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ラン・ルーシー  作者: アズ
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学校【1】

 学校なんて自分がいようがいまいが変わらないもんだと思っていた。実際、誰かが休もうが授業は進むし、テストがあれば行われ、本人不在のまま成績もつけられる。学校という場所は、そこにいなかっただけでその分透明人間になる。社会もきっと同じだ。そして、本当に周りからの記憶にも消えていき存在事態を忘れられる。だから、長期間の不在を経験しただけで、自分がいなくても回っている様子を見るのが人によっては辛く感じたりする。その時ふと自分は誰かに必要とされていないと気づき、自分がその空間においてさほど重要でもないと勘づくと、果たして自分は何の為に今まで通ってきたんだろうとさえ感じるようになる。自分はそもそも戻る気なんてなかった。仕方なく戻ったが、多分居場所なんてないんだろう。それは当然だ。とさえ悲観的でいた。だから、学生の中で自分達はかなり話題の存在になっていると知りかなり驚かされた。それは良い噂ではないが不良と一緒に自由に学校から羽ばたいた私達に羨ましく思われていた。それが衝撃だった。というのも、私達が学校を抜け出してから校長が変わり、学校の雰囲気も校則も変わってしまったのだと言う。しかも、それは私達のせいでより厳しい刑務所のような監視された異常な空間へと学校は変貌してしまったのだ。よく、組織のトップが入れ替るとそれまで上手くいっていたことが途端に悪くなることがあると言うが、この学校の場合はどんどんと悪化していっていた。その突然起こった不条理に学生はストレスを抱え、そんな中で自由にやっている私達に憧れをどうも抱いているようだった。





「はぁ……」

 何度目のため息だろうか、寮母がもう夜は遅く起き上がった学生を部屋に戻してから再び私達と同じテーブルにつくと、さっきのようにため息ばかりを繰り返していた。

 とりあえずルーシー達は謝った。

「ごめんなさい」

「それで、これからどうするつもりなのですか? 学生に戻りに来たということではないのでしょ?」

 図星をつかれたルーシー達は言葉に詰まった。この人の前にいたら嘘も秘密も暴かれてしまうようだ。

 ルーシー達は一度顔を見合わせてから全てを寮母に話すことにした。

 寮母はお茶を時々飲みながら私達のこれまでの旅、そしてそこで会った謎の組織について説明した。寮母は表情を変えず、信じているのか疑っているのか不安に少しなったが、寮母は口を挟むことなく黙って聞くことに徹していた。そして、全て喋り終えると暫く沈黙が続いた。私達は寮母が喋り出すのをとにかく待った。恐らく、その時間が寮母にとって整理に必要な時間だったのだろう。

「話しはだいたい分かりました。いえ、全部ではないですよ。ただ、あなた達が学校からいなくなってから学校もだいぶ変わってしまって、今の校長はあなた達が探しているというスタンフィールドなのです」

「え!? スタンフィールドが校長?」

 それから寮母は学校が現在どのようになったのかをルーシー達に説明しだした。その説明の一つ一つの言葉の奥からは何か込み上がるストレスや怒りや、私達に怒っているわけではないのだが、この変わってしまった学校というものに寮母の目で見てきた不信感を愚痴のようにぶつけて鬱憤を晴らしているような感じで、それはかなり長話しであった。

 寮母が自分の長話しにようやく気づいた頃にはすっかり日付が変わった時間で、寮母の持っていたカップの熱も冷めていた。

「あら、どこまで話したかしら」

「スタンフィールドが校長になってから校則がより厳しくなって、先生も変わってしまい、体罰も起きるようになった……」

「えぇ、そうです。はっきり言えばあなた達はもうこのまま学校には戻らない方が幸せだったと思う程に」

「でも、スタンフィールドは何故校長に」

「それは」

 その時、ギシッと床が鳴った。皆が一斉に振り向くとそこにパジャマ姿の一人の少女が立っていた。

「悪い子は皆白い扉のお仕置き部屋に送られるの。お仕置き部屋に送られた子はそこから一生戻ってこなかった。きっと、校長は悪いことをしているんだ。子どもを誘拐してどこかに売り飛ばしてるんだよ」

「エマ、自分の部屋に戻りなさい」

「嫌! ミシェルも戻ってはこなかった!」

「ミシェルは転校したと」

「違う! 大人は皆嘘つき。私達子どもだからって秘密にしてる。でも、ミシェルは転校なんかしてない。だって私知ってるもの。ミシェルの両親が警察に捜索願いを出してるのを」

「っ!」

「ミシェルはあの部屋に連れていかれたまま消えたんだ。多分大人達のせい」

「どういうことですか?」とサンサは寮母に訊いたが、寮母は答えに困っていた。

 ルーシーはそのエマに尋ねる。

「その部屋がどこか知ってる?」

「うん」

「案内して」

 すると突然寮母は立ち上がって「駄目よ!」と大声をあげた。

「その部屋で何が行われているんですか?」とサンサは訊いた。

「……」

「知っているんですね?」

「……その部屋には何もないわ」

「?」

「最初、寮生がその部屋の噂話しをたまたま耳にしてその部屋を探し見つけたことがあるの。その部屋を確認すると、家具も何も使われていない空室だった。そこには窓が一つだけあって外は直ぐに塀があるわ。まさか、そこから人が抜け出しているとは思えない。あの高い塀を越えるなんて」

「無理……」

「えぇ。それに塀の向こう側は直ぐマンションよ。だから、誘拐はあり得ないわ」

「だとしたら人が消えるのは他の可能性ということですよね」

「……えぇ、そう。その部屋には何もなかった。いたのは見たことがない珍しい虫だった」





 それは光っていて蛍のようだけど、部屋に蛍がいる筈がなかった。その虫は蝶にも見えて妖精が飛んでるのかもと思ったけれど、よく見たら醜い模様と色をした羽のある虫だったの。

「何の虫かしら」

 その時ふと背後に気配を感じて振り返ったらその部屋の外で校長、スタンフィールドが立って私を見ていた。

「こ、校長先生……」

「ここへは立ち入らないようにして下さい」





「あれは警告だって察したわ」

「まさか」

「分からないわ。私は直ぐにその場から立ち去ったから。あれからはあの部屋へは一度も行ったことがない」

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