第11話 仲間なんかクソや俺の力みせてやる。
勇者アレスの剣が閃き、重圧と共に護の盾に叩きつけられる。
「ぐっ……!」
護は全身を張ってアレスの猛攻を受け止め、少しずつ後退しながらも必死に踏みとどまる。
「まだまだだ、護!お前の防御はもう限界だぞ!」アレスの声が洞窟に響く。
護は荒い息を吐きながら、必死に声を振り絞った。
「……俺は絶対に倒れん。お前の剣を止める。それまでに……仲間たちがお前を仕留める!」
その時、ボロボロになり、血を流した人形姫のメル・アリアがふらりと玉座の間へ
這いながら現れた。
「王子様……た、助けて……目が……もう、見えない……」
アレスは冷たい視線をメル・アリアに向けた。
「はあ?まだ生きてやがったのか、お前は。最初から、この戦いが終わったらお前を殺すつもりだったんだ。転生者はわい一人で十分なんや。」
メル・アリアは震えた声で懇願する。
「お願い……王子様……私を……」
だが、アレスの足が重く踏みつけられ、無情にもメル・アリアの頭に力が加わる。
「王子じゃねえぇよ。もう終わりだ。お前はここで消えな。」
「「ギャアアアアアア!」」 メル・アリアの人形の頭が砕け散った。
洞窟の天井が震えるほどの魔力がうねり、アレスの全身からまばゆい金色のオーラが放たれていた。
その中で、彼の剣はまるで神剣のように輝きを増していく。勇者アレスがレベルアップをした。
「これが……俺の、さらなる力や。」
アレスのその言葉と同時に、足元に蹲っていたメル・アリアの身体が小さく痙攣し、ぴたりと動かなくなった。
無慈悲に踏みにじられた少女の命を前にして、護の目が怒りに燃える。
「貴様……!」
だが、そこに――
「護ーっ!!」
鋭い声と共に、玉座の間の奥の崩れた壁の隙間から、影が次々と飛び込んでくる。
お玉の杖を構えたデフリー。
丸々とした体を揺らしながら、火の玉を手に叫ぶコニちゃん。
傷だらけでもなお弓を握るエミリー。
そして、黒き羽で舞い降りるティリス。
「間に合ったか……!」
ティリスの氷の魔法がアレスの足元に氷柱を穿ち、わずかにその動きを止める。
アレスは一瞥するなり、忌々しげに顔を歪めた。
「……チッ、雑魚が湧いてきよったなぁ。」
剣を振るい、そのオーラが辺りの空間ごと切り裂く。
「仲間ぁ? フン、そんなもんクソや。足手まといの負け犬どもが集まったところで、いったい何ができるっちゅうねん!」
アレスの瞳は紅く光り、口元が狂気に歪む。
「ワイは一人でええねん! 誰にも頼らん、誰にも縛られへん、全部この力で片づけたる! それが勇者っちゅうもんやろがァッ!!」
その瞬間、地面が割れ、衝撃波が全方向に放たれる。
コニちゃんが叫ぶ。「うわーっ!なんやこの圧!胃がぐるぐるする〜!」
デフリーが一歩前に出て、護の隣に立つ。「援護するぞ、護!お前一人じゃない!」
護は苦笑しながら、その言葉に力をもらったように盾を握り直す。
「……遅いんだよ、まったく。でも、来てくれてありがとう。」
仲間たちは一斉に構えた。
対するアレスは、笑っていた狂ったように。
「いいぜ。まとめてブッ潰してやる……この俺様の新たな力でな!!」
戦場の空気が、再び熱を帯び始める。
それは、血と宿命に彩られた、決着の始まりだった。




