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ラン・ルーシー  作者: アズ
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沈む船と希望の光【2】

 人間はどうしてこうも男だとか女だとか、客はお客様だとか、客のいうことを聞いてればいいだとか、移民だとか、色々文句を言ってるのか。全員同じ人間でしょ? そこに何で違いを認めずカテゴリーするのか。いちいち違いをカテゴリーする必要はない。困った人がいたら助ける、そんな当たり前も分からず、ただぐだぐだと男だの女だのと言うのか。

 くだらない。

 だから、女に有利に権利を与えたら当然男は不平不満を口にする。かつて男が女にしてきたことをあたかも都合よく忘れて。

 くだらない。

 お前は何者なのか?

 職業や性別、名前以外のカテゴリーを外された人間は初めて自分が何者かを考える。

 何も答えられない。

 何故?

 分からない。

 やはり、くだらない。



 ……そんなくだらない人間が住む世界なんてむしろ滅茶苦茶になってしまえばいいんだ。



 オレンジ色の空に学校の鐘が響き渡り、よその皆は既に自宅にいる間、自分は寄り道をしながらダラダラと迷いながらも最後は重たい足を玄関前まで持っていく。ドアを開けるのが心底嫌だった。分厚い鉄の扉の先に、私の大嫌いな奴がいる。でも、自分の居場所は他になかった。ドアを開けると、母親の罵声が始まる。そして、母親が連れ込んだ酒臭い男が横から割り込んできて、私を床に押し倒すと、男は自分のベルトを外し始めた。

 女になんか生まれてこなきゃ良かったんだ。誰かに言われたわけでなく、自分が自分にそう言って自分を傷つけた。

 誰もが好きで女に生まれたわけでもない。なのに平然と女なんだから子どもを生むのは当たり前とか、〇〇だからとか、変な決めつけをしてくる。女の子なんだから可愛くしなきゃとか、股を開くなとか、そんなのはどうでも良かった。股なんてさんざん母親が連れ込んだ男に無理矢理広げられるんだ。最初からそうなるんだと分かっているから、今更気にすることなんてなかった。

 自分の体が自分のものでないという感覚がずっと残って頭から離れられない。

 いったい自分は何者なのか?

 そんな哲学的な問いに私は答えを見つけられないでいた。

 私が私でないのなら、私は何なのか、何故生きているのか。

 全てがくだらなくどうでも良くなった自分は、マンションの屋上から飛び降りる決意をした。

 その時見えた空は相変わらずで、そこから見下ろすと、あんなに大きく感じた大人達が小さく見えた。

 私は呆れ笑った。それは自分にか? 世の中にか? そんなのはどうでも良かった。

 飛び降りた私の体重は軽かった。地面に落下するまで、思った以上にかかった気がした。




 それで死んだ筈だった。

 これで終わる筈だった。

 でも、私の目の前に黒い天使が現れた。悪魔かもしれない。そいつは私を生き返らせた。別世界へ。異世界転生とは違い、元々一つだった世界が無数にわかれ、そのうちの一つに移動したに過ぎなかった。私はそこで新たな使命を天使から受け取った。

 無数に増え続けた世界を破壊せよ。

 それは私にとって悪い話しではなかった。元から壊したいと願っていたことだ。それから私は天使と契約し、組織の一員となった。




◇◆◇◆◇




 突然過去の記憶が蘇りカーラは塔内部の執務室で戸惑っていた。

 何故、あの記憶を今思い出したのか。それまでは思い出すことすらなかったというのに。それは悪い兆候だ。まるで走馬灯を見たかのような夢を覚ますようにカーラは自分の両頬をぴしゃりと叩き、冷水を飲み干した。そして、此方にやって来るルーシーの対処方法を考えた。どんな手が有効か? 情報なら此方が有利だ。既にスタンフィールドから受けた情報が此方にはある。入手したルーンとその力について。それによるとまだ小さな子どもであるにも関わらずそれに見合わない巨大な力を持った子だとか。

 あれ程力を欲し手に入らず一度は死んだ自分と、運良く力を手にした少女。何の因果か。無力だった自分に何か取り柄があれば、何か持っていれば、そう、それこそ特別なものを。自分は特別なんだと感じられるもの。

 残念ながら自分は手に入れられなかった。だから、今回天使から力を得て、私はこの力を振るわずにはいられない。破壊、死、復讐。私にとって今が最高地点にいるのに、それを邪魔する女。

「ガキだからといって私は優しく出来ないわよ」

 それは何も不幸ではない。私がやられたことは他でも似たようなことが起きている。ただ、誰も見て見ぬ振りをして助けなかっただけだ。

 そんな人間なんて必要あるかしら? 全て死んでしまえばいいのよ。

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