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あたたかな夢
「はなび!はやくはやく!」
誰かが私の名前を呼んでいた。
「まってよ〇〇〇ちゃん!おいてかないで!」
小さな私も誰かの名前を呼んでいた。でも聞き取れない。
「しょうがないなぁ、はなびは。いっしょにいこう!」
彼女が私の手を引いてくれた。
「うん!」
小さな私はとても嬉しそうだった。
「はなびはわたしがいないとしんぱい。いもうとみたいね」
「えぇ!わ、わたしは〇〇〇ちゃんとおないどし、だから、いもうとじゃないよ!」
「じゃあ、もうすこしおとなになってくださーい」
彼女はいたずらっ子のような笑顔をしていた。
「おとなになっても〇〇〇ちゃんと、て、つなぐもん」
小さな私はちょっと拗ねたような顔をしていた。
「はなびはほんと、しょうがないなぁ」
彼女の笑顔はなんだかとても暖かな気持ちになれた。記憶にない、記録にも残らない、ただの日常。