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導きの神様  作者: 夕月夜
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第二章一節 師走の雪 その14



「_____やはり、来ましたか。先に翡翠さんを帰して置いて正解でした。

お久しぶりですね、碧泉(あおい)。こうして顔を合わせるのはいつぶりでしょうか。と言ったものの、私は顔を合わせたくはありませんでした。

それに、他の神と対話する時は丁寧口調で言葉を交わすにも拘らず、私と話すときだけ丁寧口調ではなくなるところ、昔と全く変わっていませんね」



東雲に『碧泉(いずみ)』と呼ばれたものは、絹のような黒髪と、添えられた瑠璃色の髪飾りを揺らしながら、東雲に歩み寄っていく。


彼が纏っているのも、東雲と同じく、着物であった。

アリスブルーの着物の裾部分には唐紅と白で彩られた椿が描かれており、紺青の帯には、房飾りが揺れている。

その色は、彼の瞳と同じ瑠璃色だ。


草履のアリスブルーと鼻緒の紺青は、纏うものの肌の白さをよく際立たせている。その上に冬の寒さを和らげるための、ポンチョ風の上着を羽織っていた。その色は紺青。手にはめているグローブと同じ色だ。


さらに、首元には淡青のマフラーが巻かれている。

全体的に青系統でまとめられた服装は、彼の持つ儚げな雰囲気を引き立たせている。


長い時の中で数えきれないほど見てきたその姿は、あいも変わらず美しかった。


造形が整った顔には、憎らしいほど楽しげな笑みを浮かべている。碧泉は東雲の目と鼻の先で立ち止まってから、形の良い唇を動かした。



「本当に久しぶりだね。えっと……今は東雲だっけ。

会う度に名前が変わっているから、忘れてしまいそうになるよ。____まあ流石に今回人の子がつけた名前は、忘れようもないけどね。」



そう言って碧泉がみせた笑みには、何か含みがあった。


東雲は何も言わずに、ただ碧泉を見据える。

視線を受けた碧泉は、特に気にする様子もなく話を続けた。



「それよりも、僕の口調が君と喋るときだけ変わるのはいつものことでしょう。それを指摘するということは、東雲があまりよく思っていないってことだよね。それなら、僕の目論見は成功していると言っていい。実に愉快だね。

僕も君と同じく、できることなら会いたく無いのに、本当うんざりするくらいその姿を目にすることになってしまう。

まあ、僕と君に授けられた使命を考えれば、至極当然のことだけれど」


「会いたく無いのであれば、あなたが現在進行形で行っていることを今すぐやめればいいだけの話なのですが」


「それは無理な相談だってことは、君もわかっているよね。僕は己に与えられた使命を果たしているだけだから。

しかも、僕が手を出したのは僕の任された領域内の人の子。君にとやかく言われる筋合いはない。と言うか、むしろ僕の領域に手を出しているのは君の方でしょう」


「それは……!」



言いかけて、口を閉ざした。碧泉の言っていることも間違ってはいないからだ。


東雲は僅かの間俯いて沈黙したが、やがて意を決したように顔をあげ、言葉を続けた。



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