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導きの神様  作者: 夕月夜
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第一章一節 長月の出会い その2


朱色の鳥居の前に立って境内をのぞいてみた瞬間、翡翠(ひすい)は目を疑った。



『……ここに、こんな立派な参道があったんだ。』



長い長い参道の左右には木々が生い茂り、向かって右側には小規模だが川が流れている。


いや、右側だけではない。

よく見ると反対側にも川が流れているようだ。


そして遠くにもう一つの鳥居を目視することができたが、そこにたどり着くまで大分距離がありそうだ。


この神社は外観からして、今翡翠が目にしているような長さや広さがあるようには見えなかった。

そのため、翡翠は大層驚いていた。



『____そもそもこんなところに鳥居なんてあったっけ?』



次々に疑問が思い浮かんできたが、ずっと避けてきたのでその答えとなるような情報を思い出すことができない。


何にせよ、ここまできてしまったからには入ってみよう。


翡翠は、一歩、また一歩と長い参道のその先にあるものを目指して歩みを進めていった。



静寂の中、水の流れる音に翡翠が地面を踏みしめる音が響いていた。


翡翠が通り過ぎる前や横、そして後ろで色づいた葉を落とす木々は、どれも幹が太く、天高く伸びている。


その光景は心を落ち着けてくれるが、同時に何か威圧感のようなものを感じた。


本当に入ってよかったのだろうか。


そんな考えが、翡翠の頭の中をぐるぐると回る。


ずっと守ってきた祖母の言いつけを破ってしまったことに対する、後ろめたさがあるからだろうか。


しかし翡翠の気持ちとは裏腹に、足は歩く速度をどんどん上げていった。まるで、何かに吸い寄せられているかのように。


小さな違和感を覚えつつも、翡翠はそのまま進んで行くことに決めた。



『もしも本当に危険だったら、私の足が止まってくれるはず』



心の中で、自分を勇気づけるようにそう呟いた。


翡翠は祖母のように、何かこの世ならざるものが見れるわけではなかったが、小さい頃から第六感がとてつもなく強かった。


自分で選択肢を選ぶことができるものに関しては、一度も勘が外れたことはない。それは裏を返せば、最初から選択肢などなかった場合、勘は当てにならないということでもあるが。


弱点はあるものの、先ほど神社の木々の美しさに目を惹かれ、参道へと足を踏み入れたのは間違いなく自分だ。


それゆえに、今回も大丈夫だろうと考え、進み続ける判断を下した。



そこからは再び周囲を取り囲む自然を楽しむことに集中した。

色づいた木々の葉、鳥の囀り、羽ばたく音。

さらに途中栗鼠に遭遇したりと、豊かな自然の中で暮らす生き物たちの生活の一端を垣間見ることができ、先ほどまで胸に巣食っていた不安や不信感は、どこかに消え去っていた。



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