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百鬼鵺紅  作者: 本堂 咲京
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唐くれなゐの燈を若者はつぐ

太鼓の音。

シャンシャンとなる三味線の音。

この地域では毎年祭りをやっている。

数十年たったとしても俺たち若者は先人の燈を継ぐ。

〈唐くれなゐの燈を若者はつぐ〉

ドン、ドン。

太鼓の音。

シャンシャン。

三味線の音。

この大通りは一年で一番賑わっている。

どうやら今年は寺だけでなく、大通りも使って祭りをやるらしい。

沢山の屋台があり、小さい子供たちは焼きそばや唐揚げ、

ポテトを食べたり、射的や輪投げ、金魚すくいをしている。

唐紅の提灯が大路の脇にぎっしりとつるされている。

唐紅。

紅色よりも更に鮮やかで明るく美しい色。

この祭りではとあるルールがある。

そう、それは屋台の看板に苗字を書くことだ。

俺的には意味不明だが、どうやら近所の人が仲のいいお隣さんの屋台をすぐ見つけられる様にするためだとか。

どうやらうちの親も屋台を出しているらしいので見に行ってみることにした。

『九条堂』とでかでかと書いている。

ここが親の屋台だ。

そう、俺の苗字は九条だ。

式さんの苗字を聞いた時、偶然かなとも思ったが、

後に調べてみるとどうやら式さんは俺の先祖にあたる人なのだそうだ。

九条家はどうやら今も東寺の管理をしているそうで、俺のおじいちゃんが管理をしているのだそう。

そして俺の母は元々『唐橋堂』という名前で和菓子店を出していたのだそうだが、

どうやらここ最近『九条堂』に変えたらしい。

そして今まで知らなかったのだが、その九条堂は今東京の有名な和菓子展覧会で

出店するほどの有名な菓子店になったらしい。

なんか俺の知らないところで色々とすごいことが起きていた。

なので今俺の親の屋台は和菓子マニアや和菓子好きによって埋め尽くされているらしい。

一応俺の好きな団子を買っといた。

美味い。

そして今大通りでは盆踊りをやっている。

そこでは聴き慣れた音がする。

真ん中の矢倉で男の人がはちまきを巻いて太鼓を叩いている。

俺もこうやって太鼓を叩いたりする日が来るのだろうか。

そして俺は家に帰っていた。

羅生門が現れたところに来た。

なにもない。

なんだか寂しい感じがした。

なぜだろうか。

今も音は鳴り止まない。


そして数十年後...

今日は毎年恒例の祭りがある日だ。

大通りは変わらず、脇には提灯がつるされている。

俺はベンチに座り提灯の小さな燈を見ながら団子を食べていた。

「九条さん!そろそろですよ!」

「わかりました!」

串を置き、呼ばれたところへ向かう。

俺は手慣れたように矢倉に登る。

そして鉢を持ち、大きく振り翳す。

ドン!

大きな音が響き渡る。

その音と同時に妻が三味線を弾く。


太鼓の音。

シャシャンとなる三味線の音。

この地域では毎年祭りをやっている。

俺は今矢倉の上で太鼓を叩いている。

そして妻は三味線を弾いている。

月は満月だ。

提灯の燈が町を明るくする。

この景色と音は相変わらず最高だ。

数十年先も俺は燃え尽きるまで太鼓を叩く。

矢倉のてっぺんに一羽の黒い鳥がとまった。

〈百鬼鵺紅-完-〉

からくれなゐのともしびを。

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