破壊者
目の前に現れた塔はこれまた初めて見るもので、一言で表現するならスチームパンクのような見た目をした塔だった。パイプが複数むき出しであって黄金色の歯車、天辺からは猛毒みたいな見た目をした緑色の蒸気が噴出していて、塔の真下にあるノズルスカートからは赤い炎が噴出しているのが見える。
あの緑の蒸気は空に広がっていくと、雲のようにその下には影が出来た。
あれが単なる蒸気でないことは想像がついた。
やがて、緑色の空から雨が降り始めた。水は透明な雨をしていて、真下の砂漠を湿らし始めると、それに反応した砂漠に潜む怪物達が一斉に顔を出し始めた。明らかに嫌な予感がした。しかし、怪物達はそうとは知らず恵みが天から降ってきたと疑いもせず飛び跳ねながら喜んだ。まるで飛び跳ねた魚だ。だが、やがて異常に狂ったような飛び跳ね方を次第にしだすと、あれが喜びではなく苦しんでいるんだと分かった。その時には遅く、砂漠の生き物達は次々に砂の上に打ち上げられた魚のように倒れると、そのまま死んだ。次々に生き物達の死体が砂漠でいっぱいになると、今度は砂漠の離れた場所から突如として巨大なタコ、エリミネーターが出現しだした。まるで、何かに怒っているかのように足を激しく動かし、砂煙を発生させていた。あれ程、ここにいる怪物達に襲われていたのに。
ふと、蜘蛛神のエリミネーターが浮かんだ。守り神としてそう呼ばれ、実際外の世界から現れたドラゴンのエリミネーターと戦った。
この砂漠の砂はあのタコが墨のかわりに吐き出したものだ。その砂にここの怪物達は日差しから身を守れている。確かに、そう考えるとあのタコも守っていたんだ。だが、怪物達にはそこまでの知性がなかった。激しい生存競争で神の生まれ変わりとされるエリミネーターも例外ではなかった。
神は死ぬ。
人は神を特別なものとして崇めた。確かに、人には理解出来ない雲の上の存在。それでもこの世界では神は特別ではなかった。
元神が元神を襲うエリミネーター同士の戦いも神話にある神同士の戦いが語られるように、それも特別なことではなかった。
今や組織の連中はエリミネーターを使って世界を削除、破壊して、全てをなかったことにしようとしている。
美しい海も森も生き物も文化も全て。
それを企むアンノウン。
ルーシーは拳をつくった。
「あの塔をぶっ壊す!」
ルーシーは炎のルーンを宿し、砂漠に炎の蛇を生み出した。ルーシーの意志を宿し、生き物のように塔目掛けて炎の口が開いた。雨は降り続けたが、炎を消す程のものではない。
蛇の口は塔の真下をとらえ、加えると勢いよく振り回しそれをぶん投げた。
塔は勢いよく砂漠に突き刺さり、直後に大きな爆発が起こった。
緑色の空から雨が止み、やがて空は晴れ太陽が顔を出した。
太陽が現れるとタコは落ちつきを取り戻した。同時に砂を吐き出すのをタコは止めた。その砂は砂漠に落ちた。
確かに世界は砂漠のようだ。だけど、なにも苦だけしかないわけではない。色々な世界を見てきた中で、悪いこともあったが不幸ばかりでもなかった。
良いも悪いも両方あるのがこの世界だと思う。
むしろ、この砂漠のかわいた砂のような世界でどう生きるのか、それを問うのが人生なのだと思う。だから、この世界で私達は生きることを選択した。
空にある太陽に今まで姿を隠していたのか、突然空から炎の巨人が降ってきた。大きな地震と、砂煙が起きた。巨大な炎の剣を持ち、鎧をつけたその炎の巨人はルーシー達の前で立ち上がる。
「エリミネーター……」
よそから現れたエリミネーターだった。
炎の巨人は目の前にいた炎の蛇を見ると、炎の剣を持ち上げ、それを振り下ろし地面に突き刺した。直後、そこから炎の柱が立ち上がり、広範囲の柱は蛇をも巻き込んだ。
「なんなのあれ……」とサンサは言った。
ルーシーは炎の蛇が途切れたのを感じた。炎の格が違う。あの炎は多分……
「あれだ。あいつが多分きっと世界を壊し回ってるエリミネーターだ」
ルーシーはそう言った。




