私達
「『愛』?」
ルーシーは思わず聞き返した。いや、それよりも人の姿をしたエリミネーターがいるなんて思ってもみなかった。それまでのエリミネーターは化物ばかりで、エリミネーターは全部そうだと思い込んでたところがあったが、人の姿もあるということは、場合によっては人々に紛れ潜んでいる可能性もあるということではないのか? もし、これを知った人間がいたら、悪用し自分は神の生まれ変わりだと言い出して高い壺を売りまくる人が続出するだろう。だが、そもそも肝心なのはエリミネーターは人間の敵なのか?
その心を読み取った二人は首を振る。
「敵とか味方とかはないよ。確かにエリミネーターと言っても色々あるけど、少なくとも僕達の中では君の敵ではないよ」
「だが、エリミネーターの中にはこれまで連中の言う通りに従ってた」
「僕達はそいつらと関係ないし、蜘蛛神と呼ばれたエリミネーターだって人間の君に大事なルーンを託したじゃないか。必ずしも敵ということはない」
「元は一つの神から生まれたんでしょ。だとしたらあなた達エリミネーターは兄弟になるんじゃない?」
「人間みたいに考えてもらっちゃ困るね。僕達にはそんな意識なんてないよ。ついでに言うと、僕達を生み出したその神を親だと思うこともない。僕達は僕達さ」
「てっきり、自分の親を復活させる為にエリミネーターが連中に協力しているのかと」
「全然そんなことないよ。だって、もしそうなら僕達は消えることになるんだ。僕達がいた世界が消えるということは、一つの神に全て集まることだからね」
「それは他のエリミネーターが消えるってこと?」
「そうだよ。でも、別に消えるのが嫌ってことじゃないんだ。神も世界も死は存在し、死は誰にだって平等に存在するんだ。最初の神が死んだようにね。だから、死は恐怖するものじゃない。受け入れるのさ。僕達もそうする。ただね、最初の神が死んだのはそもそも世界を生み出す為なんだ。連中はそれを理解していないんだ。でも、いずれはこうなるとは思っていたけど。人間は臆病だからね、自分達とは違う世界を知ると、真っ先にそれは自分達の敵になるかどうかを考える。過去、人間が繰り返してきた戦や侵略を相手もしてくるかもしれないと警戒心を強めながら。一番はお互いに知らず、不干渉でいること。それが平和だと思っている。残念ながら世界を旅した君達やここに来た別の男で、世界が複数存在することが徐々に知られてしまった。こうなれば不干渉ではいられない。いっときの平和は崩れ、人間は戦争の準備を始めるだろう。きっと、大きな戦争だ。色々な兵器が開発され、大勢が犠牲にあう。年寄りも女も子供も死に、気づけば人間の住める場所は無くなり、骨と荒れた殺風景な大地が残るだけだ。だとしたら、世界は複数あっちゃいけないのかもしれない。だから一つにまとめる。強引なやり方で。そこに寛容という言葉は存在しない。でも、沢山ある世界がそもそも痛みを分かち合ったり、愛を与え合ったり、その共同体をつくり出すこと事態が果たして可能だろうか? 僕達にはそれが分からない」
「つまり、静観するつもり?」
「そうなるね。僕達はどうにかしようとは思わない。連中が勝つか、君達が勝つか」
「君達?」
「そう。君達だ」
◇◆◇◆◇
サンサ達はブーツに半袖半ズボン、上に羽織るものを腰に巻き結んだ状態で早速港のある街へと向かった。シーラは道中スケッチブックと絵の具や筆記具を新たに揃え、ベルは気に入ったのかテンガロンハットを被っていた。ジャスミンはというと旅のお守りにとカラフルな数珠みたいなネックレスを首に掛けている。ロウボサムは紳士服から流石に着替えてもらい、ブーツに革のベルトをした長ズボンを履いている。
だが、まだ知らない世界にも行くことになるだろうから雪対策の防寒具を鞄の中に入れてあり、あと着替え用も何着か各々の背負うタイプの鞄に入っていた。その鞄には食料や水、その他必需品を入れてある。ロウボサムは逆に宝石や時計や小道具を入れ、別世界でそれを売ってその国の現金を手に入れる手段を考えていた。
こうしてサンサ達は旅支度を恐らく完璧に済ませたが、それでも一つ大きな問題があった。それは別世界への行き方だ。というのもロウボサムが言うには魔の三角海域を通るしかないというのだ。その海域を通るルートであれば、どの国の海域にも属していない為に世界の端まで行けるのだとか。でも、その海域でサンサ達は前回メガコウに襲われていた。メガコウならどんな船であろうと丸呑みしてしまうだろうから、絶対に避けたいルートだが、それ以外のルートは面倒な手続きに数日かかるうえに金もかかる。ロウボサム一人分であればそれもなんとかなっただろうが、サンサ達にそんな余裕はなかった。服やらものやら色々買い込んでしまい、全員貧乏だった。
というわけで、選択次のないサンサ達は魔の三角海域を通ってくれそうな船を港で見つけなければならなかった。




