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逆さまの蝶  作者: あさき
16/22

7.

夢を見た。


遠くに光があった。


淡い朝靄のような空気の中。

少女がひとり、風に溶けるように立っていた。


髪がゆるやかに揺れているのに、顔は見えない。

まるでそこに在ることそのものが幻のようで、見ているそばから、輪郭が滲んでいく。


次の瞬間、少女の身体がそっと、霧のように光に変わっていった。


風が吹くたびに、その光は細かく砕け、空へと舞い上がる。


ーー待って。

声を出した気がした。

けれど言葉は音にならず、足は動かない。


気がつけば、手の中に、小さな光がひとつだけ残っていた。

それは温かくも冷たくもなく、ただ、存在だけが指先に感じられる。

落とさないように、そっと握りしめる。


けれどその光は、まるで最初からそのつもりだったかのように、ゆっくりと消えていった。


ふと顔を上げると、そこはあの丘だった。


風は止み、草は動かず、世界は音を失っていた。


誰もいない。

少女の姿も、光の欠片すらも。


ただ、寂しさだけが風景のすべてを覆っていた。


ーーまるで最初から、何もなかったように。

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