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ラン・ルーシー  作者: アズ
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沈む船と希望の光【4】

 自然に囲まれた森の中に自然でない塔があって、その中に女の皮を被った人もどきがいる。その人もどきが塔から見る先には飼い慣らされた炎の蛇が口を開けては武神に食らいついていた。中には首を締める蛇もいた。まるで生きているようにオレンジ色の炎はメラメラとしていた。炎が武神に乗り移ると、武神は藻掻き続けた。あれに痛みや熱いといった感覚、感情があるのだろうか? 実のところ人もどきはエリミネーターのことを深く考えたことはなかった。何故なら世界の全てが一つになる時、神の化身であるエリミネーターも消滅するからだ。そして、元々の本当の神へルーンは集まり、神は真の姿を取り戻す。神の復活だ。スタンフィールドは一神教だった。女の前に現れたあの黒い翼のあれがそうなのか? 真の神は己を殺して遺体から新たな命を生み出したユグドラシルではなかったのか? だが、女にはどうでも良かった。この世界を破壊し復讐出来るのなら。

 しかし、その夢が一人の少女に今目の前で邪魔されていた。それを見ていた人もどきは唇を噛み締めた。そこから血が流れ出る。

 武神はというと、百ある腕で蛇を引きちぎり脱出しようとするが、炎の蛇は次から次へと現れだし、百ある腕や足や体に絡んでいく。

「無駄だよ」

 どっからか少女がそんなことを言ったような気がした。

 実際、百ある腕にがっしりと蛇が絡むと、それはまるで巨大なロープのように力強くで引っ張られていく。百ある腕が伸びきって逆に百ある腕が引っ張られると、森の少女は釣り竿を一気に引いた。



「宝引き」



 全ての腕が引っこ抜かれ、百腕の武神は声をあげながら灰となった。消滅した灰から一つの白い光が現れ、それはルーシーの元へ飛び、少女の胸の中に入り込んだ。

 『戦』のルーンがエリミネーターから解放され、少女にそのルーンが宿った。

 女の皮を被ったカーラは舌打ちをした。

「まさか武神があっさりやられるなんて」




◇◆◇◆◇




 その頃、ロジャーは顔をしかめながら着々と準備に取り掛かっていた。メガコウの体内のガスが溜まったような酷い臭いもそうだが、ベルの計画はあまりにも無謀に見えたからだ。

 最初、計画を聞かされた時ロジャーは正気を疑った。だが、ベルは本気だった。それはベル達が前回脱出に使った方法、その時はジャスミンの発案だが、メガコウには皮膚の弱い場所がありそこを突き破って海水が押し寄せた状態で、空腹で餌を食べようとメガコウが口を開いた時に逆流を利用して脱出するという嘘の脱出方法をアトリ達に話しして連中を騙し、その間自分達はメガコウの口から脱出しようという話だ。メガコウは体内にあるゴミを吐き出すタイミングがある。それはメガコウが何でもかんでも丸呑みする習性があるからだ。それを利用して自分達は脱出しようというもの。一度の成功体験が彼女達にはあるから、その辺りはベル達を信用している。

 問題はアトリが簡単に騙されるかだった。小船と荷物、脱出準備はベルに言われた通り出来たが、本当に騙されてくれるだろうか。

 暫く約束の場所で待機していると、遠くからベル達がやって来た。

「上手くいったよ」

「本当に?」

「えぇ。連中は早速大砲を準備してるわ」

「それじゃ、僕達はメガコウが口を開けて吐き出すのを待てばいいんだね」

「そう。そして、そのタイミングはもうじきやってくる」

 ベル達はその時を静かに待った。

 暫くして、遠くから砲撃の音が響いた。

 メガコウが唸り声をあげた。それと同時にメガコウは大きな口を開ける。それを目撃したロジャーは思わず胸を打たれた。長い長い暗闇から覗いてくるのは太陽から放たれた一筋の光。海が外へと流れ出て、口の出口付近で待機していたロジャー達が乗る船が勝手に動き出す。そして、それは徐々に明るい場所へと移動していった。

 メガコウという怪物の体内から太陽の下にようやく脱出すると、風がやってきて、ロジャーやベル達の髪を靡かせた。

 ふと、突然ベルが後ろを振り返った。それにつられロジャーも後ろを向く。すると、メガコウの口から同じ小船が外へと出ようとしていた。その船にあのアトリが乗っていた。

「そんな……」

 ベルの嘘にアトリは騙されてなんかいなかった。それに皆が絶望した。まだ、これは僕達の希望の光にはならない。希望はまだまだ遠い場所に存在した。

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