学校【2】
翌朝。
ルーシーはピストルを手でつくると、水鉄砲のように人差し指の先から鋭い水を放ち、校長室のドアを吹き飛ばした。そして、校長室に入ると、奥のデスクに座るスタンフィールドがいた。
「お前がなんでそこにいる!」
「水の女か」
「答えろ! お前がお仕置き部屋へ連れ込んだ子達はどこへやった」
「その質問をするということは、その答えも知っているんだろ」
「それじゃやっぱり……」
「確認の為に質問をしているのなら答えよう。あの部屋で何が行われているのか。まず、あの部屋に連れて来られるのは基本的に問題児と判断された子だ。悪い子は沢山いるが、特に悪い子はあのお仕置き部屋で人として知っての通り存在が奪われる。あれはそういう部屋だ。その部屋に連れて来られる子というのはそもそも罪であり、罪である以上罰せられなければならないものだ。そして、罰せられた子は人から別の生き物へと姿を変える。時には虫、時には蛙、時には鳥に。だが、それは罰であるが同時に救いでもある。社会における不適合者はいずれ孤立する。ならば孤立しない世界を与えれば良い。獣のように血に飢えているなら猛獣に姿を変え食物連鎖の激しい環境下に置いてやれば、そこでは何ら罰せられることはない。人間社会では凶暴な人間はいなくなり、そいつらは肉食動物に変えられ、その本能のままに生きることが許された環境で適合する。なにも適合しない環境に苦しみながら生きる必要はない。環境に馴染めるように今の姿から変身することが、例えるなら男が女になるだって、その逆だって、人間でなくたって、適合を求めたゴールが自身を変えることなら、生まれままの姿で一生を過ごさなければならない理由なんてあるまい。話しを戻すが、人の姿のままでは罪でも、適合すればそれは罪とは必ずはならない。人でなければ許されることもこの世にはあろう。それが罪からの救済だ。一生を背負う罪もその救済によって打ち消される。人殺しが一生人殺しと呼ばれながら生き続けるように、一つの罪でもついたらその一生が落ちるように、人でなくなればそれもついてはこない。それは犯罪だけではない。人間社会に適合しない者達が自殺といった死以外の選択肢があるならば、あって然るべきだろう。それによって、人が人であることに感じる不条理から脱出するすべとして人を捨てるという選択、それによって幸せを獲得出来る者もいよう。いずれ、世界がそのように変わった時、生き物に溢れ人間だけの世界では無くなる。君達のように自由を目指す私達ではないのだ」
「私達?」
「それも知っているのだろ。組織のことも。しかし、よく二つのルーンを手にし、あのヴェロニカを相手に出来たものだ。確かに学校にいては腐っていた才能だ。そのせいでこちらの手駒であるエリミネーターを失ったわけだが」
「私の世界をどうするつもり?」
「今言ったことは第1段階に過ぎない。最終的には神を蘇らせることだ。第1段階は神が存在しないだけに、神に頼れない状況から無理やり生み出した出口に過ぎないからだ」
「そんなの私は求めていないし正しいことだとは思わない。それに、そうじゃなくてもお前のせいで沢山の人が犠牲になった」
「まぁ、最初から分かっていたことだ。話しは平行線に終わるとな」
突然、大きな地震が襲ってきた。
「な、何っ!?」
スタンフィールドは平然としていた。
「エリミネーターか」
「当然だ。そして、私は」
刹那、ルーシーに向かって鋭く何かが飛び掛かってきた。それは小さく、ルーシーの頬をかすめた。頬が赤く染まり、そこから血が流れ出た。
スタンフィールドの周りに虫達が集まっていた。
「私は虫使いのスタンフィールド」
「それってまさか!」
「そうだ。この学校の生徒だった虫だ」
「お前!!」
「これも分かっていた。水の女が怒ることも、この虫達を傷つけられないことも」
スタンフィールドは徐々に自身の姿さえも変え、体は黒く、角を生やし、鼻は徐々に丸くなっていく。それはまるで悪魔を象徴する黒いヤギのような怪物へと変わっていった。
「お前も変身するのか!?」
「変身は私が生み出した技。当然出来る。いや、今はこれが私と言うべきか」
「人じゃない怪物ならむしろ容赦なくぶちのめせる」
「これは知らないようだな。お前では私には勝てないということを」




