救出作戦【6】
【前回までのあらすじ】
ルーシー達はドラゴンに襲われ当局の支配力の強い国に落ちる。ルーシーはそこでシーラに救われるが、親友とはバラバラになる。ルーシーは後に親友が当局に捕まって地下にある収容施設にいると分かり、救出を試みる。
しかし、当局は政治、軍、司法、あらゆる点で支配力を既に強めており、ルーシーはそれを目の当たりにする。
当局に反抗する者は殺され、または非国民扱いのレッテルとして顔に入れ墨を入れられ身分も下級市民扱いを受け差別される一方で、当局に従って利益を得るずる賢い上級市民の権力者と差が歴然としていた。
まさに、天国と地獄…… 。
目に見える利益で人を惑わし支配する当局の汚いやり口と、支配力を強める当局に対し遂に革命家達が動き出す!
その衝突が始まり、サムはそこで犠牲となる。
一方、救出に向かったルーシー達は……
カーテンを閉めたかのような天気からぽつぽつと降り出した雨は次第に強まった。当局本部タワー前では革命家達の進行を許し、タワー正面入口から機関銃による一掃が始まるも、ロケット弾を撃ち込まれタワー一階部分は爆発と炎で燃え上がり、攻撃はそれでぱったりと止んだ。
サムが任務を果たしてくれたおかげで、当局は本部内で死者を出しセキュリティも電力も失い、混乱状態だ。ここから一気に攻め込めば、こちらの勝利も目前だった。
その時、ジャック達の目の前で異変が起きた。
「なに!?」
◇◆◇◆◇
その頃、別の場所では…… 。
けたたましい警報が基地全体に鳴り響いた。その施設内でルーシーとシーラはフォークリフトを走らせながら、目の前にいる当局の職員どもを蹴散らしていた。
「うわああどけどけー」
ルーシーは大声をあげながら荒っぽい操縦で地下へ続く階段を探していた。何故こうなったのか、それは少し前に遡る。
なんとか搬入口から侵入出来た二人は巨大な倉庫みたいな部屋にいた。だが、そこに巡回している兵士達がいて二人はあっという間に見つかってしまった。そもそも倉庫内にもカメラ、カメラ、カメラで、忍び込めようがなかった。
ということがあって、ルーシーはその倉庫にあったフォークリフトを見つけ、銃を抜き作業員を脅し奪うと、それに乗って銃をぶっ放しながら突っ込んでいった。生まれて初めて撃つ銃に持っていた腕へ反動が重く伝わってくる。撃つ度、銃口が上下したが別に当たらなくても良かった。元から狙っていないし、目的は友達の救出だ。
地下に続く階段を見つけると、ルーシー達はフォークリフトを降りて階段を駆けた。
その下では突然鳴り響く音に地下にいた職員は一斉に侵入者捕獲へと駆り出され、地下にいた当局の奴らは誰もいなくなった。
元々革命家達の襲撃に基地の人員がそちらにほとんど持っていかれた為に、基地では人手が不足していた。
ジャスミンはその様子を見ようと鉄格子の隙間から覗いていた。
「侵入者だって騒いでたけどいったい何が起きてるのかな」
「さぁ……」とベルは言った。
ジャスミンが振り返るとサンサは横になってあまり興味がないといった感じだった。
そこに誰かが走ってくる二つの足音が聞こえてきた。
「あ!」
「ルーシー!?」
サンサは急に起き上がり「ええっ!?」と言って目を見開いた。
ルーシーともう一人の女の子が一緒に現れた。
「ルーシー!?」
「皆無事で良かった。今脱出させるね」
「侵入者ってルーシーだったの!?」
「鍵の場所分かる?」
サンサは指を差した。看守が出入りする扉を指差しルーシーは出来るだけ急いだ。
だが、看守や当局達が二人を追いかけに地下へ来ることはなかった。
◇◆◇◆◇
所長室。
その部屋にいた所長は窓の外を見ていた。皆もだ。外に出てわざわざ確認しに行った者までいた。
その空に緑色の炎が光って見えた。
目を凝らして見ると、暗い空に当局の本部タワーが何故か空を飛んでいた。
ブゥーと不気味な音が響き、翼も羽もロケットでもないそのタワーは未知の力で浮遊し続けていた。
タワーのあった場所は地面が抉れ、巨大で深い穴をつくった。その周辺にいた革命家達はなんとか巻き込まれる前に逃げ切れたが、空へ逃げた飛行物体に為す術がなく、口を開けて空を見上げていた。
ジャックは空にある漆黒のタワーを見て神話だと思った。
厳密には神話通りでないにしても、最後の審判の時、ラッパは吹かれ、空には黒い天使が現れる。
そう考えれば、あの漆黒のタワーから放たれる機械音はどこか審判を告げるラッパにも似ているようにも聞こえる。
空から降り続ける雨はジャック達の顔を濡らした。
◇◆◇◆◇
「そうだ! ルーシー、私達アレを見ちゃったの」
「アレって?」
ルーシーは鍵を開けながらサンサにそう尋ねた。更にサンサだけでなくベルもジャスミンもそれを見たという。
「私達は当局に捕まった時に一度本部に連行されたの。そこで見たの。驚かないで聞いてね。あの本部の地下の最深部、その下は空になっていたの」
「……はい?」
「つまり私達はね、見ちゃったの。この下にある世界を。ええ、あれはきっと次の世界よ」
「え!?」
「当局の連中はその下にある世界を行き来していたの。ううん、全員じゃないわ。多分、一部にしか知られていない。そして、私達はその本部で更に驚くものを見たの」
「な、なに」
「昔、私達の学校に審議会委員が来たのを覚えてる?」
「あぁ……うん、覚えてる」
そいつは細長い首に鉤鼻で青白い顔をした年寄りだった。なんか只者ならぬ空気が漂っていたから覚えていた。髪はなく、黒い外套に立派な白い髭を生やして、そしてかなり大きかった。
「そいつがいたの」
「え!?」
「なんでかは分からない。でも、似てるとかそんなんじゃなかった。雰囲気が同じだったから」
「でも、この世界にいるのはおかしいよ」
「そうなの。でも、あの男も世界を渡っていたとしたら、あり得ない話しじゃない」
◇◆◇◆◇
ジャックはゆっくり本部があった穴を覗いた。風が下からぶわっと現れた。何故地下から?
ジャックはそれを自分の目で見て驚愕した。
それは穴ではなかった。孔だった。




