第8話 涙と選択の果てに
バラバラになっていく仲間たち。絶望の空気。
だが、その中心で、アレス・スカーレットは剣を掲げた。
「もう、やめよう……!」
その声は静かで、でも雷のように力強かった。
「“個の力”だけで勝とうとするのは、ヴァルドロと同じだ!一人で強くなって、一人で勝って、それで何が残るの!?」
ヴァルドロが上空から嘲る。
「集まっても、弱さが重なるだけだ。真の進化は、選別された者だけが得る光!」
だが、アレスはその言葉を、一喝で断ち切った。
「黙れぇええええッ!!」
「私たちは、進化なんて望んでない!誰かを見捨てて強くなるくらいなら――“共に立って、共に倒れる”ほうを選ぶ!!」
風がうねり、残った仲間たちの身体が反応する。
「これは私の剣だけじゃない。あんたに向けられたのはリュミエールの勇気! ロベールの優雅な怒り! ラ・ミューズの痛み!!そして、あたしたちの“繋がり”そのものだッ!!」
アレスが剣を高く掲げた。
「だからこの一撃はワン・フォー・オール……オール・フォー・ワンよ!!
一人はみんなのために! みんなは一人のために!!」
「みんなッ! 私の声に合わせて!!」
その瞬間、全員の力が一つに重なった
勇者パーティーの心が一つとなり総力一斉攻撃 開始!
▶ スライム姫リュミエール
「全属性ミックススライムモード☆」
虹色の体が竜のように変形し、雷・炎・氷の魔法を一斉放射!
「これが、王女のしなやかな牙よッ!」
▶ ゾンビ伯爵ロベール
「アタシのレース編み、返してもらうわよォッ!」
死霊の騎士団が咆哮し、ヴァルドロを取り囲む。
「乙女の怨念、なめないでぇっ♡」
▶ 白銀の子羊ラ・ミューズ
「右に飛ぶッ! 左下、影を取った……今だ!!」
地を這う銀の閃光が、空中から連撃を叩き込む。
「これがわたしたちの“混血の答え”だ!!」
▶ 勇者アレス・スカーレット
「そして……私が、全てをまとめる!」
“決意の一閃”《エクス・ルミナリア》発動!
剣から溢れる光が、仲間たちの攻撃と完全に同期し、光の柱となってヴァルドロを貫く!
ヴァルドロ「これは……これは何だ……!? なぜ、光が消えぬ!?」
その叫びの中に、初めて恐怖が混じった。
「進化とは、孤高の選別だ……貴様らのような、不完全な……!」
アレスが剣を振り下ろす。
「それでも私は“みんなで進む進化と未来”を信じる!!」
ドオオオオオオオンッッ!!!
漆黒の翼が光に焼かれ、空が砕ける。
ヴァルドロの姿が、光の中で崩れていく。
「なぜだ……なぜ、我は……負けたのだ……」
アレスはただ、一歩、前に出た。
「だってこれは、涙を超えた“選択”だから。私たちは“ともに立つ”ことを選んだんだ」
光が消えた。風が戻った。
誰もが、その場に崩れ落ち、そして笑っていた。
ホブゴブリンの護が木陰から静かに呟いた。
「……よくやったよ、勇者。お前が選んだ“進化の形”、ちゃんと届いたよ」!
魔王形態・ヴァルドロに勇者アレス・スカーレットたちは勝利した。