エピローグ
「ユウタ?カバン忘れているけど?」
「ありがとう。今日は早番だから急いでいて。」
「今日こそ早く帰って来てよ?仕事の事ばかりで私の事ほったらかし過ぎよ?」
「分かってるって。今日は必ず定時であがるからさ。」
ユウタは3歳年下の同じバツイチの千代と言う女性と再婚していた。お互いの事はよく理解していた。双極性障害でM病院に通院している事も伝えてある。そこも理解してくれている。
「千代!スマホ忘れてた!」
「最近忘れ物多いけど大丈夫?」
「大丈夫だと思う。でも一応N澤医師に確認してみるね!」
千代は元々看護師で精神科での勤務経験もある為、双極性障害の病識があった。看護師は激務の為、再婚を境に看護師を辞め今はコンビニでパートをしている。収入は激減したがそれでもユウタの稼ぎが良いためそれでなんとかなっていた。
千代にも高校生になる息子がいたが、元夫と息子は双極性障害のあるユウタとの再婚には反対だった。それでも元夫や息子よりも支えたい存在が出来てしまった。
確かにユウタの行動は破天荒でたまに突拍子もない事をする。それでも、ユウタは千代に惜しみ無い愛をくれる。枯れ果てた中年期の女性にはそれだけで充分だった。
家族の猛反対を受けたのはユウタも同じだった。社長や両親には千代を不幸せにするだけだと断言されたが、ユウタは千代とはそうではないと、説得して過ごしていた。結局お互いの意思を尊重する形で、再婚に踏み切ったと言う事であった。
それで良かったのかどうなのかは分からないが、とりあえずユウタとしては守るべき物も出来たし、仕事も脂が乗ってきて軌道に乗ってきていた時だったし、勢いで千代と再婚した。まぁ、幸せなら良いじゃん?と開き直るユウタであった。




