偽ルーシー
スキンヘッドの男は移動しながらこれまでの計画の流れを振り返った。スタンフィールドからはルーシーというルーンを扱う少女の話しを聞いていたものの、ここまでの我々の計画は円滑に進んでいた。それが今、ここにきて運が尽きようとしていた。何故? 運命の女神による悪戯なのか、それとも我々への試練なのか? 突然不幸がやってくるとまるで何かのせいにしてしまうクセは自分の生前の影響だろうか?
スキンヘッドが生前、自分のいた国が隣国と領土をめぐる戦争をしており、自分は人間をより沢山殺せる武器を発明する研究者として日々研究の毎日を送っていた。そんな自分は自分が発明した兵器で沢山人が死んでるという事実に何の抵抗もなかった。むしろ、自分の国が勝つ為、自分の国を守る為なら躊躇う理由など無かった。そこに正義があると信じられたからだ。
しかし、ある年の出来事……自分が発明した大量殺戮兵器(生物兵器)が戦争で大きな成果をあげた結果、それまで戦争から距離を置いていた各国を含んだ全世界から非難を受け、それまでやや優勢だった自分の国は世界を敵に回してしまい、一気に劣勢となった。結局各国の制裁を受け我が国は数ヶ月後に停戦協定が結ばれることとなり、その間、我が国は二度とその兵器を使うことは無かった。
私はというと、裏社会から賞金をかけられる身となってしまい、私は表社会ではもう生きられない状況になっていた。
「どうして私だけが責められなければならないんだ」
こうして酒浸りになった私は身を隠していた家にずっと籠もっていたが、信用していた仲間の裏切りで場所が外に漏れ、場所を特定された私はそうとも知らず酒を一杯やっているところを背後から後頭部目掛けて銃弾によって暗殺された。
自分を殺したのが誰なのか、誰が裏を引いていたのか、それを知る由もないが、どうせろくでもない連中だということに変わりがないことは分かっていた。
死後、自分の魂はどこかへ行った。残ったのはカーペットの上に転がる自分の抜け殻と、残滓である『意識』だけだった。
そこにあのお方が現れた。あのお方を見て天使でも神でもないことは直ぐに分かった。自分みたいな男に差し出す天使がいたとしたらそれは堕天使くらいだろう。自分が善なる人間でないことぐらいは流石に自覚はあった。だが、それ以前に私にはあのお方の底なしの闇を感じていた。強いていうなら
魔王。
あのお方は私を復活させるかわりに駒として役目を果たすよう言ってきた。まさに悪魔の契約だ。だが、私はそれに同意することにした。何故? 別に未練があったのではない。むしろ、あのお方の登場で私の知らない世界を知ったのだ。そこに興味が注がれない筈がない。私の単なる欲望、探究心が久々に働いた。
「……さて」
スキンヘッドの男は黒色のパワードスーツが用意してある場所に到着すると、早速それに全身を装着させヘルメットを被った。これは毒や銃弾を防ぐだけでなくスーツの外側に取り付けられてあるセンサーで相手の動きを予測させ、自動アシストしてくれる。
(流石にあの斬撃をスーツが防げるかは怪しいが、回避さえしてしまえば問題はない筈だ……)
スキンヘッドの男はパワードスーツを装着し終えると、ドローンが追跡している女の居場所まで移動を開始した。
◇◆◇◆◇
その頃、神殿前。そこで戦っていた筈の二名は既に決着を終えていた。倒れているのは、敵ではなくサンサだった。それをそばで見下ろす偽ルーシーがいた。




