2度の転機
それはさておき、ユウタには2度の転機があった。
離婚するが結婚した時。そして親元を離れた時である。
ユウタにはヒトミと言う元妻と3人の子供がいる。結婚した時には既に双極性障害を発症していたと推察される。
それでもヒトミとの夫婦生活は幸せだった。子供も目に入れても痒くない程、可愛かった。しかし、父親の責任を果たせないユウタとヒトミは別離する事になった。
親元に戻り数年。M病院に通院を続けながら、生活を続けていた。しかし、40代になっても失敗(躁病エピソード)を繰り返すユウタに両親も限界を感じていた。
そこに現れたのが社長である。仕事のつてで知り合ったのであるが、ユウタの両親と社長がユウタをどうしたら立派で自立した良く出来た大人になれるか、とことん話をした。
その結果、ユウタは社長預かりの身となり、ユウタの両親もそれに同意。家賃4万6000円のアパート(社長の事務所兼)を借りて、自立した生活を送らせる事になった。
ユウタは社会復帰をする為、社長や社長の知り合いの真保さんから仕事を貰い何でもやった。木こりやビル清掃、コンパニオンの送迎、海の監視員、水商売のボーイ。生活は楽ではなかったが、ユウタはM病院に通いながら社会生活を送れていたように見えた。
だが、細かな躁病エピソードは0ではなく、入院とまでは行かなかったが、躁病の片鱗は見え隠れしていた。ユウタのストレス解消はタバコであったが、これも病気には本来善くないものではあったが、一日に一箱は吸っていた。
タバコを止めればその分生活に余裕が出るのだが、そうは言ってもニコチンに依存しないと、やってられない。とユウタは思っていた。
当然、仕事のストレスは病気の大敵だ。ニコチン依存は自分の気持ちではどうしようもなく、それも含めて病気であり薬を飲むのだ。
ユウタは社長から車を貸与されていたが、寝不足や薬を飲んでからの運転は非常に危ない。また、躁状態で覚醒状態にある時の運転も危険であり、気を付けなければならない。