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ラン・ルーシー  作者: アズ
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VS教祖

 煮沸しているかのように地面がボコボコとし始めた直後、突然その地面は何かに吸い込まれるように下へ消えていった。

「な、なんなの!?」

 サンサはルーシーの腕を掴んだまま慌てふためいた。

 そこにあった地面が消えて巨大な穴が出来上がった。

 すると、また近くの地面が盛り上がり、それは移動を始めた。

「地面にエリミネーターがいるのか!?」とベルは言った。

「えぇ!?」とサンサは言い、ジャスミンは「逃げようよ」と言い出した。

 ルーシーは冷静に「どこに?」と訊いた。

「どこへ逃げても同じだよ。高台だろうと舗装された場所だろうと、巨大なエリミネーター相手じゃ意味ないよ」

「なら、どうするの?」とシーラは尋ねた。

「倒すしかない」

「倒すって……ドラゴンを倒した時みたいに? でも、敵は地面にいるんだよ? どうやってやるつもり?」

 ルーシーは釣り竿を構えた。その時、サンサの手も離れた。釣り竿の先をアンテナみたいに近くにある川や井戸の水を呼び寄せる。それを今度はさっき出来た大きな穴へぶち込んだ。

「エリミネーターが土を掘って移動してるなら、あの穴からエリミネーターに通じる筈」

 ドラゴンを倒したあの水蛇なら地下のトンネルも簡単に追跡出来る。

「そして、捕らえた瞬間に一気に凍らす」

 既にルーシーはルーンを自分の力のように扱えるまでになっていた。

 そのルーシーがつくり出した水蛇は既にエリミネーターらしきものを捕らえており、土が彫られるそいつの尻に向かって口を開くと一気に食らいついた。

 ルーシーの持っている釣り竿が反応し重くなるとルーシーは「かかった!」と言って、直ぐに獲物を殺しにかかった。敵を一瞬にして氷結させると、釣り竿が冷たくなり、自分自身も冷たくなった感じがした。白い息が口から吐き出される。さっきまでの釣り竿にかかっていた重さが消えていた。

 逃した? ルーシーはそう思ったが直後物凄い勢いで引っ張られた。なんとか必死に踏ん張るも、どんどん滑っていく。その後ろからサンサが抱えると、皆もそれに続いて引っ張った。

「抜けろー」

 土が盛り上がり、そこから爪が現れだす。徐々に地中から引っ張り上げられると、遂に大物が正体を現した。それは巨大なモグラのような怪物だった。鼻先に複数の突起物と目がなくて茶色の毛で覆われていた。

 あまりのデカさにサンサは悲鳴に近い声で「どうするのよアレ」とルーシーに言った。

「あいつ目がない」

「え?」

 すると、ジャスミンも「本当だ」と答えた。

「多分、見た目がモグラみたいだからあの突起物で判別してるんじゃないかな。モグラがそうだから」

「そうなの?」

「そう。あれは多分アイマー器官だよ。モグラはほとんど目が見えないから」

「へぇー」

 でも、そうなると疑問が一つ生まれる。ジャスミンの言った通りならモグラは暗闇の中で地中を獲物を探し回っているということだ。だとしたら、アイツが直接私達を狙わなかったのも狙えなかったと説明がつく。問題は私達へどうやって誘導したのか。そいつがどこかにいる筈だ。

 その時、どっからか矢が飛んできた。その矢は釣り竿の先から出る水の糸をプツンと切り、モグラ怪物のエリミネーターは再び地中へと潜り始めてしまった。

「やっぱり誰かいる!」

 ルーシーは辺りを見渡した。すると、木陰から弓矢を構えている血化粧をした女がいた。ルーシーは狙いが自分だと分かった。

 放たれた矢は真っ直ぐルーシーへ飛んでくる。ルーシーは自分の前に水を張り一瞬で凍らせると氷の壁を作った。矢はその氷壁に突き刺さり止まった。

「敵だ」

「まさかスタンフィールド!?」とサンサは訊いた。

「いや、見えたのは女だった」

「女!?」

 すると、地面が大きく揺れ出した。

 その時、一緒にいた少年が倒れた。最初は地面の揺れでかと思ったが、そばにいた少女が悲鳴をあげていた。見ると少年の肩に矢が刺さっていたのだ。

 あの女の矢だ。ルーシーは直ぐにその少年に刺さった矢を抜こうとしたが、少年は何かの言葉を発しながら痛がった。

 ベルはルーシーに「私がやるから皆でおさえて」と言ったので代わると、ベルは一気にその矢を抜き取った。だが、少年の顔色はどんどん悪くなっていく一方だった。それを見た少女は少年の背中を擦りながら泣きそうになっていた。

「もしかすると毒が仕込まれてあるんじゃない?」

 ジャスミンがそう言って、ベルは「可能性はありそうだな。でも、どうする?」と言った。

「えーと……多分血抜きをすればいいんだと思う」

 すると、躊躇なく傷口からベルは血抜きを始めた。血を近くに吐き出しながら「どれくらいやればいい?」と訊いたが、そこまではジャスミンも分からなかった。それに、毒が既に回っているとしたら解毒が必要だ。ここに毒に詳しい医者はいない。医者を呼んでる時間もない。その間にも少年は顔面蒼白になりかけていた。呼気は荒く、唇が変色しだしている。

 少女はルーシーを見るなり何かを叫んだ。言葉は分からないけど、なんとかして! と叫んでいるようだった。

 でも、何をどうしたらいいのか分からなかった。水のルーンでどうにか出来るならしてやりたいが、その傷口からどうこうという細かいことまでは今のルーシーではどうにもしてやれなかった。ただ、悔しく、胸が苦しい。

「ルーシー! 毒矢を放った敵ならもしかすると解毒剤を持ってるかもしれない」サンサがそう言ってハッと気づく。

「分かった!」

 今度はモグラのエリミネーターではなく人間を釣り上げる。

 ルーシーは釣り竿を振るい、尖端から水の糸が放たれる。それはルーシーの意思が宿ってるみたいにくねくねと起動を変えながら木と木の間を通っていく。すると、木陰から隠れていた女が現れ逃げだした。

「逃がすか」

「ルーシー、時間がない!」

 サンサはそう言うが、そんなことは分かっていた。少年の命もそうだが、自分達の居場所も危うくなってきた。亀裂が走り、あのモグラ怪物は広範囲で巨大な空洞をつくり、そこに私達を落とすつもりだろう。

 でも、狙いはあの女だ。あいつだけは絶対に逃さない。

 女は弓矢から刃物に切り替え、追ってくる水の糸を手前で振り下ろした。だが、既に追っていたのは複数の水の糸だ。背後から糸を絡めるように捕らえると直ぐに水の檻をつくる。球の水の中に人間が閉じ込められ、そこで刃物を振り回しながら必死に藻掻いていたが、そんなことをしても一度捕らえられた水の檻からは抜け出せない。むしろ、体力だけが消耗し体内の酸素が減っていくだけだ。そのまま意識を失わせてから解毒剤を探す手でいこうかと考えてた矢先、突然水が全て弾かれた。

 女が左手を突き出しており、その掌には渦巻きの模様が入っている。

 入れ墨?

 とにかく女がまた逃げる。その前にもう一度と、釣り竿をまた構えたが、むしろ逆で女はこちらに向かって走り出していた。

 ルーシーはもう一度水を集めようとした。だが、何故か腕に力が入らなかった。むしろ、握力が弱くなり釣り竿を落としてしまった。

「え?」

 自分でも何が起こっているのか分からなかった。突然目眩が襲い、まるで貧血にかかったかのような体の異変が襲ってきた。

「まずい」

 血化粧した女は真っ直ぐ刃物を構え走っている。

 一瞬だけでも!

 渾身の力でもう一つのルーン、ドラゴンを倒し得た火を口から吐き出した。それは直進する女に放たれた。だが、女はもう一度その左手の掌の渦巻き模様を前に炎さえも弾かれた。

「ヤバっ」

 女は僅かに笑みをこぼした。その時、女は慢心していた。実際ルーシーは死を予感していたし、戦えるのはルーンを持つ少女一人だけだ。だがそこに少年から抜き取った毒矢をベルは槍のように女の左腕を突き刺したのだった。

「私が放った矢!?」

 女は急いで矢を抜き取り小瓶を取り出した。それを見逃さなかったベルは女から小瓶を奪いかかった。女は刃物を突きだすが、そこにルーシーが手でピストルのかたちをつくり人差し指の先から水鉄砲を放ちその女が持っていた刃物を弾くと、皆は一斉に女に飛び掛かった。

「このっ!?」

 全員で女から小瓶を奪い取ると、急いで少女リアはその小瓶の中を自分の口に入れると、それを少年ドニーの口の中へ移した。

 結果的に二人はキスをすることになり、少年ドニーの顔色が徐々に戻っていくと、今度は赤くなっていった。

「さて、どうするかな」

 ベルは捕らえた女を見た。ルーシーは力を使い果たしたようで地面に倒れ込んでいる。意識はあるが暫くは動けそうにない感じでヨダレを垂らしていた。

 その時、また地面が大きく揺れた。刹那、女は皆を振り払い落とした刃物を拾うとそれで自分の左腕を切り落とした。

「くっ……まさか、こんなガキ相手に腕を失うなんてね」

「自分の毒で失ったんでしょ」

「あなた……随分生意気ね。まぁ、いいわ。せっかく新しく発明したばかりの【偽】のルーンを失うのは残念だけど」

「あれがルーン?」

「知る必要はないわ。どうせ死ぬんだから」

 そう言った女の足場から亀裂が無数に走り出した。

「まずい! 皆逃げろ」

 地面は巨大モグラによって地面が崩落を始め、ベルはルーシーを抱きながら皆も走り出した。ベルは振り返りながら「あの女、自分ごと犠牲にしやがった」と、落ちていく女を見ながらベルはそう言った。

 だが、自分達をここまで追い込んだのは事実だ。逃げ切る前にベル達の足場は消え、皆モグラ怪物が作った奈落の底へと落ちていった。悲鳴をあげながら。

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