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ラン・ルーシー  作者: アズ
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五人の天使【4】

 ドニーは血相を変えてリアを追いかけた。リアが突然あの空から降りてきた五人と会うと言い出したのだ。五人のうち一人は絵が上手く子ども達にも人気で、五人のうち二人は泳ぎが上手く、五人のうち一人は石投げが上手い。でも、相変わらずよく分からない言葉を使うから大人達ではスパイじゃないかって最初は噂し、子ども達にはきつく近づけさせないようにしていた。それでも子ども達はあの五人と遊ぶのが一番幸せそうだった。それだけ聞くとなんだか悪そうな人達ではなさそうだが、大人達は子ども達を拐う罠かもしれないとか、いろんな想像を勝手に膨らませることで既に頭がいっぱいな状態であった。でも、それだけ子ども達のこととかが心配であるというのは悪いことではない。実際、言葉が分からなければ五人の考えることや価値観、思想も理解出来ない。それでもドニーは遠くから見た五人を見るにやはり悪そうには見えなかった。それを自分の両親に言うと、あんたも騙されてるんだよ、と言うのだ。何が本当なのか分からなくなったが、少なくとも噂だけで人を判断すべきではないと思っていたドニーは決断を保留にしていた。

 そんな五人が数日内に村を出ていくのだと大人達の会話を盗み聞きした子どもの一人が皆に知らせ、それを聞いたリアが突然あの五人と話しがしたいと言い出した。言い出すと決めたらやるのがリアで、説得なんて無理だった。だからといって一人で行かせるわけにもいかないし、大人にチクるのも裏切るようで出来なかった。多分きっと後で大人達から自分もきつく叱られるんだろうと既に観念していた。

 リアはドアを叩いた。

 そもそも自分達は五人の言葉なんて分からない。分からないのにどうやって話すというのだ。リアに自覚があるかどうか知らないが、彼女に絵なんて才能はない。前に地図を学校の授業で描いた時に、全く理解出来ない地図に仕上がった。地図も描けないのに絵なんて上手い筈がない。

 扉が開いた。現れたのは一人の少女だった。その後ろからぞろぞろと様子を見に来た四人が現れた。

 さて、どうする気だ?

 リアは五人の顔をじっと見回してから「ふーん」と言った。

「あんた達どう見ても人間ね。大人達は空から降りてきたから天使かもしれないとか、宇宙人だとか色々噂してたけど、やっぱり人間じゃない。どうして空から現れたりしたのさ」

 リアは当たり前のように喋ったが、当然相手には通じず代わりに一枚の紙とペンを渡された。だがリアはそれを突き返した。

「紙なんていらないでしょ。普通に喋りなさいよ」

 スケッチブックを持っていた少女が困り果てた。そして、知らない言葉で五人が喋り出し何やら相談を始めた。なのにリアは構わず喋りだした。

「何言ってるか分からない。喋るなら分かるように喋ってよ」

 無茶苦茶だとドニーは思った。仕方なくドニーは渡そうとした紙と鉛筆を受け取り、壁を使って絵を描き始めた。絵は空を示す雲と太陽を描いて、そこに五人の人間と下を向いた矢印、その横にハテナを描いた。描いて直ぐに記号が通じるか不安になったがとりあえず渡して見せた。

 すると、今度はスケッチブックを持っていた少女が絵を描き始めた。描き終わるのを待っていると、描き終えたスケッチブックを一枚破り抜き取ると、それを渡してきた。それを受け取り確認する。それはとてもあり得ない内容だった。それから書き溜めてあった漫画を持ってきてそれを渡してきた。ノートに描かれてあった漫画の登場人物は目の前にいる五人で、自分達の知らない世界、そこから現れたことなど、彼女達の旅の流れが描かれてあった。

 確かに、リアの言うとおり彼女達は天使なんかではない。でも、旅というにはあまりにも危険な冒険譚であった。旅というのは本来美味しいものを食べ観光し楽しむものだろう。

 すると、リアが「私にも見せて」と言って奪い取って読み始めた。そして、読んで直ぐに「なにこれ」と言った。

「これ、全部嘘よ。だってそうでしょ? 空の上に別の世界があるなんておかしいもの。普通なら重力で落ちてくる筈よ。それに、あなた達これを読む限り家出少女なの? まるで不良漫画ね。これじゃ大人達が子ども達を心配するに決まってるわ。こんなの読んだら悪影響だもん」

 リアは文句を垂れながら頁だけはめくる手を止めなかった。

 家出は君もじゃないのかとドニーは思ったがそれは言わないようにした。

 すると、リアの頁をめくる手が急に止まり、気になったドニーは横からその頁を覗いた。そこに描かれていたのは空を飛ぶ塔と赤いドラゴンが近くを飛んでいる絵だった。

「これ、私見たことがある……」

 リアの驚いた顔に、言葉が通じずとも五人は何か通じた感じの反応を見せた。

 だが、ドニーはそんな塔を見たことがなかった。彼女はどこでそれを見たというのか。それはその場にいる五人も知りたい疑問だった。

 リアは突然漫画が書かれたノートを床に落とした。そして黙ったまま一目散に走ってその場を逃げ出した。

「リア!」

 ドニーは彼女を大声で呼んだ。でも、リアは振り返ろうとも立ち止まろうともしなかった。ドニーはもう一度彼女を呼びながら走って追いかけ始めた。それに続いて五人も走り一緒にリアを追いかけた。

 だが、リアの足は追いかける六人よりも速く、あっという間にリアを見失ってしまった。

 でも、ドニーには分かっていた。彼女が走って逃げる時、だいたい決まった隠れ場所があることを。ドニーはそのまま彼女の隠れ場所へと向かった。

 その時だった。空から嫌な鳴き声がしたのは。

 全員がその空を見上げた時、さっき見た漫画の絵とそっくりな赤いドラゴンが飛んでいた。あれは確か蜘蛛神様に潰されて死んだ筈……もう一体いたというのか? いや、自分が見たのは一体のドラゴンと空から降りてきた五人だけだ。だとしたらあのドラゴンは何なのだ。



 ドラゴンは死んでいなかった。



 ルーシーはそうだと分かった。そしてまた、繰り返される。でも、今度こそはそうさせない。

 ルーシー達と遊んだ村の子ども達の顔を思い出すと尚更、あの憎きドラゴンをあのままには出来ない。なんとかしなくては。今度こそは。

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