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導きの神様  作者: 夕月夜
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第二章二節 月冴ゆる冬の安らぎ その4


今日足を運んだのは『笹鳴(ささなき)』というお店。


外観同様店内も白で統一されているが、床にはピュアホワイトに彩られた木材が使用されているためか、清潔感と温かみを感じられ、居心地がいい空間だ。


窓やレジカウンターなどの至る所にアイビーなどの観葉植物が配されており、室内にいながらも十全に自然が感じられるため、翡翠は家以外で勉強がしたいときや集中して読書がしたいとき、逆に落ち着いて過ごしたい時などに訪れるようにしている。


メニュー的な面でのこのお店の特徴は、一言で表現するなら“和洋折衷“。


異国文化であるコーヒーに良く合う濃厚なチョコレートが詰まった、チョコレート大福を売りにしているお店で、男女問わず人気がある。


チョコレート大福だけでなく、注文を受けてから豆を挽いて淹れてくれるコーヒーも看板メニューで、仄かな苦味を感じるが、口当たりはさっぱりしていて飲みやすいのが特徴だ。


以前訪れた際に飲んだ看板のコーヒーの味を思い出していたところで、ふと翡翠の頭に疑問が生じた。



「東雲は、コーヒーって飲んだことあるんでしたっけ」



物珍しそうに店内を見回している東雲に向かって、浮かんだ疑問を口にした。



「いいえ、飲んだことはありません。以前翡翠さんと訪れた甘味処の品書きの中に書かれていたことがあったので、存在自体は認識しているのですが、味等についてはさっぱり」

「そうですよね……。えっと、コーヒーは結構苦く感じる人もいるので、牛乳を足して風味がまろやかになったカフェオレの方が良いかもしれません。東雲は甘党ですから、余計に」



そう言って笑うと、東雲もふっと笑みを溢した。



「その方が良さそうですので、翡翠さんがご提案くださった“かふぇおれ“なるものを頼んでみようと思います」

「承知しました!それでは私が注文を受け持つので、申し訳ないのですが東雲は席の確保をしていただいても良いですか?」

「私は構いませんが、翡翠さんに注文をお願いする形で大丈夫ですか?個神的には、女性に先に座っていただく方が良いのではと思ったのですが」

「お気遣いありがとうございます。私は大丈夫です。それに、カタカナ表記のものを注文するのは大変だと思うので、ここは慣れている私が注文に行きます。席、お願いしますね!」

「こちらこそお気遣いありがとうございます。それでは、注文の方をよろしくお願いします」



レジに並んでいた一人と一柱はそこで別れ、各自行動を開始する。


翡翠の前には二人並んでいるが、注文したら注文品を席まで運んでもらえる仕様になっているので、すぐに順番が来るだろう。


そう思って待っていると、案の定すぐに翡翠の順番が訪れた。


レジカウンターの前まで歩みを進め、注文をする。



「こちらのブルーマウンテンと、カフェオレ、あとチョコレート大福を二皿お願いします」

「かしこまりました」


代金を支払い、目印用の番号札を貰った。机の上に立てるタイプのもので、白地にダークブラウンの番号、同色のリーフが描かれている。

これがまたスタイリッシュで可愛らしく、翡翠は気に入っていた。


番号札を手に持ちながら店内を見回してみると、窓側の席に東雲の姿を見出した。


翡翠が自身に視線を注いでいると気が付いた東雲は、流麗な所作で袖に手を添えながら、こちらに向かいゆったりと手を振った。


窓から差し込む光と相まって、本当に幻想的で美しい光景に一瞬我を忘れた翡翠だったが、東雲が不思議そうに首を傾げたことにより、現実世界へと引き戻された。



「お待たせしました。席、確保してくださってありがとうございます。この窓際の席、奥の箱庭が見えるので人気でいつも埋まっているんですけど、良く取れましたね」

「丁度お店から出る方がいたので、たまたま確保できました。そう、運が良かったみたいです。……そんなことよりも、注文していただきありがとうございました。お代は袋に入れて持ってきたので、そのままお渡しさせていただきます。」

「毎度毎度付き合ってくださっていることに加えて東雲に多く出していただいているので、こちらとしては今日は全て持ちたいと思っていたのですが……その様子だと返還しても受け取ってくれそうにはありませんね」

「良くお分かりで。さて、この話はこれでお終いにしましょう。そういえば翡翠さんは何を頼んだのですか?」

「ああ、えっと、飲み物はブルーマウンテンというコーヒーにしました。

あまり詳しいわけではないのですが、ブルーマウンテンは滑らかで酸味や苦味などの調和が取れていて、なおかつ香高いという特徴を持っているらしいという情報を耳にしてからずっと気になっていたので、思い切って頼んでみることにしました。

東雲と同じ、初挑戦です」

「それはそれは。注文の品、来るのが待ち遠しいですね」

「はい!」


箱庭を横目で見ながら会話を楽しんでいると、丁度店員さんがトレーを手にテーブルの横に立った。


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