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ラン・ルーシー  作者: アズ
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一輪の花

 水色の空に浮かぶ塔が地上に降りた。先程までのエリミネーターによって周辺にあった緑が破壊され、綺麗に咲いていた花畑も無茶苦茶になっていた。ただ、一輪だけが踏ん張っていた。そこに、少女が走る。塔からは信者達がぞろぞろと出てきて、その中に紛れている両親のもとへ駆けた。周りの信者達は立ち止まって水色の空を見上げ、空を飛んで逃げていく教祖を見た。ギラギラとした太陽の光で丁度隠れると信者達の目には太陽の光だけ見えて、さっきまで暗かった瞳にその光が宿っていき、徐々に呪術が解かれていくかのように目を覚ましていった。その近くで立ち止まっていた少年にルーシーは彼の背中を押した。少年は振り返ってルーシーを見たが、意図を察したのか少年は直ぐに少女を追いかけて走り出した。




 少し前……

 ヴェロニカは完全に囲まれ勝ち目はなかった。それはエリミネーターを失っただけでなく、片腕がない状態の上に相手は沢山のルーンを持っていた。

(もし、ここで信者を盾にでもしたら……)

 恐らくそれはむしろ逆効果で更に怒らせるだけだろう。

「負けを認めるわ」

 ヴェロニカはそう言って空に飛ばしていた塔を降ろした。そして、全員が男の【風】のルーンで穴から地上に出ると、ヴェロニカはその隙に自分の【偽】のルーンでそのまま飛び連中から逃げ出した。

 しかし、何故かあの男は逃げるヴェロニカを追うことはしなかった。

 見逃してくれた? いや、もうエリミネーターを失った私なんか相手にもならないということなのか? どちらにせよ、見逃してくれるならヴェロニカにとってチャンスだ。

 それを見ていたシーラのそばにベルが近づいた。

「その銃で撃てたのに、しなかったんだな」

「実はこの銃にもう弾は入っていないの。既にルーシーが使いきってね」

「あれは単なる脅しだったのか!?」

「でも、効いたでしょ? それに弾があっても撃たないよ」

 そこに後ろからルーシーが手を伸ばし二人の肩に手を掛けた。

「何の話ししてるの?」

「別に。それより体調はもういいの?」とベルは訊いた。

「まぁ少しはね」

「そう」

「そろそろ行こうか」

「あの二人には挨拶しなくていいのか? 言葉は通じないけど」

「何で?」

「何でって」

「二人の邪魔じゃん。それに、言葉なんていらないよ」

「え?」

「ほらほら行くよ」

 そう言ってルーシーは行こうとしたが、直ぐにふらつき始めた。二人はルーシーを両側から抱え、一緒に歩いた。




◇◆◇◆◇




 後日、雨が降った。その雨は温水ではなく冷たかった。海も同様に冷たくなりルーシー達の知る海水に戻っていた。蜘蛛神のエリミネーターがいなくなったことへの影響だろう。子ども達は温泉じゃなくなっても裸になってはしゃいでいたが、それに慣れない大人達は体が冷えると言って止めさせていた。だが、今の子が大人になった頃にはこれが日常として受け入れているだろう。

 そして、教祖を失った信者達も時間をかけて日常をこれから取り戻していく筈だ。きっと…… 。

 今回、ルーシー達はスタンフィールドではないヴェロニカという新たな人物と対戦した。二人の目的は同じで神を信じさせる為、教育や宗教といったかたちで人々に浸透させる、それが『組織』で動いているということも今回で知った。その『組織』を追う謎多き男とも会えた。

「それで私達をどこへ連れていくつもり?」

 ルーシーはその男に尋ねた。すると、男は質問に答える前に一冊の本を出しそれを見せた。

「それ!?」

 それは世界を旅したという男が記した本だった。

「これを書いた人物はもうこの世にはいない。だが、本の途中で彼は親しくなった人物がいる。その人物は君と同様に影響を受け旅に出ようとして失敗した男だ。名はロウボサム。その男に会いに行く。ロウボサムは航海に出た海の途中で謎の塔を見つけ、そこで急な嵐に襲われ船は大破、なんとか命だけは助かって戻ってこれたらしいが、今度はその謎な塔の調査に二度目の航海をして、また失敗している。その時は塔を発見することは出来なかったらしい」

「塔……」

「連中の組織と繋がる手掛かりの筈だ。そのロウボサムとは何度か会っているが、ロウボサムが見たという塔は見つからなかった。魔の三角海域でロウボサムは見たと言うが、確かにその海域はよく嵐が発生し、幾つかの船が沈没したからその海域で間違いはない筈なんだが」

「でも、見つからなかったんでしょ?」

「そうだ。だからそれまではこの件は保留にしていた。だが、連中はヴェロニカが管理していた塔を失った以上、組織は何らかの動きを見せる筈だ」

「だとしたらロウボサムのいる世界も危ないってことだよね」

「その可能性が高い。だから、もう一度ロウボサムに会いに行く。その男だけが今は頼りだ。勿論、君達がついていくかは自由だ。強制はしない。君達には君達の旅があるだろう」

「そう言われても、ここまで関わって知っちゃったらもう無視出来ないよ。皆はどう?」

 ルーシーは振り返ると、皆同じ気持ちだった。

「分かった。では、ルーンを使う」

「ルーン? ルーンを使って世界を行き来してたの!?」

「あぁ、そうだ。それじゃ行くぞ」

 そう言った直後、辺りは白い光に覆われた。それは数秒程度で、光がおさまった頃にはそこにいたルーシー達はいなくなっていた。

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