第4話 ヴァルドロの狂気、そして始まる決戦
王都ローゼリア、中心にそびえ立つ神殿兼王城
その奥深く、白く光る柱の間に、“神の声”を語る男がいた。
錬兵大臣ヴァルドロ。
白衣に赤いインクの染み、そして手には禍々しい杖。
その姿はまるで狂気の偶像だった。
「来たか。勇者と、化け物ども。滑稽だなァ!」
アレスたち4人が、重く軋む城門を突破するやいなや、ヴァルドロは天を仰いで嗤った。
「この国のために、正しい血と力を残す! そのための進化装置だッ!」
部屋の中央には巨大な“洗脳装置”。
透明な球体の中には、まだ子供のような魔族や人間が、無表情で並んでいた。
目は虚ろで、感情を失っている。
「これは……魂を、削ってるのか?」
ロベールが震える声で言った。
「刺繍が……できる手じゃないわ、これじゃ……!」
「これ以上は……許さないっ!!」
アレスの手に力がこもった。剣が震える。
スライム姫リュミエールは、胸元に手を当てて一歩踏み出す。
「ラ・ミューズ、来て。あなたも“私の心”の一部なんでしょう……!」
ラ・ミューズの瞳が僅かに揺れる。
けれど、その手には白銀の短剣。洗脳はまだ完全には解けていない。
「排除……対象……敵、確認……ッ」
機械的な声と共に、ミューズが突撃してくる。
「ミューズ!!」
リュミエールが叫ぶと同時に、アレスが剣を振るい受け止める。
「このままじゃ、ミューズを壊しちまう!」
ロベールが後方からミューズの周囲に刺繍糸を投げて防御を張る。
戦いながら、彼らはヴァルドロへと詰め寄る。
「洗脳を解除するには、装置の“心核”を壊すしかない!」
リュミエールが叫ぶ。
「よーし、行くぞっ!!全員で正面突破だッ!!」
アレスが叫び、4人が一斉に走り出す!
その時、ヴァルドロが狂ったように杖を掲げた。
「偉大なる神よ……我が進化を見届けたまえッ!」
天井の巨大な魔方陣が青く光る。装置が唸りを上げ、さらに多くの魂が吸い込まれていく——!
「……なら、わたしがぶっ壊してやるよッ!!」
アレスの一撃が、ついに“心核”に届く!
ガキィィンッ!!!
爆発するような音が響き渡った。
……そして、城全体に沈黙が訪れる。
ミューズの剣が地に落ちた。
その銀の瞳に、ぼんやりと“涙”が宿る。