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ラン・ルーシー  作者: アズ
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救出作戦【3】

 トラス橋が見え、そこに鉄道が通っている。周辺にはトタン外壁の倉庫や工場があり、この辺りは作業着の人達しかほとんどいない。そんな場所に私達が通るものだから時々は訝しげに此方を睨まれたりする。そんな危ない時もとにかく顔を隠し目線を合わせないように小走りにシーラのあとをついていった。

「ねぇ、シーラ。大丈夫かな私達」

「あの人達は別に当局の人間ってわけじゃないし、そもそも当局のことなんて本当のところはどうでもいいと思っているの。むしろ、厄介ごとに関わらないのが吉。だから、あちらからは何もしてこないわ」

「これから貨物列車に乗り込むんだよね」

「そう。貨物駅はもうじきだよ」

 赤色の貨車が特徴的で、私達はそこに忍び込み乗り込もうとしていた。当然、貨物駅は関係者しか入れず、その周りは高いフェンスで囲まれてあった。私達はそれを登ろうてした刹那、あちこちにあるスピーカからサイレンが鳴り響いた。

「何の騒ぎ?」

「サムが言ってた作戦が始まったんだと思う。その一部、揺動だと思う」

 それは私達にとっては都合の良い状況ではあった。ドローンも当局も当面揺動の方へ向くからだ。

「大丈夫かな?」

「サム達のこと? 彼らなら大丈夫」

 そう言いながらシーラはフェンスを登っていき、向こう側へ渡りルーシーもその後に続いた。

 二人がフェンスを越えると、まだ動いていない列車の鍵がかかっていない貨車へ二人は乗り込み扉を閉めた。

「ねぇ……これって」

「ルーシー、勝手に荷物のもの開けたら」

 しかし、ルーシーは入って直ぐに腹ペコセンサーが稼働し、そこにあった食料を見つけ出した。

「当局に運ばれる食料ね」

 ルーシーは我慢出来ず、勝手に飲み物を開けて飲みながら携帯食料を開けて食べ始めた。味はどれも素っ気ないもので、食べやすさを重視したかのような片手で食べられる固形物ばかりだった。

「普通の食べ物が食べたい」

「ほどほどにしなさいよね」

「それよりさ、サム達は当局と戦って自由を取り戻すわけだけど、その後はサム達が政治をするの?」

「皆で代表を選ぶの。公平にね。当局は巨大になり過ぎたのよ。それをまとめる為にどんどん支配を強めていった。サム達は自由を求める為にその当局から独立しようとしているの。もし、それが出来たら、私はそこに住むつもりよ」

 貨車が揺れ、列車が動きだした。

「それか、私達と一緒に旅でもする? こんな場所から離れて」

「それもいいかもね」

「シーラならいつでも歓迎するよ」

「ありがとう。そう言ってくれて」

「本気だからね」

 ルーシーは念押しした。

 勿論、誘ってくれたことはシーラとしても嬉しい。自分もこんな国なんか出て自分が本当にしてみたいことをやってみたいと思うのは全くないわけではない。それが周りにどう思われようとも。

 お金は貯金出来ても若さは貯金出来ない。

 今を生きるルーシーに憧れを感じないわけがない。でも、自分が果たして何をしたいのか? 親を失いとにかく生きることだけを考えていた自分にこのままではいけないのかもという気がした。では、自分はどうなりたいのだろうか。今、自分はルーシーという天から降ってきたこの子を助け、今は当局に捕まったルーシーの友達を救おうとしている。親が言っていた目の前で困っている人を見かけたら手を差し伸べ助けなさいという言葉に従っているが、単にそれだけでもなかった。どこかに自分がしたいと思って行動している部分もある。

 ただ、自由だけを求めてちゃ駄目なんだ。そこに明確な目的が必要で、そこに自由が必要なんだ。私のしたいことは。




 シーラの父親は学校の教師だった。歴史を教えていて生徒達からは人気があった。そのせいか学校から帰っても学校のように勉強をさせられ、ただ教えてもくれるから学校の勉強事態困ることはなかった。

 そんなある日、父親が当局に捕まった。理由は教科書にないことを父が教えたからだ。教科書に載っていることが世の中の全てではない。教師は教科書と付け加えで色々なことを教えていくものだ。だから父が逮捕されたのは厳密には当局にとって不都合な歴史を生徒に教えたことではないかと直ぐに想像がついた。母親は父親が捕まる同じ時間帯に同じように当局に捕まった。それを知った父親の親友が私を助けに来てくれた。だが、実際のところ当局が私を捕まえてどうこうすることは結局なかった。当局に捕まって勾留されている間、親友達は面会を申請し続けたが当局が面会を許可したことは一度もなかった。

 父親は頑固な性格で真面目だった。だから、父は間違ったことを嫌うし、自分が間違ったことをすれば桃が真っ赤になるまで尻を叩かれたものだ。あれには怒りを感じたが、そのおかげで今の自分がいるのだと失ってから思うようになった。もし、自分が大きくなるまで両親がいたらその頃には親に感謝出来たと思う。それを唐突に奪った当局を強く憎いと思ったし、殺意だって湧いた。それは初めての感情だった。それを押し殺して今まで生きてきた。でも、今も当局がなくなったらと願う。

 父はただ知識に対して純粋に正しいことを教えようとしただけだ。知るという自由に父は教壇に立ちながら父なりに戦っていたのだ。




 両親がいない私に色々な人が自分に手助けをしてもらった。自分がこうしていられるのはそういった周りの支えがあったからだ。だからこそ、父の言葉の偉大さが身にしみる。

 目の前で困っている人を見かけたら手を差し伸べ助けなさい。

 そうやって人は支え合って生きている。私も支えてもらうだけじゃ駄目なんだ。




 だからこそ、この子の友達を当局から助けなきゃいけない。

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