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ラン・ルーシー  作者: アズ
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VSアンノウン【04】

 変身したスタンフィールドの体は黒く、角を生やし、悪魔を象徴する黒いヤギのような怪物の姿をしていた。そのスタンフィールドが襲いかかる。

 真っ先に動いたのはロジャーだった。正確にはロジャーの持つ剣が自動で敵へ向かい、それを握っているロジャーも引っ張られてるだけだった。

「ふん、物に使われるようでは主人としては失格だな」

 スタンフィールドはそう言うと、勢いよく振られたロジャーの剣を素手で掴み止めた。

「何っ!?」

 スタンフィールドはそのまま剣を持ち上げると、宙ぶらりんになったロジャーのがら空きになった腹に一発怪物の蹴りをおみまいした。

 ロジャーは剣から手を離し勢いよく遠くへと飛ばされた。それを見てジャスミンは悲鳴をあげた。

「所詮、生身の人間に変わりはない」

「ロジャー! 大丈夫?」サンサは直ぐ様ロジャーへ駆け寄る。すると、今度はシーラが剣を振るい斬撃を飛ばした。スタンフィールドは軽々とそれを避ける。

「どうってことないな」

 直後、真っ直ぐ飛んだ斬撃は急に曲がりスタンフィールドの背中を襲った。

「ぐわああぁっ!?」

 背中からドバっと血が吹き出る。

「斬撃が曲がっただと?」

「シーラよくやった!」

 ベルはそう言って自分の剣を突き出す。

「吸い込めぇ!!!」

 ベルの剣がそれにこたえ、背中から出血するスタンフィールドの血をその剣が吸い始めた。

「このまま血を1滴足らず吸い尽くしてやる」

 どんどん血が抜かれ、それがベルの剣へと吸収されていく。それに対してスタンフィールドは顔を力ませた。そして……

「ふんっ!」

 なんと背中の筋肉で強引に血を止めたのだった。

「なにっ!?」




〈なにをしている。たかがガキ相手にまさか分身のお前が手こずっているんじゃあるまいな〉



 スタンフィールドの脳内でアンノウンの声が突如響いた。

「直ぐに終わらせます」

 そう答えたスタンフィールドだったが、直後何かが自分の胸を貫いた。思わずロジャーから奪った剣を落とすと、口から血を吐き出した。それからスタンフィールドはゆっくり顔をおろし自分を貫いたそれを見た。

 それは光の槍だった。

 折れたジャスミンの『フルンティング』の剣を突き出すことで発動する光の槍。それが消えると、風穴が生まれ、そこから大量の血がドバドバと流れ出た。それをベルの剣が吸い始めた。

「これだけの穴ならさっきみたいには出来ないだろ」

「くっ……このままでは肉体が崩壊する」



〈貴様、なにをしている〉



「終わりだスタンフィールド!」ベルはそう大声をあげた。だが、スタンフィールドはまだ諦めてはいなかった。

「私はアンノウンの一部……つまり私にも闇の力が使えるのだよ」

 スタンフィールドは黒い霧、瘴気を全身から放った。瘴気は人間には有害、吸い込めばたちまち発熱、吐き気、頭痛などの症状を引き起こし、次第に呼吸困難をもたらし、最後は死に至らせる。

「これでお前達は終わりだ」

 勝ち誇ったスタンフィールドだったが、突然、サンサの剣が光りだした。

「なんだ?」

 なんと、サンサの『ナーゲルリング』の剣が周囲に漂う瘴気を吸収しだしたのだ。

「そんなことが」

 刹那、スタンフィールドの首が背後から斬られ、首が地面へと落ちた。

 吹き飛ばされていたロジャーが落ちていた自分の剣を拾って自分の意志で最後はスタンフィールドにトドメを刺したのだった。

 すると、スタンフィールドの肉体は灰となり、空へ舞って、消滅した。




◇◆◇◆◇




〈おのれ……まさかあんなガキにやられるとは……〉



「ほらね。これでもうあんたは復活するチャンスを失った」

 今度はルーシーの中にあった『愛』のルーンが反応する。ルーシーは力強く拳を握りしめた。



〈なんだそれは〉




「愛の拳」



〈くだらん。そんなものでこの〉



と言いお終える前にルーシーは足を『砂』のルーンで噴射させスピードをつけると、拳を思いっきりアンノウンに向かって突き出した。

「お前達からしたらたかが人間かもしれないけど、その人間にお前達は勝てない。魂のないお前達はただの『記憶』だ。意識という名のな」

 ピキッと音が響くと、アンノウンの肉体に亀裂が走り、そこからガラスが割れたように粉々に崩れた。やがて、それは灰となり、闇の中へと消えた。




〈忘れたか人間。例えお前達が勝利しようと、闇は無くならない〉




「光もでしょ」



〈……次も人間が勝つと思い上がるなよ。いずれ再び闇は力を取り戻す。その時、今度こそお前達が滅びる番だ〉




 アンノウンの声が消えた。

 だが、闇は再び現れる。奴が言ったように闇が不滅である限り。

 まぁ、その頃には自分は年老いてこの世にいないと思うけど。

 すると、ルーシーの中で愛のルーンが消えようとしていた。

(もう行くんだね)

(あぁ……君とはこれでお別れだ)

(この後、どうなるのかな)

(ユグドラシルの核が無事なら、ゆっくりとだけど再生を始めるよ。自然の力で。残念だけど、失ったものは元には戻せない。ユグドラシルが再生の過程で新たに生まれてくる世界があっても、失った世界は取り戻せない……)

(うん、分かっていたよ)

(君はどうするつもり? 黄金都市で皆と過ごすのかい?)

(暫くはね。でも、ユグドラシルが再生し世界が生まれたら、旅に出ようと思う。元々それが始まりだったしね)

(旅か……いったいどんな旅になるんだろうね)

(さぁ? でも、まぁなんとかなるでしょ)

(出たとこ勝負だね)

(そう、出たとこ勝負。いつもそう)

(君達らしいね)

(うん)




 ルーシーはお別れの挨拶はしなかった。なんとなくしたくなかった。

「さて、皆の所に戻りますか」

 ルーシーはそう言って、最後に残った『砂』のルーンで足から砂を噴射させ、その勢いで光輝く黄金都市へと向かった。

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