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ラン・ルーシー  作者: アズ
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エリミネーター【1】

 神は自殺した。

 その遺体は土と緑と風と水を生み出し、徐々にそれは世界のかたちとなった。神が死んだ数だけ世界が生まれ、その世界に別の生命が誕生した。

 一つの世界に神一つ。

 それが重なって出来た歪な世界、カオス。

 どの世界も偽物も本物もなく、かつてはあったイデアはもう見当たらない。

 そんな世界は間違っている。

 ならば、そんな世界はぶち壊してやり直すしかない。

 神の生まれ変わり、エリミネーターと共に。




 漆黒のタワー最上部の窓から眺めるのは、細長い首に鉤鼻で青白い顔をした年寄りだった。




 暗雲から赤きドラゴンが現れると、タワーを横切りそのまま地上へと降りてきた。

 下にいた者達はドラゴンの姿を見て逃げ始めた。ある者は立ち止まり銃口を向け引き金を引き続けた。

 だが、鋼鉄のように硬いドラゴンの皮膚を破るには威力が全く足りていなかった。

 虚しく続く銃声と雄叫びを目の前にドラゴンは口を開くなり容赦ない火炎を地上にいる物や人を一度に巻き込んだ。高熱で服だけでなく皮膚を焼き、人間はかたちを一瞬にして失った。

 焼け焦げた嫌な臭いが辺りに充満するも、炎の威力の方が増していて気になる余裕はない。

 基地だった場所は大爆発を起こし、そこにあった兵器も無力に破壊されていく。

 そこにジャックは叫びながらドラゴンを追いかけ、一度立ち止まり姿勢を整えると、ドラゴン目掛けてロケット弾を放った。ドラゴンの右足にそれが当たり爆発が起きたが、黒煙から徐々に現れるのは無傷の右足だった。

「効かねぇのかよ」

 ドラゴンはジャックの目の前で旋回を始め、ジャックに襲いかかった。

「こんなのありかよ……」

 それがジャックの最後の言葉になった。

 大地はドラゴンによる炎で覆われ、そこにあった物も自然も関係なく破壊し尽くしていった。

 それをタワーの上から年寄りは眺めていた。

 当局からカラスと呼ばれ人々を誘導しようとしていた連中は炎に焼かれ、消えていく。

「世界は神による創造。神が導くもの。お前達などでは決してない」

 この世界は失敗に終わる。全てがドラゴンによって破壊されるだろう。

 だが、悲しむことはない。これは虚構。求めるはこの世界ではない。本物の世界だ。

 タワーは緑色に発光しだすと、突然空から姿を消した。




 遠くで、街の人々が騒いでいた。基地がある場所から火災が発生し、大爆発を起こしていた。それは遠くからでもその立ち上る黒煙を見ることが出来た。

 その空に巨大な赤きドラゴンが飛んでいた。

 それは恐怖でしかなかった。地上にいる人々を襲い、それがこちらにいつやって来てもおかしくはない。

 街の人達は大混乱となり、我先にと逃げ始めた。だが、空からいつでも襲える怪物から彼らは果たしてどうやって逃げるつもりだというのか。




◇◆◇◆◇




 その頃、ルーシー達は地下から一階に逃げ、その途中の窓からドラゴンが基地を襲っている様子をたまたま見てしまったルーシー達は一度立ち止まってその様子を見ていた。

「あのドラゴンがなんでここにいるの!?」とジャスミンは驚いた。

「どうしよう!? あそこにサム達が、ジャック達がいるのよ」とシーラは声をあげた。

 ルーシーはシーラの手を取り握ると「大丈夫だよ。そう信じてあげよう」と言った。

 少し落ち着いたシーラは頷いた。

「取り込み中悪いが、あのドラゴン、こっちに向かっていないか?」とベルが皆に言った。

 ルーシーはドラゴンを睨むように「無差別に攻撃してるんだ」と答えた。

「それでこれからどうする?」とベルが訊くと、ルーシーは少し考えてからサンサ達が見たというタワーの真下を思いつく。

「タワーの真下が別世界に繋がっているなら、私達の目的は決まってる」

「ルーシー本気?」とサンサは確認した。

「うん、本気だよ。あのドラゴンから逃げるにはそれしかない」

「確かに、あれと戦うのは無理だしそれでいいんじゃないのか? 問題はどうやってか。いくらあの高さじゃ落ちたら助からない」

「それなら考えがある」とシーラが言った。

「何か策があるの?」

「パラグライダーなら降りられるかも」

「それなら行ける?」

「多分いけると思うよ」

「それじゃ決まりだね」

「え、それって本当に落ちるの?」とジャスミンだけ臆病にそう言った。だが、迷っている時間は残されてはいなかった。

 ルーシー達はとにかく基地を脱出することにした。基地にいた兵士達は既に任務を忘れ逃げることに必死になっていた為、誰も逃げるルーシー達を追いかけようとする者はいなかった。

 基地の外にようやく出たルーシー達。

「ルーシーこっち」とシーラが案内するが、ルーシーは立ち止まった。

「ルーシー?」

 ルーシーは違う方を向いた。基地の屋上に誰かがいた。そいつは黒いレインコートを着て顔には文字のような入れ墨が入った男だった。男は空を見ていた。

「スタンフィールドよ、そうまでして貴様は自分の理想の為にこうも残酷になれるのか」

「スタンフィールド?」

「あの委員の年寄りの名前がそうだったよ」とサンサは答えた。

「それよりあなたは何者? 瞳が黄色い……この世界の人じゃないわよね?」

「スタンフィールドに気をつけろ。奴はあちこちの世界に現れては世界の海を赤くしようとする。支配する為だ。自分の目的、研究を果たす為に奴は人々に偽りを教える。それに感化された者は奴の言いなりになってしまう。だが、それは過ちだ。決して奴の言葉に耳を方向けてはならない。奴はどこにでも現れる」

「あなたは何者?」

 しかし、レインコートの男はスッと消えてしまった。

「幽霊!?」とジャスミンは悲鳴をあげたが、あれはどう見ても霊なんかではなかった。

 男が何者かは知らないが、どうやらそのスタンフィールドを知っている様子だった。

「いったい私達の知らない裏側で何が起こっているのよ」

「そんなことは後だ、今は急ごう」とベルは言った。

 ルーシーは一つ気がかりだった。何故、スタンフィールドが私達の学校に現れたのか。

 あの男はいったい何者なのか…… 。

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