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百鬼鵺紅  作者: 本堂 咲京
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夢幻のみち

羅生門の下で寝ていたら見知らぬ人が声をかけてきた。

その人の家に行くと壮大な屋敷があった。

その人の正体とは?そしてなぜこの世界に連れてこられたのか

明らかになる...

〈夢幻のみち〉


かなりでかく立派な屋敷だ。

やはりこと人にも旦那様がいるのだろう。

「どうぞ」

と女性が茶を出す。

見た目からしてかなり高級な品だ。

香りからして抹茶だと考えられる。

だが、この時代に抹茶はないはず。

なぜなら抹茶は鎌倉時代、中国から伝わったものだからだ。

ということはここは鎌倉時代の平安京なのか?

平安時代から江戸時代に渡り、

平安京は都として残っていたため、

鎌倉時代以降でもおかしくはない。

だとしても、この時代では抹茶は高級品のはず。

なぜこの女性が抹茶を所持しているのだろうか。

抹茶を一口。

「申し遅れました。うちの名前は(しき)と申します」

先程とはまったく違う言葉遣いだ。

そして式...聞いたことあるなと思ったら

母の名前にも式が入っている。

「それにしてもこの抹茶、すごく美味しいですね。

いったいどこから?」

尋ねてみた。

この時代の言葉遣いがあまりわからない。

もしかしたら失礼なことを聞いているかも。

「こちらお抹茶は屋敷から取り寄せてもらったものです」

「屋敷?」

「うちの家は公家でして、うちも元々は

その屋敷に住む予定だったんですが、

一人でのんびりと暮らしたいと父上に申しまして

それで警備を付けていいならと了承を頂いたのです」

やはりこの人はかなりの地位の人だ。

そして一人で暮らしていると言っていた。

一人で住むのには勿体無いくらいの立派な屋敷。

旦那様が居てもおかしくはないというのに。

「公家となると姓も気になりますよね。

姓は九条(くじょう)といいます。

我が九条家はすぐそこにある東寺の管理をしております。

そして西の西寺は八条(はちじょう)家が

管理をしております」

九条に八条、由来は九条大路と八条大路だろうか。

となるとかなりの官職なのだろう。

「零さんとおっしゃいましたね。

あなたはどこからいらしたのですか?」

聞かれてしまった。

未来、と言ったら確実に信じてもらえないだろう。

だが、言わないとこの世界から抜け出せない。

思い切って言おう。

「未来です。信じてもらえないかもしれませんが、

未来であの門が目の前に現れ、くぐったらここに」

言ってしまった。

どうなってしまうのだろうか。

殺されてしまうのだろうか?

いやさすがにそれはないだろう。

「やはり、羅生門が関係しているのですね」

そういえばさっきからあの門を

羅生門と言っているが羅城門ではないのか?

「我が九条家の先祖様が書物を残しておりまして、

そこには『祭りを行う月、羅城門が羅生門と

成り変わり異国から物怪を連れてくる。

九条家と八条家はその異国の物怪を

異国へと返すべし。』と。

今は祭りを行う月。

あなたはその羅生門により

ここに連れてこられたのだと思います」

今だに理解ができない。

つまり俺は不運なことにその対象となったのだろう。

だが、その対象は完全にランダムなのだろうか。

「言い忘れていたことがありました。

羅生門はこの祭りが嫌だと心の中で

思った人を連れてくると言われています」

...そういえば俺はこの祭りの音が嫌いだった。

でかい太鼓の音、シャンシャンと鳴る弦楽器の音。

その音が嫌いなのだ。

もしかしたら連れてこられた原因はそれかもしれない。

「そして、あなたのいた私たちからすると異国に

戻るためには嫌いだと思った原因を好きという

感情にさせなければなりません」

つまり、俺はこの祭りの音を好きになれば

いいというわけだ。

なら今この心の中で思えばいいのではないか。

俺は祭りの音が大好きだ。

.....なにも起きない。

どういうことだ。

「ですが、ただ単に今この瞬間にその原因を心の中で好きだと思ってもだめです。

ちゃんとそれを体感し、ちゃんと思わなければなりません。

なので祭りが始まるまで待ちましょう」

「待ちましょう。と言われても俺には泊まる場所がありません」

「ならばこの屋敷に泊まっていってください。祭りが始まる時まで」

〈夢幻のみち-終-〉

九条。

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