VSスタンフィールド
水の塊が校長室に突如現れ、ブルッとゼリーのように震えると、中に閉じ込められていた虫達が外へと吐き出され、そのまま校長室の外へと逃された。水の塊はルーシーの水のルーンで作ったものだった。敵はあとあのスタンフィールドのみだ。暫く羽を濡らした虫達は床に落ちたまま動けないでいる。その間に水の塊の中心から渦を発生させ、まるで黒い血が洗濯されるかのように黒い液体は徐々に赤色の血となり、黒い液体と分離し始めた。
「そうか……これが奴の本体なのか」
つまり、私達の前に現れた鉤鼻のあの男もまた変身した姿だったのだ。スタンフィールドは怪物に姿を変えた時、これが自分の姿だと言った。だとしたら、スタンフィールドは人ならざるものだということだ。そして奴は役割に合わせそれに相応しい姿に変身をしてうまくその空間に混ざっていたのだ。
ルーシーは目の前の「何か」を注視した。怪物から黒い血が抜かれ、分離した黒い液体は渦の中に巻き込まれ、その勢いに逆らえずにいる。抜け殻となった体の方はというと既に死んで青白くなっていた。それはまるで別人のようなしわくちゃな顔をし、鼻は垂れ下がっていた。
「世界を一つにしようとする我らを邪魔するとは……全く我々の崇高な計画を理解出来ない愚か者には本当に呆れる。だから不良になど落ちるのだろう。本来、教育であれば子はその影響を受けやすい。だからこそ良い実験環境だと思ったが上手くいかないものだ」
「なんでわざわざ世界を一つにしようとするのさ。その為に犠牲が必要ならそんなもの私は望まない」
「個人主義な考えだな。そう言ってるから世界はいつまでもバラバラのままなのだ」
「違いがあるから世界は面白いんじゃないの? なんでも共通にする必要はない。例え、言葉が違っても、その国の、その世界の文化を私は否定しない。そもそも世界が一つになればなんだって言うわけ? 世界に一つとか私はそれが嫌だね」
「全く、学校をまともに受けなかった子どもが喋ることは本当に悪影響しかないな」
「私は今の友達で充分。これ以上は必要ない。皆一つを望んでないし、皆仲間になろうとか、統一とか、本当に意味分からないし気味悪い」
「やはり、躾が必要だな」
刹那、水の塊が内側から弾かれ、水飛沫があがる。ルーシーは一旦下がり校長室を出た。その後ろを大量の水が溢れ出る。それを瞬時にルーシーは凍らせた。しかし、校長室の中から飛び出た氷が直後に砕かれ、校長室から再び死体に乗り移ったスタンフィールドがびしょ濡れになりながら現れだした。
「水遊びはそれくらいにしてもらおうか」
スタンフィールドはそう言って指をパチンと鳴らした。すると、スタンフィールドと全く同じ人物が複数人現れルーシーを取り囲んだ。
「なに……これ?」
「全員私だ」
「全員!?」
「私は一人ではない。それと、例えここにいる私全員を殺したところで他の私が生きている以上、お前は私を完全に殺せはしない」
「そういう意味か!」
「さて、降参か? まぁ、降参しようがお仕置きは受けてもらう。悪い子には罰を」
「私はお前の生徒になったつもりはないんだけど」
「いくら否定しようと、お前はここの学生だ。そして、この学校の校長は私だ」
すると、今度はスタンフィールドBとスタンフィールドCが捕らえたサンサ達を連れてきた。
「ごめんルーシー……」
スタンフィールドは不敵な笑みを見せた。
「宣言通り、お前の負けだ。お前では私には勝てんよ」
スタンフィールドはルーシーに近づこうとした。ルーシーはもうどうすることも出来なかった。この状況には流石のルーシーも予想しなかった。
ルーシーは後退りするしかなかったが、その前にスタンフィールドの手がルーシーを捕まえた。
「どこへ行くつもりだ?」
その時だった。どこかでガラスの割れる音がすると、ルーシーを掴んでいたスタンフィールドの腕が床に落ちた。
「やはりお前か」
そこに現れたのはルーシー達をここまで連れてきたあの男だった。
「前回の続きといこうか」
「ふん、何度やろうと結果は同じだ」
「そうだな。お前を殺しきるのは無理だ。ヴェロニカとルーシーをぶつける間、私を足止めしにきたお前を殺したがこうしてお前はまだ生きている。その前にもお前を何人も殺してきたが、その度にお前はまた現れた。だが、そんなお前も私には勝てなかった。お互い、決着もつけずにここまできてしまったわけだが、そろそろ決着をつけたいところだな。私もお前を絞め殺したり、斬殺したり、毒殺したり、色々な方法でお前という奴を沢山殺してきたわけだが、そろそろいい加減お前の死体を処理するのも面倒になった」
「そうだな。自分が沢山殺されるのは気分が悪い。勿論、君用に特別なエリミネーターを用意したさ」
「特別なエリミネーターだと」
「外に出れば分かる」




