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【5万4千PVアクセス突破 全話 完結】『最初に倒されるはずのボス、ホブゴブリンの俺。転生して本気出す。〜3年後に来る勇者を倒すための準備録〜』  作者: 虫松
第三章 勇者の誕生とエルフ族

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第1話 極悪 関西系勇者誕生

中学の教室。

そこは、生き地獄だった。


「なんや、今日も弁当グチャグチャか? ほら、お前が全部食えや」


「クッサ……こいつほんま汚物やな」


「うわ、泣きよった! 泣いたでコイツ!」


南城大我なんじょう・たいがは毎日、教室の片隅で蹴られ、殴られ、笑われていた。

机には落書き。鞄の中には生ゴミ。弁当は床にぶちまけられ、水筒にはトイレの水。

教師は見て見ぬふり。親は“お前にも原因があるんじゃないの”と突き放した。


誰も助けてくれなかった。

誰も、信じてくれなかった。


「なんで、俺ばっかり……」


壊れた。

あの日、線路へ向かった自分を、もう他人事のようにしか思い出せない。


──でも、目を覚ました時、世界は変わっていた。


「……なんやこれ、まじでゲームの中やん」


見覚えのある森。身につけた白銀の鎧。手にした聖剣。

そこは、昔死ぬほどやり込んだゲーム『伝説のブレイブ・レガリア』の世界だった。

そして、自分はその主人公の勇者アレスとして、生まれ変わっていた。


「はは……はははっ!」


南城は嗤った。世界を呪うように、血が沸騰するほどに。


「これが、俺の新しい人生ってわけか。ええやん……最高やんけ」


かつて何もできず、何も守れず、ただ潰されるだけだった少年は、

今や“世界を救う勇者”の姿を持っていた。


「まずはあれやな……チュートリアルの森の洞窟。ボスはたしか、ホブゴブリン」


「フッ、今の俺なら……余裕やろ」


最速クリア? 世界平和? 興味はない。

あるのは、ただ一つ復讐。


「お前ら、見とけよ。俺はな……このゲームで復讐のために、生き返って転生したんや」


草原。剣。鎧。魔法の世界。

自分の姿は、昔遊んでいたゲーム『伝説のブレイブ・レガリア』の勇者アレスそのものだった。


「……は? マジでここ、レガリアの世界やん。俺……本当に勇者に転生したんか?」


狂ったように笑う。


「うそやろ……ははっ! ほんまに……はははっ!」


もう、あの惨めな俺じゃない。

これからは俺の時代や。

殺せる。好きなだけ、好きなように。


「お、さっそくおったな……オーク一匹、のっしのっし歩いとるやんけ」


道端を歩く、のんびりと何の悪意もないオーク。

その背後に忍び寄り、剣を抜いた。


ズブリ――

赤い液体が地面に広がる。オークは目を見開き、膝をついた。


「なんもしてへんやつ殺すって……たまらん快感やな」


にやりと笑う。

悪意の塊のようなその目に、かつて人間だった温もりはなかった。


オークは呻き、こちらを振り向く。


「た、助けてくれ……おれ、戦いたくない……」


命乞い。

昔の俺も、あんな目をしてたな。


「知らんわ。俺はもう、誰も助けへんし、誰にも助けてもらわん」


一閃。

倒れたオークから立ち上る血煙が、風に溶けた。


「世界を救う? アホか。この世界、俺が支配するんや」


天を見上げて笑う。


「これはゲームや。せやけど俺の手で終わらせたる。

ゲームオーバーになるのは、この世界のほうや」


極悪勇者が、今ここに誕生した。勇者アレスとホブゴブリン護との対決はすぐそこまで来ていた。


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