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ラン・ルーシー  作者: アズ
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エリミネーター【2】

 この世は諸行無常である。




 夥しい焼死体が転がり、人間は簡単に命を落としていく。元凶は空から蟻を踏み潰すかのように命をどうも思わない怪物。自然は生まれ滅びるもの。全てが消失し、だが、炎は永遠にその恐ろしさと美しさを保ち続けた。

 何の為に情熱や魂を燃やし続けたのか。それが一瞬にして全てが破壊されていく。近くには海があるというのに、陸にいる人々は炎を目の前にただ無力でいた。街にまで広がった炎に消火活動を行っても、空を飛ぶドラゴンは次々と炎を足していく。

 ぶわっと広がる熱を持った攻撃色は更に人を街を自然を破壊した。

 誰かが言った。火を起源とした説。だが、もしそうだとしたら最後の終わりもまた火によってだろう。

 かつてあった街も人もまた変化した。全てを失い、また、再び立ち上がれば、新たなものが誕生し、また歴史をつくる。




 ドラゴンが視線を変え逃げるルーシー達を捉えた。旋回を始め、ドラゴンはルーシー達を追いかけだした。そこに雨風を切って遠くから砲弾を胴体に直撃した。違う火で、光も威力も違う。なのに、心の無い火という点では同じだった。

 ドラゴンは少し揺らいだが直ぐに立て直すと砲弾が飛んできた方向へドラゴンは口を開き閃光を放った。青白い閃光は数秒間放射され、爆発と共に衝撃波が発生し戦車群を一撃で粉砕した。

 どうやったらあれを鎮められるのか。

 ドラゴンは再び先程追っかけていた獲物の方へ振り向いた。しかし、ルーシー達の姿は見当たらず今ので完全に見失った。

 ドラゴンは辺りを見回し、ルーシー達を探しだした。

 そんなドラゴンの上空に今度はキラードローンが複数飛んで現れ、そこからミサイルを落としていった。それらはドラゴンの真上を直撃しドラゴンは悲鳴のような鳴き声をあげた。どんな攻撃も耐えた鎧のような鱗が抉れ、ドラゴンの背からは青色の血が流れ両翼には孔が空き、ドラゴンは体勢を崩し地面へと落下すると、大きな振動と共に土煙が舞った。

 ドラゴンはそれでもまだ生きていた。傷は深いが、反撃出来る余力はあった。ドラゴンは起き上がると自分より上空を飛ぶキラードローンに向かって戦車を一掃したように閃光を放った。それは次々とキラードローンに命中し爆ぜてめらめらと立ち上がる炎の中へと落ちていく。

 ドラゴンは口から煙を吐き出すと、翼を広げ飛び始めようとする。だが、さっきの攻撃で孔も空きボロボロになった翼は空を飛ぶことが出来ず、ドラゴンは地面に着地してしまう。ドラゴンは怒り大きな鳴き声をあげ、めちゃくちゃに炎を吐き始め憤怒の炎で辺りを焼き尽くしていった。

 その頃、ルーシー達は上手くドラゴンから目を逸らす事ができ、そのままシーラの案内でパラグライダーの道具を探しに向かった。




◇◆◇◆◇




「もう終わりだ……」

 街の生き残った人々は船に乗り赤い海へと逃げていた。

 空から降る雨よりもドラゴンの放った炎は中々に消えることはなく、ただただそこにあった自分達が過ごしてきた思い出が壊されていくのをじっと見守ることでしか出来なかった。

 ドラゴンは遠くから見え、今も炎を吐き続けていた。

 それが長時間続きようやくおさまると、今度はドラゴンに異変が起こった。

 翼を畳みうずくまるドラゴンを見て「なんだ?」と船の上で人々はざわめき出した。

 すると、ドラゴンは鎧でもある鱗を開き広げると突然眩い光を放ち始めた。それは神々しくもあり、まさに神の化身そのものの姿。

 刹那、光に照らされた大地も海も全てが地獄の炎のように燃え盛った。

 発光は十数秒続き、ようやくその光がおさまるとドラゴンは傷ついた肉体を完全に再生し取り戻していた。

 あるのは燃える海と黒煙が覆う空。雨は止み、それでも青空が見えることはなかった。

 気温は上昇し、そこにいるだけで焼け死ぬだろう。

 そんな中、ルーシー達は地下にいた。地下倉庫にある特殊部隊が使うパラグライダーの道具を人数分取ると、そのまま地下通路を通って本部があった場所へ直行した。

「ねぇ、シーラも私達と一緒に行くよね?」

 ルーシーの突然の問いに素直にうんとは言えなかった。しかし、彼女の手には自分が使うパラグライダーの道具があった。

 沈黙が続き、突然前方から風が微かに吹いた。

「ここ地下だよね?」とルーシーは皆に確認し、皆がそれに頷いた。

 その理由は直ぐに判明した。タワーがあった場所がすっぽりなくなっており、地下通路のパイプ群は途中でいきなり途切れていた。そこにあるのは巨大な孔だった。下を覗けばそこは雲のある青空だ。

「どうなってるの!?」

「分からないけど、私達が見たタワーはこの辺りの筈だ。私達が見た別世界は多分ここにあったタワーの最深部だと思う」とベルは答えた。

「まさか、ここから飛び降りるの?」ベルは心配性にそう尋ねた。

「それ以外に名案がなかったからここまで来たんでしょ」とサンサは吹っ切れていた。

「誰から先行く?」

「それじゃ私から」とベルはそう言うと先頭に立った。そして、迷いなく飛び降りた。

「次はジャスミンが飛んで」

「え? どうして?」

「あなたを一番最後に残したら絶対飛ばないでしょ。ほらほら」

「ま、待って! 心の準備が」

「早くしてよね」

 ジャスミンはお祈りを唱え、大丈夫、大丈夫と呟くとようやく飛び降りた。

「それじゃ次は私が行くわ」サンサはそう言ってルーシーの顔を見た。ルーシーは「うん」と頷くと、サンサは孔へ飛び降りた。

 残ったのはルーシーとシーラの二人だけになった。シーラはルーシーを見た。

 両親を失い、親友に裏切られ、思い出だった家を無くし、全てがもうどうでもいいみたいな感情がずっと心の奥底に抱え込んでいた。でも、ルーシー達がいたことで、とにかく使命があり目的達成という目指すべきことに専念してたことで、なんとかここまで辿り着けたんだと気づいた。でも、本当はこの孔のように自分の胸にもぽっかりと同じ孔が空いていた。

 このまま死んでいった皆と一緒にここで死んでしまいたい。もう楽になりたい。全てが自分も含め嫌になって嫌いになってもう全て燃やしてくれるなら、いっそそのまま自分ごと焼かれてしまいたい。きっと苦しい。死ぬのは楽じゃない。でも、失ったものを思い出すくらいなら



 突然、ルーシーはシーラを抱きついた。

「抱え込むなよ。皆一人じゃ生きられない。弱音くらい私には吐いてよ。私が受け止めるから」

「うん……」

 二人は抱き合ったまま孔へ落下した。

 先程の赤々とした地上と一変し空は青かった。

 ふと、落書きされた教科書に腹が立って自分で絵の具を使って塗り潰したあの頃を思い出す。あの後で何故か後悔した。使った絵の具の色はどれも暗く攻撃的な色ばかりでめちゃくちゃだった。その中にはこんな空のような綺麗な色はなかった。

 シーラは涙を流しながら二人は暫く抱き合った。




 人間って空飛べるんだ。

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