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【ランキング65位達成】累計6万PV『最初に倒されるはずのボス、ホブゴブリンの俺。転生して本気出す。〜3年後に来る勇者を倒すための準備録〜』  作者: 虫松
第二部 『かませボスのホブゴブリンと泣き虫勇者、そして伝説へ』

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第1話 師弟関係ふたたび?

大都市ミルド。その入り口の橋の下で、今日も泣いている勇者がいた。


挿絵(By みてみん)


「魔王討伐とか、む、無理ですってぇ……!」

 

橋の下の暗闇の中で全身を使ってうずくまりながら、女勇者アレス・スカーレットはブツブツと小声で独り言を繰り返していた。荷物は散乱し、剣は地面に転がり、勇者の証は逆さまになって泥に落ちている。


「やっぱり帰っていいですか!? ねぇ、誰か! 旅やめちゃだめですか!?!?」


だが返事はない。そりゃそうだ。彼女は今、完全に独りぼっちなのだから。


「……はぁ……みんな、すごくて、強くて……どうして私だけ……」


そう、彼女は泣き虫だ。とにかく泣き虫で、自己評価が底を這っていて、

戦うのが怖くて剣も握れず、敵が出ればとりあえず土下座から入るという前代未聞のスタイルを持っていた。


「えっ?でも……私なんかが……どうせすぐ死ぬし……食べられるし……服破けるし……!」


マイナス思考で悪い想像は止まらない。


それでも、なぜか旅を続けていたのは、ほんの少しだけ、心に残る“あの時の記憶”があったからだった。


最初に戦った、ホブゴリン洞窟のボス。

緑色の肌、出っ張った鼻、鋭い歯。でも、戦いのあと、泣きながら逃げる自分を木の影から見送ってくれた。あの人……いや、あの魔物に、もう一度だけ会えたら。


「……でも……私、もう少し勇者をやってみたいかも……」


あの時の熱い想いを胸にアレスは涙を拭きながら、ようやく顔を上げた。

ちょうどそのとき、風に乗って甘辛い香りが漂ってきた。


「……え、なんか……この匂い……」


香ばしい、どこか懐かしい焼きトウモロコシの匂い。

ふらふらと誘われるように広場にたどり着いたアレスは、ある屋台に立ち尽くす。


そこには、巨大な体を小さく折りたたむようにしゃがみ、

丁寧に串を焼いている、あの“魔物っぽい男がいた。


「こ、こ……こんにちは……その、トウモロコシ一本……く、ください……」


しどろもどろのアレスに、男はトングを握ったまま振り返った。


「ほい、焼きたて。……お前、泣き虫勇者だったよな?」


「ぴゃぁぁぁ!?!?」

 

アレスはその場で正座土下座。


「ごめんなさいっ!ごめんなさいぃぃぃ!もう泣きません!たぶん!」


「いや、泣いてるし。そして何その土下座、反射か」


「……って……え? ま、まさか……」


震えるアレスがゆっくり顔を上げると、トウモロコシ屋の男が顔を少し隠すように振り向いた。


「俺は、緑色の肌に出っ張った鼻、鋭い歯を持つ……魔物。そう、俺はなんと! “ホブゴブリンの護“だ。」


「やっぱりぃぃぃ!!」


アレスが目を丸くして叫ぶ。


ホブゴブリンの洞窟の玉座で勇者が魔王を倒す日まで待っていても暇すぎる護、やることもないので。こっそりと泣き虫勇者アレスの後をついてきてしまったのだ、親心 子しらず。いや弟子をほっとけない師匠。とにかく護はあまりの不甲斐ない勇者アレスを再指導をするために、再び勇者アレス・スカーレットへと接触をした。



続く

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