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ラン・ルーシー  作者: アズ
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救出作戦【5】

 現在、ルーシーとシーラが救出に地下にある収容施設に侵入している頃、当局本部タワー周辺では銃声が鳴り響いていた。当局は戦闘機を出動させ、歩兵と共に四足歩行の戦闘機を出撃させたが、元々装甲事態は横面はそれなりに厚みがあるものの視界をとる為のコックピットと上側の装甲が薄いという弱点があって、そこを突かれた戦闘機は次々と戦闘不能に合った。そこまでは順調通りであったが、最新型の戦車が現れると状況は一変した。機動性は悪く遅いが従来の砲塔の手動旋回から動力旋回に変わり旋回スピードがこれまでのに比べ格段に上がり、何人かはその砲撃に巻き込まれていった。更に、上の装甲が狙われないよう銃を搭載したドローンが飛び建物の最上階から狙う敵を空から攻撃を始めるようになった。ドローンを撃ち落とそうと発砲が続き撃ち合いになるが、ドローンの素早い動きに対し狙って撃ち落とせるわけもなく、最上階にいた仲間はその場から一時撤退を余儀なくされた。

 一方、兵士に扮していたサムはタワー内部に入り込めていた。漆黒の内側はシックな雰囲気でそこに軍服を着た兵士が巡回しているのがむしろ異様に感じるほどだが、そんなことはどうでもよくてサムがすべき任務はタワーのセキュリティを内部から解除することだ。ジャックから信用を受けた以上、必ずこの任務は果たさなければならない。

 サムは巡回のふりをしながらカメラの位置を一瞥し確認していく。タワーのコントロールは上層階にあって、関係者以外立ち入りが禁じられ、当局でも一部に絞られる。だが、電気系統は別にあって電力を落とせばセキュリティは一時的にも無力化出来る。タワーの外はライトアップされていて、それが消えるのが外への合図になる。

 サムはその電気室のフロアを巡回するふりをしながら向かった。そのフロアはその上と下が中央が吹き抜けになっており、そのせいで通路は上からも下からも見通しが良かった。そこを歩くのは少しばかり緊張する。

 すると向かいから細い襟に細いネクタイの黒いスーツを着た女が現れた。見た目は二十代と若い。ここの職員だろうか。サムは会釈し過ぎ去ろうとした。だが、すれ違って直ぐに女は立ち止まった。

「止まれ」

 サムは言う通に従った。女の声は透き通るように響き、そして命令口調も様になっていた。それだけなら良かったが、サムは振り向かずとも女がサムの背に銃を向けているのが肌で感じた。空気が変わり、二人はお互いの様子を伺いながら慎重になる。

「ここの兵士じゃないな」

「自分はまだ配属が決まったばかりでして」

「嘘をつくな」

 女は威圧的にサムの言葉を遮った。

「カラスが。他に仲間は何人いる?」

 なるほど、直ぐにカラスだと分かってもそのまま撃ち殺さなかったのは情報を得る為か。随分自信家のようだ。

「何のことか分かりません」

「まだ自分が兵士だと言い切るつもりか。お前がカラスなのは分かってるんだ。そして、お前が一人でないことも。お前達が常にバディと呼んで常にツーペアで行動していることも」

「なら、俺が囮だと言うこともか?」

 女はハッとして銃の引き金を引きながら角の壁に身を隠した。サムは女の銃を避けながら自分も壁に隠れた。

 女の腕がいいのか、背中に激痛が走る。中に防弾チョッキを着ているとはいえ、痛みまでは遮断出来ない。

 サムはホルスターから黒い銃を抜き、安全装置を解除した。

 さて、女が嘘に気づくのはそろそろだろう。女の言う通り、軍人のように独断での行動は俺達もしない。そして、ツーペアはリーダのジャックが決めたことだが、必ずしもその通りというわけではない。特に潜入となると尚更だ。

 つまり、サムは最初から一人しかいない。

 サムはどうしようか考えた。時間はもう残されていない。今の銃声で仲間がぞろぞろと現れる筈だ。女はその間の時間をつくればいい。だとすればこうしているのは得策ではない。

 サムは意を決して壁から出て一気に走り出した。

 女はすかさずサムに向かって撃ち続けた。頭に気をつけながらサムは目の前にある柱に隠れ、サムはそこから撃ち返し反撃を始めた。すると、吹き抜けの上と下からも発砲が起きた。落下防止用のガラスが割れ、その破片が下へ落ちた。

 サムはもう一度女に向け発砲してから走り出した。

 女は撃ち続け、またサムの背中を一発命中させる。そこで女の弾が切れ、女は逃げるサムを走って追いかけた。追いかけながら空の弾倉を投げ捨て、新たに弾倉を再装填させる。

 サムは再び隠れた。女はすぐ近くでこちらを狙っている。

 サムは自分の銃の弾倉を捨て、新たに再装填させた。そして、呼吸を整える。汗が流れ、手は震えていた。撃たれた痛みからではない。

「何を今更怖じけついてるんだ俺は」

 サムは目を閉じ、少しの時間祈りと瞑想の時間に使い、再び目を開けると壁から姿を現し女に向かって発砲を続けた。女も反撃する。二人の間に自分達を殺そうとする音を奏で続けた。酷い音楽だ。もっと楽しい音楽が流れば、世界は平和になれただろう。だが、音楽も兵器も同じ人間の発明だ。

 女も男も体に弾を受けた。女も防弾チョッキを着ているようだ。だが、いくら防弾チョッキをしていても体には沢山の内出血が出来ているのが分かる。それでも倒れるわけにはいかないのは意地だ。お互いは銃を投げ捨て、走り出した。女はナックルダスターを両手につけ、素早い拳を突き出してきた。

「なんちゅうもん着けてやがる」

 サムは咄嗟に避けた。

 女は鼻でサムを笑った。

「格闘もやれるってか?」

 女はサムに次々とナックルダスターを着けた拳を突きながら、蹴りも間に入れ、サム相手に攻め続けた。サムは女の呼吸の音を聞き足運びと攻めの癖を見分け、女が次に出した拳を避けながら捕まえ、そのまま足を引っ掛けサムは投げ技を繰り出す。床に思いっきり打ちつけられた女は直ぐに立ち上がれなかった。

「お前に恨みはない」

 サムはそう言って女の足を折ると、自分の任務を急いだ。

 サムはそこで自分が撃たれ出血していたのに気づいた。

 サムは舌打ちしながらも電気室に入り爆弾をセットした。

 そこに遠くからぞろぞろと近づいてくる足音が聞こえてきた。

「クソッ……ジャック、どうやら俺はここまでのようだ」

 サムはポケットから起爆装置を出した。出来るだけ敵は引きつける。

 やれることはやったよな…… 。

 サムは自分の人生を振り返った。

「戦ってばかりの人生だったな」

 サムは煙草を取り出し火をつけ、一服した。

 煙を吐き出し、ろくな人生じゃなかったなと、自分を嘲笑った。

 情けねえ……だが、悔いはない。

 サムは起爆装置のスイッチを押した。




 大爆発が起きると同時にタワーの電力が落ち、照明が消えた。

 外はパラパラと雨が降り出した。それでもタワーの天辺の火は燃え続けていた。

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