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ラン・ルーシー  作者: アズ
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4月の新世界

 なんとなく物憂げな月、多分新社会人や新入学生や新学期や、やたらと新がついてその名の通りに環境が一変し、その不安からそういうイメージがついているからだろう。そんな月日に突然空から人が飛んで現れ出した。それを追いかけるようにドラゴンが現れ、俺は自分の目を疑った。これは現実か? 黒人の少年ドニーは断崖絶壁の場所から空の光景を目撃していた。そこにタイミングよく大地を踏み鳴らす巨大な足が空から落ちてきて、ドラゴンはそのまま踏まれ海に沈んだ。それは巨大な蜘蛛。全体に薄い青色で、空に光る6個の目、背部分の間欠泉のような穴から吹きでる蒸気で雲を生み出し、巨大蜘蛛が時々放出する大量の水はそのまま海へと落ちる。この世界の海の正体はその巨大な蜘蛛によって生み出された広大な温泉であった。大人達はその蜘蛛を崇め、こう呼んだ。エリミネーターと。




 少年はその場から離れ全速力で坂を降りた。今なら足が軽い。何故なら俺は物凄く興奮しているからだ。とんでもないものを目撃しちゃった! キャラコシャツに坊主頭の12歳の少年はいち早くこのことを皆に話したくてたまらなかった。そこに、急いでいるドニーを見つけた一人の少女が大きな声で「ドニー」と呼んだ。振り向けばそこに下駄を履き赤いスカートに前歯が一つの欠けたおかっぱ頭の少女が手を元気いっぱいに振っていた。彼女の名前はリアだ。肌は白く、髪は黒い。数年前に突然現れた謎の少女は皆から家出少女に違いないと噂をした。実際、保護された時には彼女の体には複数の内出血があった。医者は虐待の可能性が高いと言ったが、彼女は一切自分のことは話さなかった。まるで自分の殻に籠もってるみたいだった。でも、無口というわけではなかった。話しはするし、ただ家族やどこから来たかは全く喋らなかった。困ったことになり、結局警官の家に住まわせてもらうことになった。本当なら国の保護施設に届けるべきだったが、施設の悪い噂しかないのを皆知っていた。それで可哀想だからって、そうなったのだ。

「そんなに急いでどうしたの?」

 リアはそう尋ねた。リアは自分より一個上だった。たったそれだけの違いのくせにリアは自分に対し偉そうな態度で昔はよく命令してきた。ドニーはそれに反抗するように彼女に敬語は使わなかったが、リアは全くそこについては注意をしなかった。二人は口喧嘩はするものの仲が悪いというわけではなかった。むしろ気づいたらリアとドニーは他の子と一緒によく遊ぶ仲になっていた。

「俺、凄いもん見ちゃったんだよ!」

「エリミネーターのことじゃないよね?」

 蜘蛛のエリミネーターなら移動中の振動の揺れで誰でも気付ける。

「違う。いや、違わないか」

「どっちよ」

「いやいやいいから聞いてよ。突然空から人間が降ってきたんだよ! その後で今度はバカでかい真っ赤なドラゴンが現れて、その飛んでる人間を襲おうとしたんだ。そしたら丁度蜘蛛神様の進路でそのドラゴンは蜘蛛神様に踏み潰されちまったんだ」

「頭大丈夫?」

「信じないならいいよーだ」

「なら証拠見せてよ」

「人間は空を飛んでたんだ。なんか理屈は分からないけど、降りていった方向に行って探せば見つかるかも」

 それを聞いた瞬間、リアは突然走り出した。ドニーは直ぐにリアが今の話しを自分より先に皆に話そうとしているのに気づいたドニーは「ずるいぞ」と大声をあげた。ドニーもそのあと走り出すが、どんどんリアの背中が小さくなっていき、距離が離されていく一方だった。あの下駄でとんでもない走りをしやがるリアにドニーは一度もかけっこで勝ったことがなかった。

 負けが確定した瞬間だった。

「ずるいよ……俺が先に見つけたのに」




 結局、ドニーはミアに先を越され皆は空から飛んできたという人を探しに男どもだけで向かった。女、子どもはただ見送るだけで、その中には当然ドニーもいた。ドニーはぶつぶつと「俺が先に見つけたのに」と文句を垂れていた。

 ふと、ドニーは何かに気づき辺りを見回し、ここにリアがいないことに気づいた。

 まさか!? いや、リアならやりかねない。きっと彼女なら自分の目で確かめたい筈だ。空を飛ぶ人間を。ドニーは舌打ちをし、大人達に気づかれないようその場を離れミアを追った。

(何を考えてるんだよ……)




◇◆◇◆◇




 その頃ロジャーはルーシーを追って色々あってなんとか船出していた。ルーシーのことだからどうせ家族のことや自分のことなんか忘れてしまっているだろう。彼女は帰ってくる気なんてないんじゃないかと思ってもしまう。自由奔放で彼女を一つの場所に留めさせることがどれだけ困難なことか。

 子は突然大人になったり親から飛び立ったりすると言われたりするが、だからって別世界に行かなくても。

 でも、それをしちゃうのがルーシーでもある。それに憧れ、惚れてしまったロジャーは家族に相談も無く自分もまた勝手に飛び出していた。だから自分もあまり人の言えたことではないと自覚はしていた。それでも自分はルーシー程でない。彼女程綱渡りのような危険はしない。

 そんな時、甲板にいた大人達が海の方を指差しながら騒いでいた。ロジャーは気になって海を覗く。すると、海中からある筈のない光が見え、それは徐々に近づいてきていた。それが既に手遅れだと知ったのは、海の怪物に食われた後だった。

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