表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
125/139

第4話 女勇者、捕まる!?  

「な、なんで私がぁぁぁっ!?!?」


広い石造りの牢屋。暗く、ジメジメとした空気に包まれて、泣き虫勇者アレスは今日も泣いていた。

理由は明確だった。


「魔王軍のゾンビと仲良く旅していた」

として、王都に入って早々、反逆の嫌疑で勇者なのに捕まったのである。


「だ、だって……あのゾンビすっごく刺繍が上手くて優しくて、紅茶もいい香りで……」


「それ、逆効果の証言だぞ……バカなのか」

牢の外では、兵士たちが噂している。


「やっぱりな、あの女勇者、どこか抜けてると思ってたんだ」

「まさか魔王軍とつるんでたとはな……」

「いや、あいつじゃ魔王軍に利用されるだけだろ。ちょろそうだし」


アレスは牢の中で、体育座りでうずくまり、ぶるぶる震えていた。


「……やっぱり私なんかが勇者なんて……もう、帰りたい……」


そのとき。


牢の天井の隙間から、頭にバケツをかぶった怪しい人物が降りてきた。


「……よぉ、泣いてる場合か、勇者」


「え? バケツ?」


「いや、変装だ」


「え? 先生!? って、先生じゃない!師匠じゃなくて、コーチ!? 」


「やかましい!!身バレするだろが!!」

バケツの男のホブゴブリンの護である。


王都にてアレスが捕まったと聞きつけ、バケツとモップで掃除夫に変装して忍び込んで来たのだった。


「なにやってんだ、お前……泣いてる暇があったら、抗議しろ。戦え。訴えろ」


「で、でもぉ……もう人間にすら信用されないなんて……私、もう……」


護はアレスの頭に、ポン、と手を置いた。


「いいか。“味方”ってのは、旗印じゃなくて、行動で決まるもんだ。人間だろうが、ゾンビだろうが、俺みたいなホブゴブリンだろうが……信じてくれる奴が1人でもいれば、それが“味方”だ」


アレスは涙目のまま、こくんと頷いた。


「じゃあ、脱出すっか」


「えっ!? 今から!?」


護は腰から取り出す、なぜかビニール傘。


「看守の視線を反射させる最強の装備だ。バケツと合わせて無敵」


「どこが!?」


看守の目を盗み、バケツとモップで“新人清掃員コンビ”を演じながらの脱出劇は、


兵士たちの「床ぴかぴかやな……」の声に守られ、意外と順調に進行。

 

だが、出口で待ち受けていたのは


「おっそ~い♡ 迎えに行こうと思ったけど、気をつかって待ってたのよぉ♡」


ゾンビ伯爵ロベールであった。


なんとロベールは、王都に刺繍コンテストの招待枠で入国していたのだ。


「ど、どうやって入ったんですか!?」


「刺繍ドレスの展示会よぉ♡“死してなお咲く薔薇の女王”でグランプリ取ったの♡」


「なにそれ強すぎる!!」


そのままロベールの“非常用お嬢様馬車”に乗り、3人はまさかの王都正門突破。


護は言った。


「お前、いいこと言ったろ。味方ってのは行動で決まるってな。ロベールだって、こう見えて、ずっと“味方”でいてくれてたんだぜ?」


アレスは、泣きそうな顔で笑った。


「……ありがとう。コーチ……。ロベールさんも……。わたし、もっと強くなりたい」

 

そして空を見上げて、こうつぶやいた。


「“勇者”って、きっと……立場じゃなくて、覚悟なんですね」

 

護は照れ隠しに、バケツを深くかぶりなおした。


「お前、たまには良いこと言うじゃねぇか」


非常用お嬢様馬車は夕日に向かって爆走した。


「明日はきっとハッピーよぉほほほ♡」


ローベルがきっとウィンクしたと思う骸骨の方で。まぶたないですけど。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ