表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

吸血鬼の首

作者: 一角黒馬

「噂をすればなんとやら、だね」


登校するなりクラスメイトの視線を集めるタツミ。

それは、タツミのカールしたまつげや、きめ細やかな肌や、上品な形をした唇に、クラスメイトが目を奪われたわけではない。


「タツミ、お前のことを心配していたんだよ。変態吸血鬼に襲われでもするんじゃないかって」


変態吸血鬼。

美しく若い少年だけを狙う吸血鬼がいると、中高生の間で流行っている噂話。

タツミほど美しく若い少年は、格好の餌食だ。


そうは言っても、本気でタツミを心配している者などクラスにどれほどいるだろう。

幼稚園児がサンタクロースを信じない現代。吸血鬼などという存在を信じ込む中学生などいない。

しかし、シャツの襟からのぞくタツミの首を見て、教室内の空気が一瞬止まった。


首に絆創膏を貼っていたのである。


「転んでガラスにぶつかってね。ちょっとしたかすり傷だよ」


タツミの説明はイマイチ腑に落ちない。けれど、吸血鬼に吸われたというよりもよっぽど現実的。

変態吸血鬼など所詮は噂話だ。


・・・・・・・・・


「今日も俺んち来るのかよ。別にいいけど、今日は兄ちゃんいるからな」


未だ絆創膏を貼り続けているタツミ。変態吸血鬼の仕業だなんて言い出す奴はいない。

絆創膏を貼って登校してきてから変わったことといえば、放課後、友人であるタケの家に入り浸るようになったことくらい。

2人でテレビゲームをする。熱中するタケに対し、どこか落ち着かない様子のタツミ。


「さっきから、なんだよお前。小便でもしたいのか」

「…うん、ごめん。トイレ借りるよ」


ずっと入り浸っているから、トイレの場所は把握している。

だが、タツミの向かった先はトイレではない。

タケの兄が、リビングの大型テレビで映画鑑賞をしている。


「すみません、タケのお兄さん。トイレを詰まらせちゃったみたいで、見てもらえますか」


快く立ち上がる兄。

再婚家庭でタケとは血縁関係のないという兄は、下から見上げると鼻筋がよく通っているのが分かる。

トイレのドアを開いたところで、タツミは兄を力いっぱい中へと押し込んだ。


・・・・・・・・・


その日、トイレの中でタケの兄が死んでいるところが見つかった。

首には噛み跡があり、全身の血を抜かれていた。

タツミはトイレに立ったきり姿を消し、家にも帰らず学校にも来ず、どこの目撃情報もない。

けれど、死んだはずの兄の姿を見たという噂は耳にしていた。

美しさと若さを追い求める吸血鬼。

血を飲んだ相手の姿になるため、美しい少年を次々手にかけていくが、難点がひとつ。

同じ姿になるということは、首の噛み跡もコピーされる。その噛み跡が治った瞬間から急激に老いていってしまうのだ。

若く美しい姿を保つためには、噛み跡が治るまでに、次の美しい少年の血を飲まなくてはならない…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ