嘘じゃない
家をシーラと一緒に出ると直ぐ近くに小さな畑があり、そこには緑色の実が育っていた。長く太いそれはスカッシュに似ている。
「私、この色違いを知ってる」
「食べる?」
「うん。実は腹ペコ」
ルーシーはそう言いながら腹を擦った。シーラはクスクスと笑いながら「分かった。それじゃ後で用意する」と返した。
外は鮮やかな青空と白くて小さな雲は私の知っている空でそれは良かった。白い光にも見える太陽。あまり直視はよくないから目をそらし、そろそろサングラスをかけた。辺りは緑があり、地面の土は茶色で、ほとんど私の知っている世界だった。あの海を除いては。
「ねぇ、シーラ。一つ質問していい?」
「なに?」
「あの赤い海のことなんだけど」
「……」
「私の知っている海は青かったんだけど、何で赤い色をしているの?」
「知らない。私はその青い海を見たことがないから。でも、大人達は当局が海を赤くしたんだって言ってる。当局はその逆でむしろ青くしようとしているって言ってる。何が本当かは知らないけど、この世界の海は赤色に侵食してる。だから、この国の架空のスーパーヒーローは全員スーツが青色なの」
「スーパーヒーロー?」
「ほら、あれ」
シーラは遠くを指差すと、遠くの岩山の上に巨大な看板で筋肉もりもりのスーパーヒーローのイラストが描かれてあった。確かに青色のスーツに、胸辺りに白い星が入っている。金髪に顔にはマスクをしてある。
「なんで顔を隠してあるの?」
「当局に抵抗する革命家達は全員素顔を隠してるからじゃない? 私は別に素顔なんて気にしないし。この世の中が少しでも良くなるならどんな顔だっていい」
「その当局はシーラの敵?」
「敵……そうね。私達の敵。皆、あの架空のスーパーヒーローが現れるのを待っている。でも、この世界に金髪で肌が白い人はいない。いたとしたらあなた達のように空から現れるでしょうね。架空のスーパーヒーローも空から登場するし」
「だから当局は私達を捕まえようとしているの?」
「えぇ、救世主が現れたって騒動になるから。きっと当局は捕まえた人達をそのままにはしないと思う」
「急がなきゃ」
すると、シーラはルーシーの両肩に手を置いた。
「分かる。でも、それで急いでも良い結果には繋がらない。それだけ連中を出し抜くのは簡単じゃないの。特に私達だけじゃね。だから、協力してくれる人達のところにまず向かう。それに当局は直ぐに何かするってわけでもない。連中のやろうとする事はだいたい想像がつくから、まず私を信用して欲しい」
「うん、分かった」
「それじゃ行こう」
再び私達は歩きだした。
「ねぇ、私達が空から振った時、がっかりした?」
「どうして?」
「スーパーヒーローじゃなかったから」
「スーパーヒーローはマスクをして素顔をしてるでしょ。私が言ったヒーローなら誰でもいいと言ったのは嘘じゃない。スーパーヒーローが白人で男じゃなきゃ駄目なんて理由はない。スーパーヒーローは世界を、私達を救ってスーパーヒーローになるの」
シーラは立ち止まり、振り返ってルーシーを見た。
「例えルーシーでも世界を救ってくれたらスーパーヒーローよ」




