救世主
そんなユウタを救ってくれたのは、真っ赤な他人の社長だった。つよしさんや神保さんとも社長のつてで知り合った。
救ったと言うよりは手を差し伸べてくれたと言った方が正しいかもしれない。両親やユウタ本人の意志も話し合いを重ねて、半分独居と言う形にした。ユウタの社会復帰を促す為の措置であった。
社長の事務所の隣の部屋を月4万6000円で借りて、社長の仕事のヘルプや神保さんから与えられるビル清掃やその他諸々のバイトをこなし日々暮らす様になった。
障害者年金をユウタは受給していたが、社長に全てを管理され、手元に残るのはほぼなし。何故なら借金返済や家賃諸々の金が消えていくからであった。
それでも、車を貸与されガソリン代も支給されてはいたから、人並みの暮らしは出来ていた。タバコを毎日一箱吸える位の経済力しか無かったが…。
何故そうなったかは、何度も言う様だがユウタが躁状態の時に作った借金があった為である。確かに双極性障害Ⅰ型の人はお金に関して非常にルーズである。
本当に財布がスッカラカンの時にはつよしさんや社長を頼る。だがそれを繰り返していてはユウタの成長には繋がらない。43歳バツイチ子持ちの精神病患者ではあるが、少しずつ自立していかねばならない。
両親も決してさじを投げたわけではない。ユウタが帰ってくれば食料援助もしてくれる。会う回数は社長のOKが出なければ行けないが、それがユウタの為だと社長は思っていてユウタに言い聞かせている。
3食食えてタバコも吸える。それが出来れば先ずは御の字だろう。そんなにカツカツなら、生活保護を受ければ良いと思うかもしれないが、そこまでユウタは甘えてはいない。一踏ん張りし、何とかしのいでいる。と言うより生活保護を受けると、社長や神保さんの仕事が出来なくなると言う側面もある。