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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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迷信

作者: 骨牌

ある小さな田舎町に不良の女子中学生がいた。授業はろくに出ず、塾も籍を置いているだけで友達すらいない。その日は学校から早退し、電車で片道一時間かけて図書館に行き、閉館時間まで閲覧室に居座っていた。途中で買った洋菓子が詰まった袋を片手に下げて豆乳飲料を啜りながら、暗がりの中を闊歩していると、目の前を黒猫が横切った。

 ーまたか。

 最近この時間になるとこの子が横切る。どうしてだろうか。黒い猫が横切ると……迷信、迷信。そんなことあるわけがない。猫のことをかき消すように駆け足で帰路を急いだ。

 次の日は珍しく母が起こしに来てくれた。いつもなら自分のことなど放っておくはず……私が何かしたのだろうか。それとも訳の分からぬ顔も知らぬ阿婆擦れが何かされたと暴れているのだろうか。どちらにしても私には関係ない。もう一度寝ようとした時。

 「青木さん、死んだって」

 青木とはクラスメイトだが会ったことは一度もない。中学校の前にある建物に住んでいる引きこもりだ。未だに教室に姿を現さない人間のことなどさらに興味がない。

 「二週間前くらいに、一家心中したって。金銭的な問題らしいわよ。お別れ会を開くって学校から連絡きたの。とりあえず伝えたからね」

知らぬ人間のお別れ会など行くわけないだろう。休む口実を考えながら布団に入り直す。母親はいつも通り仕事に行く準備をし始める。足音が五月蝿い。枕元で充電していたスマートフォンを掴み、イヤホンを繋いで音楽を再生した。

 「二週間前、か」

 そういえば私の前を黒猫が横切るようになったのは確か二週間前からだ。横切る場所はいつも決まって中学校の前。中学校の前で、青木の家の前。青木の家の前から中学校に向かって走っていた。

 母が家を出てから数分後に家を出て、青木の家に向かう。今日は休校になっているようだ。通学時間だというのに生徒が一人も入ってこない。青木の家の前に着くと、玄関の前にあの黒い猫がお行儀良く座っていた。屈んで顔を合わせる。

 「あら、どちら様?」

 見知らぬ女性が喪服を着て横に立っていた。

 「いえ、ここに黒い猫が……」

女性の顔が青ざめる。

 「その子は歩くんの猫よ」

歩、青木の名前だ。飼い主の死を周囲に伝えたかったのだろう……ペットの忠誠心に感動しかけたが、女性の顔色がどうも気になる。

 「ペットですか」

 「違うの、ペットじゃなくて……担任の飼ってた猫を青木くんが殺したの。ブスな担任の悲しむ顔が見たいからって……」

 あれは、死を伝えるためではなく飼い主から逃げるためだったのだ。目を伏せると黒い猫がこちらを見上げている。足元にいるのに女性は気付いていない。



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