表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
導きの神様  作者: 夕月夜
117/129

第五章 長月の真実 その21


「______髪が茶色がかった人の子が、赤子を連れて僕の領域であるあの川の前を通り過ぎたのです。

その人の子の周囲では花の精が舞っていました。

それを見た当時の僕は、驚きました。

花の精が人の子の側にいるのは、その人の子が花の精を見ることができる時だけ。それに、どうやら霊力も強い。

僕は興味をひかれ、その人の子の後をついていくことにしました。

それが、翡翠さんがよく話されていた、あなたの祖母だったのです。

名前は……確か桜と言いましたね。

桜は赤子を抱いて、回り道をしてから建物へと入っていきました。

それがあなた方の住処だったことは、のちに知りました。

まだその時は、霊力が強い桜に興味を抱いていたので、赤子であるあなたのことは歯牙にもかけていませんでした。

それが変化したのは、その数年後、桜が長く体調を崩した時です。長い、と言っても、私たちからすれば一瞬でしたがね。

____あの時の驚きは、今でも鮮明に思い出すことができますよ」



そう言った碧泉は、懐かしさと楽しさが入り混じったような、そんな表情をしていた。



「翡翠さんは覚えているでしょうか。命に関わるようなものではありませんでしたが、桜の高熱が何日も続いたんです。普段、彼女は周囲に結界を張り巡らせていたのですが、高熱のせいでそれが弱くなっていました。

それを好機に、彼女の魂を横取りされたら堪らないと考えた私は、何度か様子を見に桜の元を訪れました。

その時です。桜の枕元で、必死に看病をしているあなたを見たのは。

本当に驚きましたよ。初めて見かけた時からその時点まで、全くと言っていいほど霊力を感じなかったあなたから、桜よりも強い霊力を感じたんですから。」



それを聞いた時、翡翠は強い衝撃受け、思わず口を挟んだ。



「えっ、ちょっと待ってください!!そんなはずありません!!!

祖母は霊力が強くて、人ならざるものもたくさん見たと言っていましたが、私は見たことがありませんでした。そんな私が祖母より強い霊力を持っているなんてあり得ないです。絶対、何かの間違いです。」



翡翠の言葉に、碧泉はゆっくりと首を横に振った。



「いいえ。あなたは確かに桜より強い霊力を持っていました。

その証拠に、僕のことも、東雲のことも見ることができたでしょう?」


「それは、私が死んでいるからじゃないんですか」



興奮と戸惑いで震える声で、翡翠は言い返した。



「それは違いますよ、翡翠さん。」



今まで黙っていた東雲が、突然声を発した。



「えっ、東雲……?」



翡翠はさらに混乱した。東雲がここで口を挟むと言うことは、彼もそれを事実だと捉えていることになるからだ。


彼は翡翠が少し落ち着くのを待ってから、続きを話し始めた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ