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ラン・ルーシー  作者: アズ
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アンノウン

【登場人物】


●ルーシー……三つのルーンを手に入れ現在は泉のある場所で修行中


●ベル、サンサ、シーラ、ジャスミン……一人で行ってしまったルーシーを追いかける最中、アトリ達に捕まる


●アトリ……別世界にあるとされる黄金の山を手にする為に別世界から生還したベル達を利用しようとする


●スタンフィールド……組織の一人で『変身』が出来る


●ヴェロニカ……組織の一人で『偽・ルーン』を生み出した


●アンノウン……未知のエリミネーター?





●ロジャー……ルーシーを追いかけた道中でメガコウに食われてしまう。その後は未だ不明……

「エリミネーターは余所者を排除する言わば守護者みたいなもの。人間で例えるなら抗体かな。でも、君が違和感を覚える理由はエリミネーターに意志があるのかということでしょ?」

 ルーシーは頷いた。

「ある」

「!?」

「具体的に言うと僕達が恐れるエリミネーターが実在するんだ」

「あなた達が恐怖するエリミネーター?」

「そうだよ。僕達はそいつに仮の名でアンノウンと呼んでいる。そいつの正体はその名の通り未知で、どこから現れたのかも正直不明なんだ。ただ、言えることはそのアンノウンはスタンフィールドや連中が現れた時とほぼ同時に出現したということだ」

「その組織とアンノウンは繋がってるかもしれない?」

「というよりアンノウンが黒幕だと思っている。連中を集め組織を作ったのがそもそも誰なのか、ずっと謎のままだ」

「スタンフィールドじゃないの?」

「どうだろう……連中は知る限りでは六人いるよ。うち、君達は既に二人と遭遇しているみたいだけど」

「まだ会ってない四人もいるのか……」

「これからどうする? 例えスタンフィールドを倒せたとしても組織壊滅には繋がらない」

「つまり、黒幕を倒さない限りは」

「そういうことになる。でも、アンノウンは他のエリミネーターよりきっと強い。意志を持ったエリミネーターの企みが世界を一つにし、あとは破壊するなんてそんな物騒な計画を企てた中心にいるんだとしたら、かなり厄介な相手かもしれない」

「つまり、もっと強くなる必要があるわけね。いいじゃない、やってやろうじゃない!」

「本気?」

「本気もなにも他に誰がやるって言うの?」

「そう……鍵は君の手の中だ。もう君を止めたりはしない」

「もしかして、私からここを出さないようにしたのって、私のことを思って止めようとしたんじゃない?」

「……」「……」

「本当、あなた達って人間みたいね」

「ルーシーは行っちゃうの?」

「うん」

「スタンフィールドを追うの?」

「うん。でも、まだ組織の手掛かりがあるわけじゃないからとりあえずあちこちの世界を渡りながら探すつもり。その間にルーンを極めたり、エリミネーターを倒してルーンを増やしたりするよ」

「あの男のように?」

「うん」

「それは辛い人生だよ」

「うん。でも、やるよ」

 ルーシーはハッキリとそう答えた。ルーシーにはその覚悟が出来ていた。




◇◆◇◆◇




 その頃、ベル達を乗せたアトリの船は魔の三角海域に突入していた。雨は止んで夜空が広がっていた。アトリの部下達は人気に酒を飲みながら騒いでいた。ベル達はそこから逃げるように甲板にいて静かに海を眺めていた。

 そこへ一人の足音が近づいてきた。ベル達が振り向くと現れたのはアトリだった。それを見たサンサとジャスミンは後ろに下がる。

「お前だけだな、一緒にいた男が殺されても心慌意乱せずに冷静になろうとしていたのは」

 アトリはベルを見ながら言った。

「経験か?」

「いや……」

「俺が怖いか?」

 ベルは戸惑った。どう答えるべきか直ぐに思いつかなかった。

 ベルも男の前で必死に弱さを見せないよう努力はしていても、きっとこの男には全てが丸見えにうつっている筈だ。そう思うと下手なことは出来ない。

「この海域は行方不明になる船が続出する魔の三角海域と言われている。本当かどうかはしらないが、俺は少なくとも何度かこの海域に入ってはこうして生き延びている。海域に入った船全てが行方不明になるわけじゃない。気をつけるのは突然の嵐だ。それに巻き込まれれば確かに無事では済まないだろう。だが、それは海に出る宿命みたいなものだ。いちいち嵐が怖くて航海に出ない船乗りはいないだろう。勿論、怖いもんは怖い。だが、それでも人間は不思議と一歩前に出ちまう生き物なのさ。それは勇敢なのか馬鹿な生き物なのか……ふん、馬鹿で結構じゃないか! それでも男は海に出る生き物だ。あの船が帰らなかった。次は自分かもしれない。そんなことを言い続けてたら人間はいつまでも陸からは出られなかっただろう。 ……つまり、何が言いたいかというと、俺をハメる為にこの海域へ誘導したのなら、その企みは無駄だってことだ」

「私達がこの海域を渡ったのは本当だ」

「そうか。ならいい。それで、この後見えてくるんだろ。夜空にお前達が見たというオーロラが」

 その筈だ。でも、その前に私達は…… 。




 それは静かな夜だった。風もおさまり、波は穏やか。まるで嵐の前の静けさのように。

 海の奥深くから浮上する巨大な影は大きな口を開きながらアトリの船の真下に現れた。

 アトリは知らなかった。世の中には嵐より怖い怪物がいることを。

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