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導きの神様  作者: 夕月夜
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第三章二節 風光る雛月の寿ぎ その13


誓いと時を同じくして、ふふふ、と正面から微かな笑い声が聞こえてきたことで、翡翠の意識は目の前のプリンから正面の神様へと移った。


背筋を伸ばし、美しい姿勢のまま椅子に腰掛ける白い神様は、翡翠に優しい視線を向けて小さく笑っていた。



「ぷりんとやらを口に含むたびに、幸せそうな表情をされていますね」



正面に座る東雲にはしっかり目撃されていたようで、少し頬が熱を持った。



「お恥ずかしいところをお見せしました……。でもこのプリンが本当に美味しくて、つい緩む頬を抑えきれなかったんですよね」


「それは何よりです。翡翠さんの満足げな表情を見ることが叶い、私としても嬉しい限りですので、あまり気になさらないでください。__それはそれとして、こちらのきゃろっとけーきとやらもとても美味しかったのですが、良ければ翡翠さんも一口食べてみませんか?」


「良いんですか?」


「はい、もちろん」


「ありがとうございます!実は、少し気になっていたので嬉しいです。良ければ、私のプリンを一口どうぞ」


「ありがとうございます。それでは、私もお言葉に甘えて一口いただきますね」


食べやすいように、お互いが自身の手前に置かれていたお皿を中央へと寄せた。


それからどちらからともなくカトラリーを手にして、自身が食していたものとは別のものへと手を伸ばした。


翡翠は東雲が食べていたキャロットケーキを持ち替えたフォークで一口サイズに切り、食べてみる。



「美味しい……!」



気がつけば、翡翠は声を漏らしていた。

口に入れた瞬間人参の自然な甘さが舌の上に優しく広がり、次いでふわふわともしっとりとも取れる不思議な食感が届いた。


そして柔らかなスポンジの部分は噛めば噛むほどその甘さを感じることができ、一噛みごとに美味しさが増幅していった。


「やはりそのきゃろっとけーきは美味しいですよね。翡翠さんにもそう感じていただけたようで何よりです。

私の方でもぷりんをいただきましたが、滑らかな舌触りと濃厚さがたまりませんね。翡翠さんが幸せそうな表情で食していたのも納得の美味しさでした」



普段より少しうわずった声で注文した甘味の美味しさを主張する東雲を可愛と思いながら、翡翠は答えた。



「そうですよね!本当にどちらも美味しくて感激しました。次に来ることがあれば、今度は二つとも頼みたいと思います」


「それは妙案ですね。では、もしまたこちらを訪問する予定ができましたら、その際にはぜひ私にも声をかけてくださいね」


「はい、もちろんです……!」



まさかまた一緒に来ようと言われるとは思わず翡翠は内心驚きと嬉しさが混ざり合った、こそばゆいような、何とも言えない感情を抱いたが、その嬉しさを噛み締めながら、翡翠は一も二もなく返事をした。


次の来訪の話が話題に上った後も、お互いのお皿とカップが空になるまで歓談を楽しんだ。


まだ話の種は尽きなかったものの、お店が混雑し始めたところで「そろそろ行きましょうか」と立ち上がり、カランコロンという鈴の音を耳にしながら、一人と一柱はお店を後にした。



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