陸 Eosinophils
【紛れ】の発生源であろう場所に近づいている。「離れるなよ、それでも守れると思うが、無駄に疲れる」「離れないよ。絶対」俺の裾を掴む。「どうした?」「なんでも」「…ならいい」
このやりとりで、不意を突かれた。【紛れ】の細く鋭い毒の針がカグラの皮膚を貫く。「逝ねカスがァァァァ!!!」素早くキレイに針を引き抜き、小さな【紛れ】の身体を更に小さく刻む。
「無事であってくれ…!」すでに過呼吸、毒は回っている。「この身体は捨てるぞ!」新たな…と言ってもほぼ同じ器を創り、そこに少し前の状態を置換する。
「ハイエンも油断とかするんだね」「あぁ…神も人間なんでな」「え?」「…神とは特権のようなものでもある。特権を持つのは人間だ」「ふーん…」やはり少しおつむが足りないか。「ところで!さっきすごい焦ってなかった?!」「それはお前が死んだら俺も死んでこの世界が崩壊するからだ!」「そう…」すまないな、まだ早いんだ。「奥に進むぞ。これ以上世界を危機に晒すわけにはいかない」「うん…ねーねー」暇なのか「なんだ」裾を引っ張られる
「なんで【紛れ】って呼んでるの?」「…そうだな…この世界に【紛れ】たイ物、と」「へー」「俺もお前に聞いていいか」「なんでもどうぞ」「俺は…俺はお前の居場所に、なれただろうか」「うん!ハイエンには感謝してる、ありがとう、私をつくってくれて」「お前をつくったのは俺の知り合いだ。お前を生み出したのはお前の母親だ」「でも、今は100%あなたによってつくられた。最初は出来なかった筈なのにね」「どんどん変わっていくのさ、この世界は。無限の可能性、すべてが計算された世界、今この世界は俺とお前の物語だ。邪魔はさせない」目的も変わっている。最初は【紛れ】を排除することだった。だが、俺は今“物語”を続けようとしている。これが終わっても物語が続く保証なんてない。…いや、俺が保証しないといけないんだ。
(この物語は終わりが来る。その時まで抗え、神よ)
神は物語を続けたい様子。僕はもう終わらせたい。この世界の幕を閉じたい。あと少し、神と僕の足掻きをご覧ください。無理矢理9話目で閉じます。…皮肉なものです、『抗え』だなんて。