VSアンノウン【03】
(どうか……私に力を頂戴)
ルーシーの願いに炎のルーンが反応した。真っ先に反応したのが炎だったことに意外だった。
ドラゴンというエリミネーターの像を生み出した炎のルーン、元は神だったそれはとても強い力を持ち、その炎は破壊をもたらし、かつその性質は気が変わりやすい。その炎が目の前の敵を拒絶している。
今なら分かる。炎の意志を。
ルーシーは赤いオーラを漂わせた。それは真っ赤な炎とは違う。ルーシーの中の魂が燃えているのだ。それは今までの炎とは比べものにもならない力だった。
ルーシーは掌を上に向ける。それまでの火球とは比較にならない巨大な隕石のような規模の火球が生まれると、そのエネルギーに更に愛のルーンがルーシーの魂を経由して生み出した火球に更にエネルギーを加えた。
ルーシーは手をおろし、それに連動して火球がアンノウンに落ちた。炎は生き物のようにメラメラとして、敵の腕と胴体を焼いた。
アンノウンは悲鳴のような声をあげた。相変わらず人間の真似した声だ。
直後、闇から彗星が黄金都市に向かって飛んだ。それを見て瞬時にスタンフィールドだと直感した。
〈おのれ……我の肉体に傷をつけるか……〉
それは野太い声だった。アンノウンが遂にダメージを受けたのだ。それと同時にルーシーの中にあった炎のルーンが消えていくのを感じた。炎を司る神。それがどこへ消えたかは分からない。恐らくはその神も気まぐれな性格をしているのだろう。炎は人間の味方にはならない。炎は暗闇を照らし安心させる一方で大きい炎は恐怖を感じる。そして今は、安心できる。
ルーシーは心の中でありがとうと感謝すると、今度は水のルーンが反応した。
暗闇から突然海が現れ、アンノウンを飲み込んでいく。その波飛沫から人の姿が一瞬だけ映し出された。恐らく、それが水を司る神なのだろう。
アンノウンは突然現れた海に飲み込まれ、藻掻き苦しんだ。腐敗した肉体を海水が染み込ませ激痛を与える。その海から巨大な鮫たちが出現し、アンノウンの肉体を食いちぎっていく。
〈やめろ〉
アンノウンは瘴気を放ち鮫を殺すと、海は闇へ吸い込まれた。
水のルーンが役目を終え、ルーシーの中から消えていく。
すると、今度は風のルーシーが反応した。風は流動性かつ軽さという希薄な性質を持つ。故に無差別な竜巻や嵐で多くを巻き込む。その力は闇の瘴気を飛ばし、アンノウンの胴体に巨大な力を加わえる。
ルーシーは拳を突き出した。
「衝撃波」
ドン! というエネルギーの衝突がアンノウンの巨体に加わり、皮膚と肉を斬り裂いた。
〈たかが人間ごときが……よくも私の体を……〉
アンノウンの肉体が徐々に灰へと変わり破壊が始まった。
ルーシーの中から風のルーンが消えていくのを感じた。
〈だが、これで終わりではないぞ……〉
「それはどうかな」
〈何?〉
◇◆◇◆◇
その頃、黄金都市の空から突如光が現れるとそれは神殿前に落ちた。そこから現れたのはスタンフィールドだった。
そこへ光を見て向かっていたロジャーが到着した。
スタンフィールドはロジャーを見て「成る程な」と呟いた。
「エリミネーターも他のメンバーも倒したか。ルーンと似た力を持つ魔法の武器か。それは想定外だ」
「あとはお前だけだ。観念しろ」
ロジャーはそう言って剣を構えた。
「どうだろうな。お前達が例えあのお方に勝てたとしても、時間がたてばあのお方はまた復活する。この世が光と闇で出来ているなら、闇が無くなることはない。闇は永遠に存在するからだ」
「それじゃアンノウンは」
「そう、神の意識の残滓であり、闇を司るエリミネーター。あの女が幾つルーンを従えたところで、所詮闇には勝てない。格が違う。元々世界は闇と光から生まれた。他のアルケー、ルーンは更に世界を創造する時に生まれた産物に過ぎない。だから、お前達ではどう足掻いたところで最初から勝ち目がないことは決まっていた」
「いいや、ルーシーは勝つ」
「何を根拠に」
「ルーシーだから」
スタンフィールドは鼻で笑った。
「くだらないな」
スタンフィールドはそう言うと、体を変化させた。それがスタンフィールドの『変身』の力。
「ルーシーはお前のことをこう言っていた。何者でもないって。それは偽物とは違う。お前は空っぽなんだって」
「空っぽだからなんだというんだ? 確かに、私には他の奴らと違い生前の記憶がない」
「ないのは当然だ。お前は人の意識の残滓じゃないからだ。お前がアンノウンの切り札なのは、アンノウンの一部がお前だってことじゃないのか? だから、アンノウンがやられてもお前が無事ならアンノウンは何度だって復活できる」
スタンフィールドは人から禍々しい悪魔の姿へと変化した。
「まるでお前が私を倒すみたいな言い草だな」
「だってそうだから。ルーシーがアンノウンに専念できるようお前はここで僕たちが倒す!」
「僕たちだと?」
すると、ロジャーのあとに続き皆も現れた。そこには意識を取り戻したサンサもいた。皆ボロボロの姿になりながらも剣を持って。
それを見たスタンフィールドは少し驚いた様子を見せた。
「まさか、全員生き残っていたとはな」
「これも想定外だったか?」
「図に乗るなよ人間ごときがぁ!!」
そう言ってスタンフィールド、いや、アンノウンの一部、悪魔が襲いかかった。




