第12話 逆襲の勇者
洞窟の天井が揺れる。
地を這うような唸りが、まるで生き物のように空間を満たしていた。
そして
「グワアアアアアアッ!!」
爆発的な閃光と共に、アレスの全身が金色の魔力に包まれる。
その輝きはもはや人の領域ではない。神にすら見えた。
「仲間を殺してレベルアップ…………」
ティリスがつぶやいた。だがそれは誰もが感じていたことだった。
アレスは、今までの戦いで力を取り込み、進化していたのだ。
剣をゆっくりと掲げながら、アレスは狂ったように笑う。
「これが……ワイの、さらなる力や……! 今までのワイとはちゃうで……!!」
足元の地面がひび割れ、風圧が弾ける。
仲間たちは咄嗟に武器を構えた。
「もうなぁ、雑魚が何匹集まったところで意味あらへんのや。まとめてかかってこんかい!!」
「雑魚ザコザコうるさいわアレス!!」
デフリーを構え、吠えるように叫ぶ。
「お前がどれだけ強かろうがな、俺たちは、絶対、護を支えるって決めたんだよ!!」
「バカな……」
エミリーが震える声で呟いた。
「魔力の圧が、さっきの比じゃない……!」
「油断したら死ぬで、マジで……やばい」
コニちゃんが半泣きで背中に火の玉をこしらえながら言う。
アレスはニヤリと笑った。
「ええなぁ、その顔。その恐怖、その絶望……あぁ、たまらんわ。人間の限界を見れる瞬間が一番ゾクゾクするねん!」
そして、次の瞬間。
「《瞬間移動:瞬閃》」
アレスが一閃に空間を切り裂き、光の矢のように姿を消した!
「来るぞッ!!」護が叫ぶ!
その警告とほぼ同時に、アレスがデフリーとコニちゃんの目の前に現れた。
「うわっ!? 早ッ!?」
「どこから来たんや!?!?!?」
黒い剣が地面を這うように振るわれ、コニちゃんのすねを切り裂いた。
「うわああああん!!いたたたたたたッッッ!!!!」
コニちゃんが叫ぶ。
「マジで痛いってばァああああッ!!!」
「がぁぁああ、回復魔法!! 《ぽわぽわ火炎ヒール》!!」
コニちゃんが自分に回復魔法をかけながら逃げるが、アレスはすでに次の攻撃に移っていた。
「次や……」
次に狙われたのは、後方支援のエミリーとティリス!
「う、後ろに来てる!?」
ティリスが氷の魔法を展開するが、アレスの動きはそれすらも予測していた。
だが「俺が止めるッ!!」
護が盾を構え、前に立ちふさがる。
「スキル《威圧陣》!!」
地面に青白い魔法陣が浮かび上がり、仲間全体の防御力が高まった。
「はんっ。防御固めても無駄やて!」
アレスが叫ぶ。「全部、ワイの計算通りや!!」
その言葉通り、護の盾を足で蹴り上げる!
「なっ……!?」
アレスはバク転のように宙を舞い、体操選手さながらの空中回転!
「見とけやああああ!! 《円すい斬り・昇天式》!!」
宙から降りるその一撃は、まさに雷のように鋭く、コニちゃんの頭上へ一直線!
「ぎゃあああああああ!? またぁ!? 私ばっか狙うのヒドーイ!!」
そのまま爆発音と共に地面に叩きつけられる。
「コニちゃんッッ!!」
エミリーが叫ぶが、アレスは無情に笑った。
「まずは一体目や。さぁ……次は誰をぶっ潰したろかな?」
彼の瞳に、確かな殺意が灯っていた。
「こっからが、ワイの逆襲の始まりや――ッ!!!」
仲間たちに緊張が走る。
この戦い、まだほんの序章に過ぎなかった。