9話「クリスマス」
そして今日。クリスマス当日。あれから隼人とは連絡をとっていない。
私は昨日の夜どうすればいいのか考えた。
その結果、今日待ち合わせの場所に隼人がいるか分からないが、そこまで能力に逆らって行くことにした。
まずは、洋服選びから。一番気に入っている隼人が好きと言ってくれた服で行くことにした。
化粧をして、髪をセットして準備をして家を出た。
いつも通りの道から行こう。そう思って一歩踏み出すと涙が出た。
でも今日は能力に逆らう日。
私は構わず歩き出した。
信号が青になり渡ろうとした時、信号無視をした車が向かってきた。
私はぎりぎりの所で交わしたがその拍子に転んでしまった。
近くにいた女の人に、
「大丈夫ですか!?」
と、心配されたが
「大丈夫です。ありがとうございます」
と言い、また歩き出した。
そして交差点。
また涙が出た。
私はさっきのこともあってか別の道から行きたい。そう思った。
でも隼人に嫌われたくない。そう思い怖かったがそのまま進んだ。
するとそこではいつも通れるのに今日は道路工事をしていた。
私はこれだけか・・・そう思ったが別にいいか。そう思って誘導員に従ってそこを通り抜けた。
何度か涙が出たものの、最初以外は全て大したことはなかった。
そして待ち合わせ場所に着いた。
隼人の姿を探したがまだ来ていなかった。
昨日喧嘩したから来ないかもしれない。そう思ったが待つことにした。
「由美?」
呼ばれて後ろを振り向くとそこには隼人が立っていた。
「それ、どうしたんだ?」
私の足を見ている。見てみると、最初に転んだ時に負ったケガだった。少し擦りむいていたが全然気が付かなかった。
「ちょっと転んじゃって」
「何かあったのか?」
「今日ね、能力に逆らってきたんだ。そしたら最初に信号無視した車が突っ込んできて。でも交わしたよ。まあ転んじゃったけど。でもそれからは全然大したことなかったんだ。昨日はごめんね。隼人の言った通り・・・」
その時隼人にぎゅっと抱きしめられた。
「ごめんな、昨日。全然自分の好きなように出来なかった由美を見て何か思ってたことたくさん言っちゃって。俺があんなこと言ったから転んじゃったんだよな」
「隼人は悪くないよ。今まで能力に頼りっぱなしだった私が悪いの。でも隼人のお陰で能力に逆らってここまで来ることが出来たんだよ」
「由美、ありがとう」
隼人は優しく頭をなでてくれた。
「そうだ、これ由美に」
隼人が差し出してきたのはラッピングされた小さな箱だった。
「開けてもいい?」
「うん」
箱を開けるとそこには小さな綺麗な石がついたネックレスがあった。
「これ・・・」
それは昨日、私が見ていたネックレスだった。
「どうして・・・」
「最初何あげるか決まってなくてさ。全然分からなかったから色々見てたら由美がそれじっと見てて。その後決まらなくて外に出てあれ買ったのか気になって聞いたら買ってないっていうから喧嘩した後戻ってきてこれに決めたんだ。」
隼人は喧嘩した後も私のことを考えてくれていた。そのことが嬉しくて私は泣いた。
「泣かないで」
「私もね、隼人に渡したいものがあるの」
私は隼人に箱を渡した。
「これ、俺が昨日見てたやつ」
「昨日お店から出てきたとき何も持ってなかったから買わなかったんだって思ってすぐ買いに行ったの」
「だからあの時外に一回出たと思ったらまた戻っていったんだな」
「うん」
「何か俺ら似たようなことしてるな」
「本当だね」
私たちはそれから何も言わずに手をつなぎ、昨日行きたかったお店、イルミネーションを見に行った。
「いろいろあったけどこれからもよろしくな」
「こちらこそ」
ちゃんと仲直りをして、家に帰った。