救出作戦【2】
ルーシーはシーラの案内の元、暫く歩き続けた。そして、その二人の目の前に鋭角になっている建物が見え、そこから分岐した交差点が現れた。その右側の道には突然現れ出すコンクリート平板の道なりがあって二人はそちらの道を選び進んでいくと、さっきまでの街並みが一変し作業場や工場が増え、更に進んでいくと蒸留塔が遠くに見えだした。一気に工業地帯になり、その中心部に当局のシンボルである漆黒の塔が現れた。その塔天辺からはフレアスタックのように火を放出し続けており、その塔周辺に何やら飛行物体が飛び回っていた。
「あれは?」
「ドローンよ」
「ドローン?」
「白いプロペラで飛ぶ機械にはカメラがあって、あれで周辺を空から監視しているの」
「機械……」
「あなたの世界にはあれはないの?」
ルーシーは頭を横に振った。
「私の友達はあの高い塔? みたいな場所にいるの?」
「ううん。あれは本部。捕まってる人を収容する場所はまた違う場所にあるわ。地図を広げて見れば分かるけど、基本的に区分があって皆がいる居住区やお店のある海沿いから、交差点を通過していった先からは工場地帯になるの。私達が今いる場所ね。そこはここからじゃ分からないくらい広くて、他にも沢山の煙突が聳え立ってたり、兵器を作る工場とか発電所とかもあったりするわね。それで、あなたの仲間が捕まってる場所は工場地帯から離れた場所にある当局の軍事施設兼研究開発所の地下施設になる」
「どうやって侵入するの?」
「貨物列車が遠ってそのまま施設の敷地に入れるから、まずは貨物列車に忍び込む」
「分かった」
「貨物駅はこの工場地帯にあるからあともう少しよ」
「ねぇ、シーラ。どうしてそこまで私達の為にしてくれるの? シーラもかなり危険だよね」
「……私には家族がいないの。当局に捕まってそのまま帰ってはこなかった。私に残されたのはあの家と畑だけだった。お別れも言えなかった。だから、連中が憎い」
「シーラは復讐したいの?」
「ううん。復讐してもお母さんもお父さんも戻ってはこない。でも、私と同じ辛い思いをあなたにして欲しくない。親友なんでしょ?」
「うん」
「それじゃ行こう。その親友を助けに」
「ありがとう」
◇◆◇◆◇
その数時間前、サンサ達は当局に捕まり地下施設に連行されていた。地上では武装した兵士が巡回し空はドローンが飛び警備は厳重だった。その基地近くでは巨大なクレーンの影が工場の煙で微かに見える。そこでは巨大建造物の建設計画が行われていた。メガストラクチャーと呼ばれる建造物の内部には工場、軍事施設のみならずオフィスや居住エリアも一つの建物内部に入る。当局が夢見る計画の一つだ。
それを基地の窓から眺めることが出来る所長室では一人の男が部下に背を向けたまま部下に尋ねた。
「それで、連中は何か喋ったか」
「はい。連中は全員別世界からやって来たと言っております」
「そうか。まぁ、連中の処分は決まってるようなもの。不法入国と不法滞在にスパイ容疑だ。それだけで全員銃殺刑に出来る。上からの指示が出ればその日に執行する」
その地下施設ではサンサ達は手枷をつけられたまま牢屋に閉じ込められていた。そこはコンクリートが剥き出しで陰湿な雰囲気のある場所だった。
「ルーシー……生きてるよね?」とジャスミンが皆に訊いた。
「次そんなこと言ったら怒るよ」とサンサは言った。
「ごめん……」
「しかし、まさか別世界に来ていきなりドラゴンに教われ今度は捕まるとはな。逃げようにも逃げる方法が思いつかない」
それはベルだけじゃなく全員脱出方法が浮かばなかった。
暫し沈黙が続いた。
「ねぇ、ベル」
その沈黙を最初に破ったのはサンサだった。
「途中で見たアレ、どう思う?」
「アレか……この国、いや……もしかしたらこの世界、相当ヤバいんじゃないのか」




