が、乾いた石の壁に虚しく響く。

隣で雑魚ゴブリンAが鼻くそをほじりながら言った。


「なあ族長、このセリフって……もう古くね?」


護の口元がピクリと動く。


「それを言うなら、お前のその行動も古いわ。NPCならNPCらしく気合い入れろ」


「えぇ……だって誰も来ねーし……つーか最近、森にも人間来てないし……」


その通りだった。

『伝説のブレイブレガリア』かつて覇権を取ったとまで言われた王道RPG。

その名も今では過去の遺物。大手ゲーム会社ミラージュコードが開発したはいいものの、4周年を迎えて以降、イベントの使い回しとインフレ課金によりユーザーは激減。


NPCたちの稼働率も落ち、護のような「初期配置ボス」すら存在意義を失いつつあった。

むしろ今、ここに毎日出勤している護こそが異常。


普通のNPCは、AI制御の待機モードに戻ってる。


だが護は違った。

なにせ中身は、かつてこのゲームをクリアまでやり込んだ、元・人間の廃プレイヤー。

偶然のバグで転生して以来、「NPCのふりをして、ゲーム世界の裏側から改革する」ことを生き甲斐としていた。


けれど


「……そのゲームが、終わろうとしてる。勇者も来ねぇ。ユーザーもいねぇ。ついに、誰にも必要とされなくなったか」


ため息をつき、天井の鍾乳石を見上げる。


すると頭の上から、ボタリ、と水滴が落ちてきた。


「やかましいな。まるで涙かよ……俺はまだ泣いてねぇっての」


護は立ち上がる。


「こうなりゃ、最後に一花咲かせてやろうじゃねぇか。俺の名は護。ホブゴブリンのボス、三代目。元・人間、現・ホブゴブリンの俺。そして……自主運営担当だ!」


隣のゴブリンAがポカンと口を開けた。


「えっ、族長、何それ……」


「決まってんだろ。このゲームを俺が面白くする。誰よりも、勇者よりも、プレイヤーよりも、この世界のことをわかってるのは……この俺だ!」


護の瞳が燃えた。

玉座の下に埋もれていた旧式の宝箱を開け、古びたイベント用アイテム群を取り出す。

ドロップ率操作用スイッチ。演出変更用のルーン石。隠しボス召喚札……。


「俺が、俺自身で、クソ運営を改革してやる。イベント? やってやる。報酬? 倍にする。演出? ド派手にしてやらあ!」


その背中には、もはや「ただの雑魚ボス」の気配はなかった。


「覚悟しろよ、クソ運営!新しいゲームにうつつを抜かす悪人が!


俺が動いたからには……この伝説のブレイブ・レガリアの世界、まだ終わらせねぇ!」


挿絵(By みてみん)


そして護は、ホブゴブリンの森の洞窟の奥から外界へと一歩踏み出す。

誰もいない森の空気が、どこか寂しく、そしてどこかワクワクしていた。





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