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2.少女
それからも、彼女は変わらず、あの丘の上に現れた。
風が穏やかで、音の少ない午後。
その姿は、まるで絵画の中から抜け出してきたみたいだった。
少女というには儚すぎて、
女性というには無垢すぎた。
風にほどける髪は淡く、光の粒を編んでいるようで、
白い肌は、どこか現実から浮かび上がって見えた。
目が合うたび、胸の奥に、名付けようのない感情がふくらんでいく。
その理由を知らぬまま、僕は自然と、あの丘の上へ足を向けるようになった。
「今日もいたんだ」
そんな言葉しか、口にできなかった。
それでも彼女は、少しまぶしそうに目を細め、静かに頷いた。
風が通り抜けていく。
彼女の横顔が、そのまま風景に溶けてしまいそうだった。
会話は多くなかった。
でも、その沈黙はいつも、僕には心地よかった。