食事
何故、自分達はこんなことをしているのだろうか? それは双子のエリミネーターがご飯にしようと言い出したところから始まる。最初に泉の周りを取り囲む森から火をおこす薪を用意し、火をつける。火が強くなるまでの間に具材を用意。食料や調理具はエリミネーターが用意していて、ルーシー達は野菜の皮をむいたり、一口大の乱切りに切ったりした。そんなことをしている間に火は強くなり、黒い鍋を吊るす。そして鍋に油を入れ熱し、肉や野菜をぶち込む。よく熱し暫くして水を投入。ぐつぐつ煮込まれそれはルウが入れられた後から茶色をしていて、私達は世界が崩壊するという時にカレーを作っていた。
飯盒で炊いた白飯とカレーを一緒の皿に盛り付けると、私達は一つのテーブルに着席した。
「いただきます」
私達はそう言ってスプーンを使って出来たてのカレーを口に入れた。それは美味しかった。辛すぎず丁度よい辛さと皆で作った達成感から出る家庭とはまた違った味わいがそこにはあった。
「美味しい~」サンサとシーラが口を合わせてそう言った。
一方ロジャーは「てか、何で俺達カレー食ってるんだ?」と疑問を投げかけた。
「そりゃ戦場に行く前の腹ごしらえとかじゃなくて? ほら、腹が減っては戦はできぬって言うじゃん」
「え、私はてっきり最後の晩餐かと思ってた」とベルは言い、それに驚いたジャスミンが「私達死ぬの!?」と訊いてきた。
すると、それを聞いてた双子のエリミネーターは「違うよ」と否定した。
「僕たちがただ最後に人間らしいことを人間と一緒にしたかっただけだよ」
「どういうこと?」とルーシーは訊いた。
「君達がここを出ていく頃にはこの世界は消滅し始めている頃だろう。その時、僕たちはもう存在しない。何故なら消滅する前に僕たちのルーンを君達に託すからだよ」
「いいの?」
「どうせ消える運命だ。なら、せめて最後くらい原初神に逆らってやろうってね。まぁ、厳密には原初神の意識なんだけど」
「原初神は自分が復活したいと思ってるかな?」
「肉体から切り離された意識が本物かどうかなんて重要じゃない。君達は原初神に負けちゃいけないんだ。それが例え神からつくられた人であってもね。僕たちエリミネーターは残念ながらそうはならない。だから君達は特別なんだ」
「人は特別なんかじゃないよ。人間にも色んな奴がいる。悪い奴もいっぱいいる」
「そうだね。でも、君達はそいつらとは違う。特別なのは君達なんだ。現にここまで来たでしょ? それだけで特別なんだ。他の人とは違う」
「エリミネーター、正直に話して。どうして私はルーンを宿せるの? 私以外の人間にも宿せるんでしょ。私に託したあの人のように」
「いいや。ここまで来れた君だから正直に答えるよ。君はただの人ではない。厳密には君の魂が普通ではない」
「どういうこと?」
それからエリミネーターはとても重大なことをルーシーに告げた。それを聞いた一同はルーシーを含め衝撃を受けた。
「最初に君に会った時は確信があったわけじゃなかった。でも、ルーンを宿す人間は決まって重大な役割を持つ特別な人間の候補だった。だけど、候補はあの男が死んだように、候補から外れることがほとんどなんだ。でも、君は一部のエリミネーターから信用されルーンを託されたように、最後はラグナロクの中、この森へ逃れ生き延びた。それも君がヴェロニカや僕たちとの出会いがあったからだ。この偶然にも思えることが君を中心に連続し、結果として運命は君を選んだんだ。エリミネーターは候補者から選別しテストするというもう一つの役割がある。守護者として余所者を排除する一方で、候補者の選別をしていたんだ。そして認められればルーンを宿せるようになる。ルーンは神の魂ではないんだ。契約だ。その契約に従って神は来たるラグナロクに備えリーヴとリーヴスラシルとなる人物を探していたんだ」
ルーシーはそこまで聞いて察した。だから君達なんだと。つまり、エリミネーターはサンサ達皆を含め君達と言っていない。
「私は」
「分かっている。君が運命や預言ではなくルーシーとしてどうしたいのかを。だから、僕たちはそれに協力する。これから先、預言にもない未来に向かうことになる。それは本当に誰も知らない未来だ。もしかすると、それは本当に人類滅亡という未来になるかもしれない。それでも、僕たちは最後に預言より君を信じたい。ルーシー。君だから僕たちは協力したいんだ。アンノウンに挑もうとする君だから」
「ねぇ、話しの途中で悪いんだけどリーヴとかリーヴスラシルとかこっちは分からないんだけど」とサンサは言った。
「生き残った人間の呼び名のことさ。預言ではそう呼ばれている。その二人から人類は再び数を増やすんだ。新しい世界でね」
「へぇ……」
すると、ベルは「それじゃ預言は二人しか生き残れないってことなのか?」とエリミネーターに向かって言った。
「正確には男女二人になる」
「それじゃうちらは元々預言には含まれていないんだね」
「……正直に話すとそうなる。でも、ルーシーはその預言を変えようとしている。自ら、アンノウンに立ち向かうことで」
「私達にも何か出来ないの?」とシーラは言った。するとロジャーも「僕も何か出来ないか?」と言い出した。
「アンノウン相手ではルーン無しでは敵わない。ルーンを持たない君達ではアンノウンと戦うのは無理だろう。場合によってはルーシーは君達を守りながら戦うことになる。だから、君達には君達の出来ることをするんだ」
「私達に出来ること? それは何?」とサンサは訊いた。
「君達にも役に立てることがあるってことさ。知っての通りアンノウンを倒したところで崩壊を始めたユグドラシルが戻ることはない。でも、今なら崩壊した場所を修復させることが出来るかもしれない。それにはユグドラシルの核が無事であることが重要なんだ。そこで君達はルーシーと二手にわかれて行動してもらう。ルーシーはアンノウンと戦い、その間に君達は崩壊するユグドラシルから中心部にある核をまずは見つけてもらう。ただ、そこできっと組織の連中の邪魔が入る筈だ。連中の狙いはラグナロクを引き起こし崩壊するユグドラシルから核を奪うことだからね。君達はその核を守り連中の手に渡らないようにして欲しい」
「その核が例の原初神復活に重要ってこと?」とシーラは訊いた。それにエリミネーターは頷き、話しを続ける。
「勿論、今の君達では組織の連中を相手にするのも難しいだろう。だから、とっておきの武器を用意しといた」
そう言って『愛』のエリミネーター泉の方を見た。皆もその泉に目をやると、透き通った泉の中に四本の剣が沈んでいた。
「この剣にはそれぞれ名前がある。サンサ、君には『ナーゲルリング』の剣を、ジャスミン、君には『フルンティング』の剣を、ベル、君には『リジル』の剣を、シーラ、君には『グラム』の剣を渡そう」
エリミネーターがそう言うと、泉の中にあった剣たちが突如浮かび上がり泉から出ると、呼ばれた剣はそれぞれの持ち主の手に飛んだ。全員がそれを受け取る中、ロジャーだけが受け取れなかった。
「あれ? 僕のは?」
「君にはその四本より特別な剣を授ける。その名は『勝利の剣』だ。君は一人で、その剣を持って炎の巨人エリミネーターを倒すんだ」
「エリミネーターを?」
「恐らく、連中の手駒として最後に残っているのがそのエリミネーターだろう。そして、組織のメンバーとそのエリミネーターがユグドラシルの核を狙って現れる筈だ。そこで君が炎の巨人エリミネーターを倒すんだ」
「それで、私達は連中を蹴散らせばいいんだね」とベルが確認し、エリミネーターはそれに頷いた。
「ヴェロニカが自ら消滅した今、メンバーは残り五人だ。そして、炎の巨人のエリミネーターが一体。恐らくスタンフィールドは最後まで現れないだろうから、四人は」
「私達が相手をする」とシーラが言った。
「そうだ。君達一人でも欠ければ運命はそこで途絶える」
「責任重大ね」とサンサが言うと、ジャスミンは素朴な疑問をエリミネーターに訊ねた。
「どうしてスタンフィールドは最後まで現れないと思うんですか?」
「最後の六人目のアンノウンの駒も重要な意味を持つが、スタンフィールドの役割も同じくらい重要なんだ。六人目が計画の仕上げなら、スタンフィールドは計画が失敗した時の保険という役割がある。というのもやつはそもそも最初の駒なんだ。指揮をとっているのもほとんどやつになる」
「あいつが……」とルーシーは呟いた。
「それで最後に現れるというわけね」とサンサは言った。
「そういえば六人目についてまだ具体的に教えてもらってないんだけど」
「ああ、そうだったね」そう言ってからエリミネーターはルーシーの顔を暫く見た。
「何?」
「覚悟して聞いて欲しい。六人目のメンバーは」そのあとエリミネーターが喋ったことは皆に衝撃を与えた。
「大丈夫?」サンサはルーシーに訊ねた。ルーシーは複雑そうにもとりあえず「うん」と答えた。
するとエリミネーターは咳払いをした。
「申し訳ないがそろそろ時間だ。これから僕たちはこの後ルーシーに僕たちのルーンを託す。僕たちはそれで消滅するけど、この後のことは『愛』のルーンが教えてくれる」
「それで、肝心なことを訊いていい?」ルーシーはそう言った。
「ほとんど世界が崩壊している中、どうやって移動したらいい?」
「そのことなら問題ないよ。特別な帆船がある。元々ラグナロクから人類をできるだけ逃す為に用意していた船だ。それで暗闇の世界でも移動出来る。ただし、風がないからそこはルーシーの出番だね」
「本当、準備がいいんだから」
「大変だったんだよ」
「うん……ありがとう」
「僕たちは『愛』のエリミネーターだからね。自分に宿すルーンに従っただけさ」
「それでもありがとう」
「頑張ってね。僕たちに出来る最大限の用意はしたつもりだけど、戦いには参加してあげられない」
「例の『塔』が君達にも影響しかねないからなんだよね」
「そうだよ」
「勝つよ。私達」
「うん。それじゃルーシー」
この世界にも地揺れが起き始めた。崩壊が始まろうとしていた。
「僕たちのルーンを君に託すよ」
双子のエリミネーターは手を繋ぐと、光だし、それはルーシーの胸に向かって飛んだ。それは、温かい光だった。




