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導きの神様  作者: 夕月夜
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第五章 長月の真実 その29



「…………決めました。東雲。私を、あなたの眷属にしてください」



翡翠の言葉に、東雲は心なしか嬉しそうな表情を浮かべ、碧泉は笑みを深くしている。


どうやら私の選択は、二柱にとっても良い選択だったみたい。


二柱の反応を見てそう確信できた翡翠が、心の中で安堵のため息を漏らしていると、東雲が翡翠の目の前に立った。

その表情は、先程の喜色が滲み出ていたものから、真剣な表情へと変化していた。



「本当によろしいんですね、翡翠さん。

私の眷属になるということは半永久的に現世に存在しなければならないということです。その中であなたはたくさんの魂に出会うことでしょう。最終的には、その人間が死に至った理由を知ることになります。

現世を彷徨うことになる魂は、大抵悲惨な死に方をするか、酷い生涯を送っていることが多いです。時には目を背けたくなるようなこともあるでしょう。

それでも、あなたは私の眷属になりますか。」



東雲の言葉に、一瞬翡翠は怯んだ。

正直、覚悟なんてできていない。そんな重大なことを唐突に言われたって、そんな覚悟なんてできるはずがない。

だけど、一つだけ言えることがある。


『私は東雲と一緒にいたい』ということだ。


この一年間、東雲との時間を重ねていくうちに、東雲に惹かれていった。これがどう言った性質の感情であるかはまだわからないが、その答えを知るために東雲と一緒にいることができたらと思ったのだ。

自分の気持ちを確かめたところで、翡翠は再び決意を固めた。


答えは、ただ一つ。



「それでも構いません。正直なところ、未来永劫終わりがこない時を存在することが一体どんなことなのか、正直、皆目見当もつきません。

でも…………私と同じように現世を彷徨っている魂がいるのであれば、東雲が私を導いてくれたように、その魂を導くお手伝いがしたいです。……私は東雲に救われました。

その東雲が私の身を案じて眷属として側に置いてくれるのであれば、それに従わない通りはありません。それに、私は東雲のおかげで変わることができました。できることなら、これからも東雲と一緒に過ごしたいです。____交わした約束もありますしね」



気持ちを告げると、東雲は一瞬大きく目を見開き、顔を下に向けてしまった。


そのため、東雲の表情を見ることができず、彼の心境を知ることはできない。


「君が何も言わないと、話が進まないんだけど。」



痺れを切らした碧泉が、東雲に向けて文句を垂れた。東雲はその声に応えるように、ゆっくりと首をもたげた。とても不満そうに見えたことには、触れないようにしよう。


顔をあげた東雲は、真っ直ぐに翡翠の瞳を見据えた。

そして、自分に何かを言い聞かせるかのように一度頷いた。



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